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高島福岡市長陣営に虚偽報告の疑い

2011年12月19日 08:30

 高島宗一郎福岡市長のふたつの関連政治団体が福岡県選挙管理委員会に提出した平成22年分の政治資金収支報告書から、不可解な収支の実態が浮かび上がった。

 市長選に向けての政治活動を行なう上で、当然発生するはずの支出が計上されておらず、虚偽報告の疑いさえ生じている。
 
 政治資金パーティーがらみの不適切なカネ集めが問題になったばかりの高島市長だが、「政治とカネ」についての認識は甘いようだ。


ふたつの支援団体
 今年11月に開催された高島市長の政治資金パーティーに絡み、福岡市の山崎副市長が市長の私設秘書から数十枚のパーティー券を預かり、市役所内部で局長級職員らに配布していたことを報じてきた(記事参照)が、問題の政治資金パーティーを主催したのは、市長の資金管理団体「アジアリーダー都市研究会」(代表・高島宗一郎)。団体設立時の名称は「高島宗一郎後援会」である。
 
 市長の支援組織には、他に「とりもどせ元気!!ふくおか 高島宗一郎君を応援する会」という政治団体があり、同団体の代表を務めていたのは今年5月に亡くなった自民党の石村一明元市議会議長だった。

 福岡県選挙管理委員会に提出された政治団体設立届によれば、「高島宗一郎後援会」(以下、「後援会」)は昨年9月3日、「とりもどせ元気!!ふくおか 高島宗一郎君を応援する会」(以下、「とりもどせ元気」)は同月13日に設立されていた(下は『とりもどせ元気』が県選管に提出した届出書類)。

政治団体設立届  gennpatu 862.jpg  gennpatu 866.jpg

収入は市長本人と自民党のカネ
 「後援会」の収入は代表者である高島氏本人からの"借入金"300万円と42万円の寄付だけ。一方の「とりもどせ元気」は、自由民主党福岡県第一選挙区支部から500万円、同党県連から120万円の計620万円を寄附されたほか、高島氏本人から選挙事務所の賃料39万2,000円の支払いを受けており、収入の総計は659万2,000円となる。これ以外に収入はない。

 9月17日撮影4.JPG高島市長陣営が福岡市選管に提出した選挙運動費用収支報告書によれば、平成22年10月30日告示、11月14日投・開票が行なわれた市長選期間中の選挙運動費用も、高島市長の自己資金500万円だけでまかなわれている。

 結局、「後援会」や「とりもどせ元気」の政治活動を含めた市長選挙向けの資金は、高島市長が計842万円(うち300万円は貸し付け)、自民党が計620万円を出し、その合計は1,462万円となっている。
 これまで福岡市長に当選した陣営のなかでは最も少ない資金で戦っており「カネのかからない選挙」を実践した形だ。
 
 ただ、「後援会」の収入として記載された高島氏本人からの借入金300万円には疑問符が付く。
 
 この「後援会」こそ、後に名称変更し今回のパーティー券問題を引き起こした「アジアリーダー都市研究会」であり、高島氏が貸し付けた300万円が、集めた政治資金から返済される可能性があるからだ。
 
 自身の選挙を前に資金管理団体に貸し付けし、当選後に資金パーティーで集めた政治資金から自分の財布に戻す手法はあまり感心できるものではない。

「支出」に関する疑問
 違法性を問われかねない問題は「支出」の方にあった。
 
 「後援会」は、人件費や光熱水費、事務所費などの経常経費に58万2,114円の支出があるほか、組織対策費や交通費および雑費で270万円あまりを費消し、54,000円を翌年に繰り越している。
 
 しかし、"組織対策費"として計上された207万1,866円は、「5万円未満の支出」の合計として一括処理されており、何に使ったのか分からない。
 "旅費交通費"では67万9,335円の支出が認められるが、旅行会社に支払った72,400円を除く残りの60万6,935円についても一括処理されており、計267万円あまりについては支出先も使途も不明だ。

 選挙期間中、公選法の規定により活動を休止する「後援会」に対し、確認団体(注・参照)となった「とりもどせ元気」の支出合計は650万6,560円。その内訳は人件費160万円、光熱水費9万3,458円、備品・消耗品費85万9,634円、事務所費395万3,468円となっており、残りの8万5,440円を平成23年に繰り越していた。
 
 収入659万円のほとんどが経常経費として費消されてしまっているのに対し、なぜか「政治活動費」の支出は「ゼロ」。活動実態から見て、あり得ない報告内容である。

 選挙前、高島陣営で市内を走り回っていた街頭宣伝車は「とりもどせ元気」と書かれた車だったことが確認されているほか、同じく「とりもどせ元気」と記されたリーフレット(写真参照)や複数の印刷物、のぼり旗や事務所看板などの存在がわかっている。
高島氏リーフレット (1).JPG
 しかし、同団体の収支報告書にはそうした選挙グッズなどのいわゆる"宣伝事業費"にあたる支出の記載が一切ないのである。

【注:『確認団体』とは、選挙期間中に当該選挙区において所定の条件を満たした上で一定の政治活動が許される政党または政治団体。知事選や市長選のほか参院選(所属候補10名以上が要件)や地方自治体の議員選挙(所属候補3名以上が要件)に適用される】

虚偽記載の疑いも
 もちろん「後援会」の支出にあった"組織対策費"約207万円の中に宣伝事業費を入れることはできない。
 
 政治資金処理上の政治活動費は、①組織活動費、②選挙関係費、③機関紙誌の発行その他の事業費、④調査研究費、⑤寄附・交付金、⑥その他の経費のどれかに区分することが定められている。
 高島陣営が行なった街頭活動や選挙グッズに関する経費は「③機関紙誌の発行その他の事業費」の中の「宣伝事業費」にあたり、"組織対策費"とは言えないからだ。

 詳しく見ると、①の「組織活動費」とは、選挙に関するものを除く政治団体の組織活動に要するもので、大会費、行事費、組織対策費、渉外費、交際費、交通費の類がこれにあたる。「後援会」の収支報告書に記載された約207万円の"組織対策費"はここに入る。
 
 ③の「機関紙誌の発行その他の事業費」の中の"宣伝事業費"とは、政策の普及宣伝に要する経費で、例えば、遊説費、新聞・ラジオ・テレビの広告料、ポスター・ビラ・パンフレットの作成費、宣伝用自動車の購入・維持費などの支出を指す。

 高島陣営の印刷物や選挙グッズ、街頭宣伝車の運行費用などが"組織対策費"であるはずがない。

 また、今回のケースでは、会計担当者のミスで宣伝事業費を"組織対策費"に入れたとする言い訳も通用しない。大量にばら撒かれた高島陣営の印刷物や政治活動用グッズは、常識的に考えると、どれも「5万円未満」の金額では作成できないからだ
 述べてきたとおり、「後援会」の支出のうち207万円の "組織活動費"は、5万円未満の支出の合計として一括処理されており、印刷物など5万円以上かかるはずの支出は含まれていない形となっているのである。
 
 9月17日撮影3.JPGおかしな点はまだある。対外的な活動のほとんどは「とりもどせ元気」のスローガンを掲げた政治団体「とりもどせ元気!!ふくおか 高島宗一郎君を応援する会」が行なっていたと見られるが、前述したとおり同団体の政治活動費は1円も計上されておらず、経常経費だけで選挙前後の活動を行なったことになっている。ありえない話だ。

 政治資金規正法上の経常経費とは、政党や政治団体が事務所を維持するための経費である。
 「とりもどせ元気」は、選管提出の規約の中で「本会は、高島宗一郎氏を後援することにより福岡市政の発展と住民福祉の向上を図り、あわせて会員相互の親睦を深めることを目的とする」と明記しているうえ、高島氏本人が同団体に対し福岡市長選の候補者として「被推薦書」を出している。
 時期的にも残された文書からも、「とりもどせ元気」が市長選を目指して設立された団体であることは明らか。
 その団体が収入を得、経常経費を発生させたということは、前述の政治的目的を達成するための活動を展開したということに他ならない。
 つまり、政治活動費が「ゼロ」という状況は考えられないのだ。
 
 何もかも「後援会」がやったという"言い訳"も想定できるが、陣営全体の宣伝事業費すべてがスッポリ抜け落ちている状態では、意図的に支出を隠したとの指摘を受けても仕方がないだろう。実態とかけ離れた収支報告は虚偽報告の可能性さえはらんでいる

 収入が不足し、昨年中の支払ができないままに今年になってツケを払ったという可能性もあるが、市長選は11月14日に終わっており、高島氏の市長就任は12月。資金手当てをする時間は十分にあり、未払いのまま年を越したとは考えにくい。

会計責任者はお飾り?
 収支の実態を確認しようと収支報告書に記された連絡先に電話してみたが、すでに使われていない番号だった。

 市長陣営の現在のスタッフに確認したところ、「とりもどせ元気」については、代表者だった石村市議の急逝を受けて詳細を知る人間がいなくなっているため、団体の解散手続きさえできておらず、混乱しているのだという。
 
 「後援会」についても、現在は名称を変更し高島市長の自宅に届出上の事務所を移しているが、選挙当時の収支については自民党関係者などが中心となって運営していたため、詳しいことがわからないとしている。
 
 信じられないことだが、会計責任者は名目上の存在で、収支についての内容は把握していない可能性が高いとも言う
 疑惑について、事実関係を説明できる人物を探すことさえ困難な状況なのだ。

 市長選における高島氏大勝の裏で、杜撰な政治資金処理が行なわれていたことは紛れもない事実となった。市長自身による説明が求められる。



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