杜撰な政治資金処理の実態が次々と明らかになっている伊藤祐一郎鹿児島県知事の陣営に、またしても不適切な献金が行なわれていたことが判明した。
県発注の公共工事を受注している建設業者の役員や社員が、知事の資金管理団体に個人献金していたものだが、県知事選挙が行なわれた平成20年だけに集中しており、知事選がらみの政治資金提供だったと見られる。
伊藤知事の資金管理団体「いとう祐一郎後援会 祐祥会」が鹿児島県選挙管理委員会に提出した平成20年分の政治資金収支報告書によれば、この年、同団体に個人献金を行なった「会社役員」は124人。
しかし、24日に報じたとおり、収支報告書に記載された献金者の職業欄は、同団体側が推測で「会社役員」としていたことがわかっており、実際には会社役員以外の人間がかなりの数を占めると見られる。事実、確認できただけでも鹿児島県発注の公共工事を受注してきた建設業者らの役員および社員が多数含まれていた。
公職選挙法は、《衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない》と規定しており、伊藤知事陣営が受けた寄附は、ただちに違法というわけではないが、同法の趣旨には著しく反するものだ。
代表取締役以外の役員全員および社員、関連企業の関係者が組織的に献金していたのは同県南大隈町に本社を置く「百次建設」。代表者を除く役員全員に加え、社員まで献金していたことが判明しているが、同社は、県の発注する公共工事を受注してきた企業だ。
収支報告書には「会社役員」とされながら実際には役員ではないことが明らかとなっている同社の社員に話を聞いたところ、「役員ではありません」と認めたうえで、役員や社員がそれぞれ月10,000円を祐祥会に入金していたと言うが、個別に献金を行なうのではなく、献金者全員分の金額をまとめて処理していたとしている。
この話が事実ならば、社内の誰かが献金を呼びかけ、ある程度まとまった額を祐祥会に入金したことになり、政治資金規正法で規定された「あっせん」行為だった可能性が生じる。
同法は、《政治団体のために寄附のあっせん(特定の政治団体又は公職の候補者のために政治活動に関する寄附を集めて、これを当該政治団体又は公職の候補者に提供することをいう。以下同じ。)をした者は、その寄附のあっせんを終えた日から七日以内に、当該寄附をした者及び当該寄附のあっせんをした者の氏名、住所及び職業、当該寄附の金額及び年月日並びに当該寄附のあっせんに係る金額及びこれを集めた期間を記載した明細書を会計責任者に提出しなければならない》と規定しており、百次建設関係の献金にあっせんがあった場合は、通常の寄附の記載とは別に扱う必要がある。
このほか、地場大手ゼネコン「米盛建設」(鹿児島市)も、代表者や役員に加え同社関係者らが献金していた。
発注権限を有する知事の政治団体に対し、建設会社が組織的に献金をうながしていた可能性もある。