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鹿児島県知事陣営に虚偽記載の疑い
寄付者職業「だろうと思った」
会計責任者が認める

2011年10月24日 09:40

 伊藤祐一郎鹿児島県知事の資金管理団体が、政治資金規正法を無視した杜撰な政治資金処理を行なっていたことが明らかになった。
 
 献金した個人の職業を確認せず、推測で「医者」と「会社役員」の二種類だけに区別して政治資金収支報告書を作成していたもので、実際には医師や会社役員以外の寄付者が含まれていた。虚偽記載にあたる可能性が否定できない。

 23日、HUNTERの取材に答えた知事側の会計責任者は、「おそらく、そういう職業(医師か会社役員)だろうと考えて(収支報告書に)記入した。本人に確認はしていなかった」として、寄付者の職業を確認せぬまま、推測に基づき報告書へ記載したことを認めている。

寄付者職業は「医者」と「会社役員」だけ
 知事の資金管理団体「いとう祐一郎後援会 祐祥会」(以下、「祐祥会」)が鹿児島県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書によれば、県知事選挙が行なわれた平成20年、同会は知事本人を含む164人から2,041万9,711円にのぼる個人献金を受けたとされる。

 しかし、報告書に記載された知事を除く163人の献金者の職業は、なぜか「医師」と「会社役員」だけ。寄付者の職業ごとの人数と寄付金合計額の内訳は次のようになっている。
・知事本人   259万4,711円
・医   者  39人 207万円
・会社役員 124人 1,575万5,000円

 職業欄に、主婦、団体職員、会社員、無職などといった記載は一切なく、「医者」か「会社役員」しか寄附しなかったことになる。一般的な政治団体の収支報告書とは余りに異なる内容だ。

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推測で職業欄に記載
 調べたところ、実際には役員ではない人物が「会社役員」とされていたり、職業そのものが違うといったケースがあることが判明。会計責任者に確認したところ、推測で職業欄に記入していたことを認めた。(以下、会計責任者とのやりとり。「会計」は会計責任者)。

 記者:平成20年分の裕祥会の収支報告書の職業欄には、医者と会社役員しか記載がないが、間違いないか?
 会計:私どもがこういう人だろうと思って記載した。

 記者:推測で職業を記載したのか?
 会計:役員だろうと理解していた。おそらく、そういう職業(医師か会社役員)だろうと考えて(収支報告書に)記入した。

 記者:本人に職業を確認したのか?
 会計:本人に確認はしていなかった。

 記者:役員ではない人も含まれているようだが?
 会計:それはないと思うが・・・。

 記者:(寄付者の)勤務先、つまり会社名はわかっていたのか?
 会計:会社名まではわかっていない。ある人たちの紹介で個人名で(寄附が)きた。

 記者:"あっせん"ということか?
 会計:"あっせん"というよりは紹介。紹介者がいて、これこれこういう人が寄附してくると・・・。

 記者:寄附は振込みか?
 会計:そうそう。

 記者:相手がどのような人物かわからないまま、寄附をもらったのか?
 会計:そういうことですね。

 記者:それなら職業がわかるとは思えないが?
 会計:紹介者に「納付書」を配ってもらって、納付書が残るが・・・。

 記者:納付書に会社名や職業が書かれているのか?
 会計:企業からの寄附は受けられないので、納付書には個人名と住所だけしか書かれていない。

 裕祥会の会計責任者は、収支報告書の職業欄に根拠がなく、記載事項が推測に過ぎなかったことを認めた形だ。
 
 取材の過程で、収支報告書に記載された寄付者の中には、医者でも会社役員でもない人物が含まれていることが確認できており、知事側の記載内容は虚偽に近いものだったことになる。

杜撰すぎる政治資金処理
 伊藤知事の政治資金をめぐっては、平成20年の知事選で、同県が多額の補助金を支給する財団法人の理事長から寄附金として100万円を受け取っていたことや(記事参照)、平成21年に、祐祥会が県と密接な関係にある鹿児島県町村会の事務局長から100万円の個人献金を受けていたことがわかっている(記事参照)。
 いずれも県と利害関係を有する団体の代表、幹部らからの寄附だ。

 また、知事選に際して県選管に提出された「選挙運動費用収支報告書」に記載された11団体分・450万円の寄附が、各団体の収支報告では「祐祥会」への寄附となっていたことも確認されていた(記事参照)。(この件については、知事の選挙運動費用収支報告書や各団体の政治資金収支報告書が訂正されており、詳細については別稿で報じる)。 
 
 知事陣営の政治資金処理の杜撰さは目に余るものがあり、改めて県政トップの政治倫理が問われる事態だ。

 じつは取材の過程で、知事の政治団体に関する別の問題も浮上している。



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