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川内原子力発電所の背景(Ⅱ)

原発マネーに踊る業者

2011年8月10日 10:40

 鹿児島県薩摩川内市にある九州電力川内原子力発電所は、1号機の再稼動問題と3号機増設というふたつの大きな課題を抱えたまま、動きが止まった状態だ。
 今年3月11日の東日本大震災と、それにともなう福島第一原発の事故が起きていなければ、どちらも順調に事が運んでいたと思われる。
 3号機増設は、平成25年度に着工する計画だったが、増設への同意を与えたのは、原発立地自治体である薩摩川内市と鹿児島県である。報じてきたように、岩切秀雄薩摩川内市長と伊藤祐一郎鹿児島県知事の「同意」の拠りどころとなったのは、昨年、市議会、県議会において相次いで採択された3号機増設への『賛成陳情』だった。
 県には48団体、市には35団体の賛成陳情が提出されていたが、建設・観光といった業界団体の取りまとめの中心となったのは平成21年2月に薩摩川内市の業界団体が結集して設立された「川内原子力発電所3号機建設促進期成会」。代表者は、川内商工会議所の会頭で、鹿児島市に本社を置き、薩摩川内市に川内本部を置く「川北電工」の田中憲夫会長だった。

川北電工川北電工と九電
 川北電工は、終戦の年(昭和20年)に創業された電気工事業者で、年商60億円以上を誇る地場有力企業である。昭和22年に九電の前身「九州配電株式会社」と配電工事委託契約を締結した後、九電の肥大化に合わせて業容を拡大し、今日の基盤を築き上げた。
 
 同社が鹿児島県に提出した工事経歴書によれば、平成22年2月から今年2月までの1年間で68件、約21億5,000万円もの工事を九電から受注。それ以前の数字を見ても、九電の仕事は川北電工が独占している状態だ。
 例えば、九電の「内外線配電委託工事」は毎年川北電工が受注しているが、平成21年約13億8,400万円、平成22年約13億3,600万円の契約金額となっている。まさに九電の子会社と言っても過言ではない実態だ。
 現在、九電からの仕事が4割程度を占めているが、かつては6~7割に達していたという。
 
 薩摩川内の市民に取材したが、「九電の仕事は全部『川北』。九電工は出番なし」、「ここ(薩摩川内)は昔から川北さんが強いよ」といった川北と九電の親密さを示す話ばかり。ある50代の男性会社員は「川北さんは九電の子会社」とまで言い切った。
 九電にも確認しているが、川北電工は九電の出資を受けておらず、「子会社」ではない。しかし、九電の仕事の大半を当然のようにこなす同社を、多くの市民が九電の系列企業と見なしても不思議ではない状況なのだ。
 
 川北電工と九電の強い結びつきを示す事実は、受注実績以外にもある。川北電工には、平成16年以降、九電を退社して同社に入社し、営業所長などに就任した人物が3人いたことがわかっている。同社の登記簿で確認したが、取締役に就任した九電OBは、今年4月まで在職していた。

 川内原子力発電所の3号機増設は、電力の安定供給を原発に頼る国と九電の悲願だ。とりわけ九電にとっては、玄海原発1号機の老朽化問題などを抱え、発電能力のより高い原発の増設に迫られていたという事情があった。
 そして、3号機増設を推進する「川内原子力発電所3号機建設促進期成会」のトップに、九電と一心同体とも思える「川北電工」の会長が就任し、九電の事業を推進するための動きをしてきたということになる。

薩摩川内と原発マネー
薩摩川内市役所 九電のカネに支えられた企業が、九電本体のために「3号機増設」の旗を振っているという構図は、どう見ても公平・公正とは思えないが、薩摩川内市ではこれが通ってしまう。

 薩摩川内市議会は、昨年6月7日の定例会初日、川内3号機増設への賛成陳情について討論・採決を行なったが、この時に賛成討論を行なった市議の発言が同市の実情を語っている。あまりに分かりやすいので、発言の一部をそのまま紹介する。

《次に、川内原子力発電所1・2号機の交付金と経済効果について述べたいと思います。
 鹿児島県への交付金歳入累計2008年度までは、電源立地地域対策交付金440億円、放射線監視等交付金40億円、企業立地を支援するための電源地域振興促進事業費補助金10億円、核燃料税233億円などがあり、このうち391億円が 市町村や企業へ再交付されています。核燃料税については、当初の7%から現在12%であることから、今後、本市に原子力立地自治体として財源となるよう、岩切市長には県に強く要請をしていただきたいと思います。
 旧川内市・薩摩川内市への交付金・市税などの累計2007年度までは823億円。使用済核燃料税10億円などがあり、1号機の建設費2,800億円のうち地元発注は17%の470億円、2号機の建設費2,300億円のうち地元発注は10%の220億円。このほか定期点検1回につき約2,000人が来られますが、飲食や宿泊など経済効果は年間6億円と言われ、1・2号機の経済効果は建設期間からの29年間で1,690億円とも言われています。
 また、川内原子力発電所3号機建設についても、10年間で350億円の交付金や約700億円の建設地元発注、このほか固定資産税・市民税・使用済核燃料税等も市の財源となり、平成26年度に終了する合併特例債後の安定財源としても必要であります。
 さらに、今後の地域振興策の一つとして、県道43号久見崎までの県道整備や地元業者の参入、九州電力や県外業者の事業税の納付と薩摩川内市への移住で、本当の市民として仕事をしていただければ、より効果的な地元経済浮揚・地域振興策になります。
 よって、現在の日本の原子力発電所の安全性は非常に高く、バランスのとれた電源ベストミックスの推進や地元振興・地元発展のためにも、川内原子力発電所3号機増設賛成の陳情に賛成をいたします》。
 
 電源3法交付金、九電の工事費、原発関係者が地元に落とすカネといった、いわゆる原発マネーの実態を余すところなく伝える発言ではある。

川内商工会議所 3号機増設推進の先頭に立ったのは、こうした背景の象徴とも言える企業「川北電工」のトップだったことになる。
 原発をめぐる国や九電の迷走が続くなか、3号機増設についての現在の心境を聞くため、川内原子力発電所3号機建設促進期成会の会長である田中憲夫氏に、川内商工会議所を通じて取材の申し入れを行なった。
 しかし、田中氏は、同会議所専務理事を通じて「国のエネルギー政策がどのように変わっていくのか見定める必要があり、いまは取材に応じる時期ではないと考えている」とのコメントを伝えてきた。

 玄海原発の立地自治体「佐賀県玄海町」は、原発マネーと町長が直接結びついた歪んだ町政が展開されてきた。

 川内原発の背景にも、やはり原発マネーが存在する。ただ、鹿児島県の場合、より多くの企業や政治家の存在が見えてくる。
 川内3号機増設問題を通して、さらに検証を続けていく。



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