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原発と産廃処分場

「核のゴミ」持ち込みへの懸念

~玄海・川内両原発の背景~

2011年11月14日 08:35

 原子力発電所も産業廃棄物処分場も、地元住民にとっては迷惑施設である。
 いったん建設が決まれば、次の世代にまで(ことによってはその次やそのまた次の世代にまで)悪影響を及ぼす可能性が高い、極めてたちの悪い代物でもある。

 そして、大都市は原発が生み出す「電力」の恩恵を受ける一方、産廃処分場に大量の廃棄物を送り込んでいる。
 痛みを原発や産廃処分場がある地域に押し付ける構造の上に、都市部の豊かさが成り立っているのだ。

 原発と産廃処分場。ふたつの迷惑施設が集中して存在するところに暮らすなどということは、都市部の人間には想像もつかないかもしれないが、佐賀・鹿児島両県にあるそれぞれの原発立地自治体ではそれが現実となっている。

 ここにきて懸念されるのは、処分場への放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」持ち込みの可能性である。
(写真は玄海原子力発電所)

最終処分場
 最終処分場は「安定型」「管理型」「遮断型」の3種類に分けられる。

 簡単に説明しておくと「安定型」の最終処分場は、主に事業活動に伴って発生した廃棄物のうち廃プラスチックやがれき、金属、ガラス・陶磁器、ゴムといった"安定5品目"を埋設する施設であるのに対し、「管理型」は燃え殻、汚泥といった産廃と一般廃棄物(事業系以外のもの)が対象となる。
 
 一定の基準以下とはいえ、管理型処分場には有害物質を含む廃棄物を埋設するため、浸出液が地下水などを汚染しないように埋立地をビニールシートなどで遮蔽するほか、汚染水の処理施設も必要となる。
 
 「遮断型」は有害物質が基準を超える燃え殻やばいじん、汚泥などの産業廃棄物を埋設する施設で、天蓋を設けて雨水の浸入を防いだうえに、コンクリートなどで埋設物と地下とを完全に遮断する厳重な構造となっている。
 
 ただし、既存の遮断型最終処分場は少なく、環境省が公表している平成21 年4 月1 日時点の数字を見ても全国の残存容量は16,085㎥となっている。

福島第一原発事故で汚染された焼却灰と環境省の方針
 東京電力福島第1原発の事故で、放射性物質に汚染されたごみの焼却灰も産廃と言うことになるが、この取り扱いが大きな課題となっている。

 環境省は、これまで一時保管するよう求めていた放射性セシウムが1キロ当たり8,000ベクレル超10万ベクレル以下の焼却灰について、管理型最終処分場での埋め立てを容認する方針を決めていたが、これは地下水への汚染防止策などを講じることで、安全な処理が可能と判断したからだ。
 
 具体的には、焼却灰をセメントで固めたり、屋根付きの処分場を利用したりすることで水との接触を防ぎ、セシウムが流出しないようにするほか、埋め立て後に処分場の排水や周辺の地下水の監視などを行うとしていた。

 問題は、1キロ当たり10万ベクレルを超える灰の扱いだ。
 同省は当初、周囲をコンクリート壁で覆った「遮断型最終処分場」への埋め立てを軸に検討していたが、同省が設置した有識者検討会は今年9月、10万ベクレルを超える放射性セシウムを含む焼却灰などについて、想定していた「遮断型」への埋設処分だけでなく、外部に放射線が漏えいしない対策を取った上でなら「管理型」最終処分場でも埋め立てを容認する方針を示した。

 つまり「管理型」処分場には、放射性廃棄物が持ち込まれる可能性が高いということだ。

薩摩川内市
 gennpatu 404.jpg先週、九州電力川内原発がある鹿児島県薩摩川内市で建設が進められようとしている管理型最終処分場をめぐって、事実上の事業者である県が住民を弾圧している実態を報じた(記事参照)。
 豊かな自然に恵まれた同市ばかりに、危険な施設を集中させるという愚行だが、それを可能にしているのは、伊藤祐一郎鹿児島県知事の強権的な県政運営と、利権に群がる地元業者や政治家らの我欲である。
 彼らには子どもや孫たちの世代に対する責任感や、郷土の山河を守るという意識などはじめからないのだろう。

 原発立地自治体は、電源3法交付金をはじめとする原発マネーに汚染され、一部の権力者たちがカネと権力を掌中にし、住民が沈黙を余儀なくさせられるという悪循環に陥っている。

玄海町-「岸本組」も処分場保有
gennpatu 624.jpg じつは玄海原発がある佐賀県玄海町や、原発からすぐの唐津市鎮西町にも、産廃の最終処分場が存在する。
 
 鎮西町にあるのは、佐賀県の外郭団体「財団法人 佐賀県環境クリーン財団」が運営する管理型の最終処分場「クリーンパークさが」。
 平成10年2月に県が同財団を設立。同15年に建設工事が始まったクリーンパークさがは、平成21年4月から本格的に稼動している。
 玄海原発からは車で10分程度の距離だ。
(右の写真が『クリーンパークさが』)
 
 
 gennpatu 614.jpgそして玄海原発を抱える玄海町にも、安定型の最終処分場(左の写真)がある。所有者は岸本英雄玄海町長の実弟が社長を務める「岸本組」である。
 同社については、原発マネーによる玄海町の公共工事をなかば独占し、利益を町長自身に還流させていたことが明らかになっている(記事参照)。
 
 町内大薗地区にある岸本組の「大薗処分場」は、いったん許可された処分量が満杯になったため平成18年から拡張工事を行なっていたが、今年8月から営業を再開していた。処分場の面積は14,973m2、許可容量は203,867m3となっている。岸本ファミリーは、どこまで玄海町を食いものにするのだろう・・・。

「核のごみ」持ち込みへの懸念
 gennpatu 008.jpg前述したとおり、環境省は外部に放射線が漏えいしない対策を取ったうえでなら1キロ当たり10万ベクレル超の放射性セシウムを含む焼却灰でも、「管理型」の最終処分場に埋設することを容認する方向だ。
 福島第一原発の事故を受けて、増え続ける放射性焼却灰の処理を進めるためとはいえ、産廃行政の運用を誤れば、全国の管理型処分場が「核のごみ」の埋設場所になりかねない。

 福島第一原発がらみの放射性廃棄物だけでとどまればいいが、なし崩し的に他の放射性廃棄物まで埋設が許可される危険性も否定できない。

九電の事情と住民の不安
 九電が事業者である玄海、川内の両原発からは、放射線管理区域内で作業員が着た作業着を洗濯した際の廃液をはじめ様々な低レベル放射性廃棄物が生じるが、これらはアスファルトで固化しドラム缶に入れて保管した後、青森県六ヶ所村にある日本原燃の「低レベル放射性廃棄物埋設センター」へ持ち込むしかない。
 
 直近では今月、玄海原発から200リットルドラム缶440本(輸送容器55個)、川内原発から200リットルドラム缶320本(輸送容器40個)を搬出したことが公表されている(数字はいずれも九電発表による)。

 川内原発では、1号機が運転を開始した昭和58年以降初めての搬出だったが、同原発内には既に約1万9,000本に及ぶドラム缶が保管されており、収容能力約3万7,000本に対し、残りは1万8,000本分。
 
 一方、玄海原発における貯蔵容量は約4万9,000本だが、こちらも9月末時点で約3万9,000本が入っており、残りは1万本分しかないという。

 川内原発から年間に生じるドラム缶の数は約1,500本、玄海のそれは約2,500本とされ、数年で満杯になってしまう勘定だ。
 当然、現在の搬出ペースでは行き詰まることになるが、頼みの六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物埋設センターの容量も限度がある。
 
 同センターにある1号埋設施設と2号埋設施設のそれぞれの埋設容量は、153,600本と103,680本とされるが、今年3月現在、1号埋設施設には145,275本、2号埋設施設には83,872本が既に埋設処分されているのだ(『公益財団法人 原子力環境整備促進・資金管理センター』ホームページの数字より)。 

 そこで懸念されるのは、福島第一原発関連の焼却灰だけでなく、地元の原発から出た「核のごみ」まで、周辺の管理型処分場に埋設するようになることだ。

 鹿児島県が薩摩川内市に建設を進める管理型最終処分場に、九電・川内原発から出る放射性廃棄物を埋設するのではないかという疑念を持つ住民も多いという。

 薩摩川内市に住む50代の企業経営者は次のように話す。「県の産廃処理場には、胡散臭い話が付きまとってきた。多くの候補地があったにもかかわらず、なぜ薩摩川内市を選んだのかさえきちんとした説明がなされていない。将来、川内原発の放射性廃棄物を埋めるのではないかという噂はたしかにある」。
 
 同じことは玄海原発近くの唐津市鎮西町にある管理型処分場にも言える。どちらも九電と親密な「県」が事実上の事業者であり、きな臭さを感じる人たちは少なくないだろう。

 原発と産廃処分場が密接なつながりを持ち始めた現在(いま)、安易な放射性物質の処分を見逃さないよう、国民による十分な監視が必要であることは言うまでもない。
 
 地元はもちろん、都市部に暮らす人間にとっても無縁の話ではないのだから・・・。
 
 



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