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鹿児島・少数意見圧殺の狂った県政

産廃処理場建設で職員動員し県民排除

  ~川内原発の背景~

2011年10月 7日 08:35

 異様な光景としか言いようがない。

 腕に「鹿児島県」と明記された腕章を巻く県職員らが対峙するのは、他ならぬ「鹿児島県民」。
 
 対決の舞台は"産業廃棄物処理場"の建設予定地だが、驚いたことに鹿児島では、環境汚染が懸念される産廃処理場を、事実上「県」が強引に進めているのである。

 不適切な献金を受領しても道義的責任など「ない」と開き直り、川内原発3号機増設や産廃処理場建設といった問題では、ことごとく少数意見を無視してきた伊藤祐一郎知事と県議会。(→「伊藤鹿児島県知事に疑惑の100万円」)

 どうやら鹿児島県は、住民の安心・安全より、行政や企業の都合ばかりを優先するところらしい。

少数殺す狂った県政 
 gennpatu 020.jpg少数意見を圧殺する政治や行政の下で民主主義が熟成することはないが、子どもや孫の世代のことを心配して処分場建設に反対する地域住民らを、大量に動員した県職員らに制圧させるという暴挙に出た伊藤祐一郎知事。
 正気の沙汰とは思えぬ県政運営を行なう姿勢は、まさに独裁者のそれだ。

 鹿児島県では、原発推進や産廃処理場建設といった利権がからむ事案で、ろくに説明責任も果たさぬまま、反対意見を唱える人たちを押しつぶすような県政運営が続いている。
 
 チェック機関であるはずの県議会も、知事に同調する姿勢ばかりが目立つ。チェックどころか、原発推進の県議が原発交付金による公共工事を受注する自身のファミリー企業から、政治資金をもらっていたという体たらく。(→「川内原子力発電所の背景(Ⅲ)~原発マネー還流~」
 県民生活より利権が大切ということのようで、弾圧される県民が黙っているはずがない。

県が産廃処理場推進
 gennpatu 398.jpg産業廃棄物処理場をめぐっては、全国で様々な争いや事件が起きてきた。
 鹿児島県薩摩川内市でも、市内に建設が進められる処理場に反対する地域住民たちが、県に"説明"を求める運動を続けている。

 説明を求めるということは、それが実現していないということに他ならない。もちろん、県が説明責任を果たさぬ以上、建設に反対するというのは当然の権利である。

 たいていの場合、産廃行政の許認可権を有する県が、産廃業者に対し、地元自治体との「公害防止協定」を結ばせたり、地元の同意を確認するなどしてハードルを高くする。
 必要ではあるが迷惑施設でもある産廃処理場は、自然環境の破壊にとどまらず、住民に生命の危険さえ与える可能性があるからだ。

 これが管理型の最終処分場なら、なおさらである。

 処分場の地下に遮水シートを敷設するとはいえ、厚さはわずか1.5ミリ。なにかことがあれば破損し、地下水への化学物質流出などを引き起こす可能性は高い。

 薩摩川内市の処分場予定地付近には湧水があるというが、通常ならば管理型最終処分場建設など認められることがないはずの場所だ。

政・官・業で「迷惑施設」推進
 ごり押しがまかり通っているのは、事業者が県と一体である3セク「財団法人 鹿児島県環境整備公社」だからで、許認可権を持つ県は、やりたい放題という状況。
 同公社の概要を確認すると、県町村会、県商工会連合会、産業廃棄物協会といった団体が同公社に関与している。
 
 いずれも伊藤知事への献金を行なった政治団体や個人につながっているほか、薩摩川内市にある九電・川内原発がらみでは、こうした団体の支部が3号機増設推進運動の主力となってきたことも分かっている。(→「鹿児島県知事 杜撰な政治資金管理」・「鹿児島県知事側に町村会事務局長が100万円」)
 
 鹿児島県は、政・官・業をあげて迷惑施設の建設に邁進し、少数意見の圧殺に精力を傾けているようだ。(→「川内原発の『多勢に無勢』」)

県庁職員大量動員
 gennpatu 428.jpg今月4日、薩摩川内市にある問題の産廃処理場建設予定地を取材したが、早朝から建設予定地入り口付近に地元住民らが集結。
 
 しばらくすると冒頭の写真の腕章を巻いた県職員ら数十人を先頭に建設重機が登場、住民らを威嚇しはじめた。

 重機を載せた車両と「腕章部隊」は次々と数を増し、鹿児島県警の警察官もあちこちに・・・。
 
 住民らと向き合い、工事現場へ重機を入れるよう声を荒げる県関係者とは対照的に、動員された100人を超すと見られる県職員らは一切無言。陰鬱な表情は、まるで魂を失った抜け殻のようだ。
 
 それもそのはずで、職員らが"弾圧"しているのは、彼らの給料を支払ってくれている「鹿児島県民」。それも高齢者ばかりなのだ。
 gennpatu 439.jpg
 
 若い職員の今にも泣き出しそうな表情は、バカな県知事の思いつきで、薩摩川内市まで出張させられたあげく、自分の親ほどの年齢の人たちを相手に官の力を誇示するという、滑稽な役回りを演じさせられていることへの素直な気持ちの表れだろう。

 断っておくが、この弾圧行為は、決して「公共の福祉」に資するものでも、県民のためのものでもない。
 
 徴税側の県が、税金を使って納税者を苦しめるという愚行が許されるとは思えない。

 gennpatu 438.jpgこうした事態を生む県政は、明らかに歪んでおり、原発や産廃処理場といった県民の生命・財産に関わる重大案件を判断する資格などない。

 鹿児島県では、そのほかにも住民無視の県政運営が行なわれており、その決定権者は伊藤知事その人だ。

 HUNTERは、原発の背景を追って報道を続けてきたが、九州新幹線の全面開業に沸く鹿児島県の実情を、一連の問題を通じて報じていく。



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