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鹿児島県が情報公開請求を拒否

前代未聞!なりふり構わぬ隠蔽工作

     ~原発の背景~

2011年12月 5日 08:30

 原発立地自治体による法令を無視した行政運営の実態がまたひとつ明らかになった。

 鹿児島県は先月28日、HUNTERの記者が提出した情報公開請求に対し、開示するか非開示にするかの決定自体を拒否するという前代未聞の「暴挙」に出た。
 
 同県が定めた「鹿児島県情報公開条例」の規定を無視したもので、地方自治や情報公開の専門家からは驚きの声が上がっている。

県庁暴走までの経過
 HUNTERは今年9月25日、鹿児島県に対し次の4点について情報公開請求を行なった。
・ 薩摩川内市で建設中の産業廃棄物処理場に関するすべての文書(建設計画に関する方針決済など、計画段階から請求日までの経過が分かる文書や、本件に関する業務委託関係書類など)。
・ 薩摩川内市で建設中の産業廃棄物処理場における警備または支援業務についた県職員への出張命令書および勤務実態の分かる文書。
・ 薩摩川内市で建設中の産業廃棄物処理場に関し、工事の警備もしくは支援のため県職員を派遣するにあたって県庁内で動員要請した折の文書。
・ 鹿児島市松陽台町に移転・建設を予定している県営住宅に関するすべての文書。

 通常、国や地方自治体に情報公開を請求した場合、行政機関側から請求内容や請求の趣旨についての確認をするための連絡が来るものだが、鹿児島県からは何の確認もなかった。
 このため、10月4日に鹿児島県庁を訪れ、請求した文書にある事業の所管課である「廃棄物・リサイクル対策室」と「建築課住宅政策室」の担当職員に対し、わざわざ請求の趣旨と開示方法等について説明していた。

 gennpatu 676.jpgところが、開示決定期限の10月26日を過ぎて、唐突に4件の開示請求について開示決定期限を「30日間延長」するとの通知が送付されてくる。
 この鹿児島県の対応も、事前に請求者に「延長」の理由について相談や説明の連絡がある他の行政機関とは大きく異なり、一方的なものだった。

 もともと同県の情報公開請求に対する開示決定までの期間は、14日から15日とする他の自治体の倍となる「30日」。さらに、請求文書の内容や他の自治体でのこれまでの対応状況から考えて、開示決定までに30日以上を要するとは思えない。
 とくに、4件の請求のうち薩摩川内市で建設中の産業廃棄物処理場に県職員を派遣するにあたっての県庁内における動員要請文書については、存在するとすれば数枚程度のものと推量されたため、不当な延長であるとして強く抗議した。

 担当職員は上司に報告して検討するとしていたが、この日以降、連絡を取ろうと電話を入れても「出張」、「風邪のため欠勤」、「会議」など様々な理由をつけて電話にも出ない。
 上司にあたる職員に話を聞こうとするが、担当職員以外は話が分からないとして誰も対応しようとしない。
 
 何とか担当職員に事情を聞こうと他の職員に連絡を頼むが「一応伝えておきますよ」。結局、担当職員から納得できる説明は一度もなかった。前代未聞の展開となるのはこの後だ。

「開示、不開示の判断しない」??? 
 延長後の開示決定期限である11月25日金曜日。鹿児島県からは何の連絡もなく、28日月曜になっても決定通知さえ送られてこない。
 この時点で県情報公開条例に違反していると判断し、廃棄物・リサイクル対策室に連絡したところ、珍しく電話に出た担当職員は次のように言う。「開示・不開示のいずれの決定も行なわないと判断致しました」。

 耳を疑う文言だったため2度も聞き直したが「開示・不開示のいずれの決定も行なわないと判断致しました」を繰り返すばかりで何も話そうとしない。誰が決めたことか追及したところ「本県として」と言う
 やむなく、ここから先は録音取材になることを念押しした上で、もう一度どういうことか説明するように求めた。返ってきたのは「開示・不開示のいずれの決定も行なわないと本県として判断致しました」。
 このあとも「鹿児島県情報公開条例」の規定に反する行為であるとして抗議するが、同じ文言を繰り返すばかり。
 それでは、なぜ方針決定の電話さえしないのか問い質したが、「電話をすることも控えさせていただいた」と驚くべき回答。
 いったん受け付けた情報公開請求に対し、決定期限を引き延ばした上で開示決定の義務を放棄、さらにはどう処理するかの連絡さえよこさない方針なのだと言う。異常としか言いようのない状況となった。

 情報公開の窓口を所管する県総務部学事法制課に経過を説明したところ、同課の職員も初耳だったらしく、困惑しながらも廃棄物・リサイクル対策室に事情を聞いて連絡すると言う。
 ところが、同日夕になって連絡してきたこの職員の口から出たのは「開示についての判断は各所管で行なっており、学事法制課としては情報公開条例に基づく開示請求の受付窓口を所管しておりまして、開示の判断は各窓口で行なっております」。
 あとは何を言っても同じ文言を読み上げるばかり。廃棄物・リサイクル対策室と同じ対応だ。

 日を置いて、もう1件の「鹿児島市松陽台町に移転・建設を予定している県営住宅に関する文書」の請求について建築課住宅政策室に確認を入れたところ、「開示・不開示のいずれの決定も行なわないと本県として判断致しました」と、廃棄物・リサイクル対策室とまったく同じ文言をを繰り返しはじめた。
 鹿児島県庁の総意として、条例違反を覚悟で請求拒否に出たことが確認された瞬間だった。

組織ぐるみ
 前述したように、情報公開請求を所管する県学事法制課は、「開示の判断は各窓口(所管課)」だと明言している。
 判断の内容や理由については所管外の部署にはわからないと言っているわけで、開示・非開示についての理由や文言はそれぞれの所管課で多少なりとも違うものになるはずだ。
 しかし、違う行政文書をそれぞれの所管課に請求したにもかかわらず、返ってくるのは判で押したように「開示・不開示のいずれの決定も行なわないと本県として判断致しました」。
 異なる事業内容への開示請求であるにもかかわらず、廃棄物・リサイクル対策室と建築課住宅政策室が揃って一言一句同じ文章を読み上げているのである。。
 明らかに県上層部が文案を統一し、鹿児島県全体として情報公開請求を拒否したということを示しており、組織ぐるみで隠蔽に走った形だ。
 法令違反を承知の暴挙である以上、一連の方針決定に知事が関与した疑いも否定できない。

産廃処理場の疑惑隠し 
 それでは、鹿児島県がここまでしてHUNTERの情報公開請求を拒否したのは何故か。
 
 まず考えられるのは、各事業について詳細を探られ、事実関係について報道されることを避けたかったから、という理由だ。
 
 HUNTERが請求した文書は、川内原発がある薩摩川内市で建設が強行されている管理型最終処分場(産業廃棄物処理場)に関するもので、事実上県が進める同計画にはかねてから疑惑が指摘されている。県としては触れられたくない内容の文書を保有している可能性が高い。
 
 gennpatu 438.jpg同処理場をめぐっては、県庁職員を大量に動員して地元住民を弾圧している状況についても詳しく報道してきており、開示決定を待たずに独自に入手した県庁内の動員要請文書の存在も報じていた(記事参照)。
 この報道にあたっては、文書の存在をごまかそうとする県職員を厳しく追及。最終的に県として動員文書の存在を認めざるを得ないところまで追い込まれていた。問題の文書が入手できていなかった場合、県は文書の存在を否定していたものと思われる。
 県側が、これ以上最終処分場についての事実関係を暴かれることを恐れ、条例無視という(おそらく日本初の)対応を決めた疑いは濃い。

 
新たな疑惑が浮上
gennpatu 465.jpg 一方、鹿児島市内で計画されている松陽台地区への県営住宅移転問題は、伊藤県政の傲慢姿勢を追う中で突き当たった案件だった。
 当然、所管課である建築課住宅政策室とは産廃処理場に関する取材時のような激しいやり取りをしたことがなく、単に計画内容の確認を求めただけだ。
 このことは、建築課住宅政策室にも説明しており、同対策室が情報公開請求を拒否する理由は見当たらない。
 今回の事態を受けて改めて取材したところ、県が住民を無視して強行に事業を進めており、関係者から利権がらみとの指摘が出ていることがわかった。
 建築課住宅政策室が隠蔽姿勢をあらわにしたことで、薩摩川内関連同様、計画に不適切な内容が含まれていることを露呈してしまったことになる。

報道への拒絶反応
 別の理由があるとすれば、HUNTERが報じてきた記事への拒絶反応ということになる。
 
 これまで、伊藤知事や鹿児島県議の政治資金にからむ疑惑や、歪んだ県政の実態を川内原発の背景として報じてきており、知事や県上層部が困惑していたことは想像に難くない。こんな相手(HUNTER)に公文書を出すなどもってのほかということなのだろう。
 
 たしかに鹿児島県関連の記事は、列挙しただけでも次のような数の多さだ。
7月25日「川内原発の『多勢に無勢』」 
8月5日「伊藤鹿児島県知事に疑惑の100万円」
8月8日「九電・川内原子力発電所の背景」
8月10日「川内原子力発電所の背景(Ⅱ)原発マネーに踊る業者」
8月11日「鹿児島県知事 杜撰な政治資金管理」
8月12日「薩摩川内選出県議に公選法違反の疑い」
8月16日「川内原子力発電所の背景(Ⅲ)~原発マネー還流~」
9月14日「鹿児島県知事側に町村会事務局長が100万円」
10月7日「鹿児島・少数意見圧殺の狂った県政 産廃処理場建設で職員動員し県民排除」
10月24日「鹿児島県知事陣営に虚偽記載の疑い」
10月25日「鹿児島知事側に新たな規制法違反か?」
10月26日「鹿児島知事側に新たな不適切献金」
11月7日「伊藤鹿児島知事側へ違法献金?」
11月10日「鹿児島・狂った県政(1)職員動員の証拠を隠蔽」
11月11日「税金使って建設業者を『ガード』 県が隠蔽図った内部文書入手」
11月14日「原発と産廃処分場 『核のゴミ』持ち込みへの懸念」

 いずれも原発の背景に鹿児島県政の歪みがあることを示した記事で、間違った内容のものは掲載していない。県としてHUNTERを容認できないとする姿勢があるのだろうが、それと情報公開請求とは別次元の問題である。

条例違反の証明
 鹿児島県は、自ら定めた「鹿児島県情報公開条例」で《何人も、この条例の定めるところにより、実施機関に対し、当該実施機関の保有する公文書の開示を請求することができる》とした上で、公文書の『開示義務』について《実施機関は、開示請求があったときは、開示請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該公文書を開示しなければならない》と定めている。
 
 同条例にはさらに次のような規定もある。
《実施機関は、開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示するときは、その旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨及び開示の実施に関し規則で定める事項を書面により通知しなければならない》。
《実施機関は、開示請求に係る公文書の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき及び開示請求に係る公文書を保有していないときを含む。)は、開示をしない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない》。

 同条例は、開示、非開示について「決定しなければならない」と明記しており、その判断を放棄することを可能とする規定は一切ない。「開示・不開示のいずれの決定も行なわない」とする鹿児島県の判断は、明らかに条例違反なのである。
 
「暴挙」に厳しい批判
 今回の鹿児島県の対応について、自治体の情報公開を推進してきた「市民オンブズマン福岡」の児嶋研二代表幹事は次のように話す。「情報公開請求への判断を放棄するなどという話は聞いたことがなく、暴挙としか言いようがない。そもそも県条例では開示または非開示の決定について『しなければならない』と規定しており、鹿児島県による条例違反は明らかだ。大問題であり、これを許せば情報公開制度そのものを否定することにつながっていく。鹿児島県はもはや行政機関としての体を成していない」。
 
 九州のある市長経験者は「信じられない。都合の悪い部分を黒塗りにするとか、文書自体を不存在として隠蔽を図ったケースは聞いたことがあるが、『開示・非開示の判断をしない』などというわけの分からない理由で情報公開請求の制度を踏みにじった話は聞いたことがない。日本初の出来事ではないか。理不尽としか言いようがない。鹿児島県にとって、よほど都合の悪い情報だったということだろうが・・・。原発に関して、本当にまともな判断が下せるのか疑問だ」。

 ちなみに、鹿児島県のホームページ上では、情報公開制度について次のように記している。
《県では、公正で開かれた県政を推進するため、昭和63年に情報公開条例を制定し、以来、多くの方々に情報公開制度を利用していただきましたが、これを改正し、平成13年4月1日から新しい情報公開制度をスタートさせました。
 この新しい情報公開条例に基づき、公文書の開示請求に対応するほか、県政に関する情報を迅速かつ容易に得られるよう、審議会等の会議の公開や県出資法人の情報公開、広報活動、行政資料の提供等の情報公開施策を推進しています》。
 笑止である。

 平気で嘘をつき、法令違反をもいとわず情報を隠蔽する鹿児島県。腐敗は知事や県議だけにとどまらず、職員にまで及んでいるということのようだ。
 
 鹿児島県民に問いたい。利権にまみれ、平然と情報を隠蔽する伊藤知事と県に、原発再稼動についての判断ができるのだろうか。

 
*鹿児島県は11月30日、突如として方針を転換し、HUNTERに対し一連の情報公開請求に応じると連絡をしてきた。報道他社の取材を受けてのことと見られるが、いったん下した判断についての記録が残っている以上、"文書が大量だった"、"誤解"などという姑息な言い訳は通用しない。開示決定期限は11月25日。もはやこの件で隠蔽は通用しない。



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