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古賀誠氏 後継指名の背景
茶番 ― 引退当日 早くもポスター登場

2012年11月19日 09:30

古賀誠氏と藤丸さとし氏のポスター 総選挙の日程が決まってから突然の引退表明、「3年前から決めていた」と言う古賀誠元自民党幹事長だが、後継候補を披露するまでの舞台裏には胡散臭さがつきまとう。

 自民党は、選挙区支部の支部長交代にあたって、次の人材を「公募」で選ぶことを原則としてきたはずだ。3年も前に引退を決めていたのなら、後継を決めるための公募を行うのが筋である。むろん議席の私物化は許されない。
 しかし、土壇場で引退を表明し、有無を言わせず後継指名した古賀氏の手法がまかり通れば、公募逃れが容易となり、結果「院政」が可能となる。

 古賀氏が引退の会見を開いた17日夜、同氏の選挙区である福岡7区の所々に、引退劇が茶番だったことを如実に示す印刷物が貼り出されていた。

福岡7区の金権選挙
 これまで報じてきた通り、古賀氏の引退が取り沙汰され始めたのは、今年9月の自民党総裁選が終わった直後だった。後継者として何人もの名前が浮上したが、一貫してHUNTERが注目してきたのは古賀氏の金庫番で公設秘書を務めてきた藤丸敏氏(52)である。

 古賀氏にはいくつもの顔がある。権謀術策に長けた武闘派の顔。戦争を否定し、平和の尊さを説くリベラル政治家の顔。派閥(宏池会)を率いて政局を操る大物政治家としての顔。そして公共事業を牛耳るダーティな政治屋としての顔である。

 様々な顔が、古賀氏をより巨大な存在に見せてきたのは確かだが、力の源泉が「カネ」であったことは明らかだ。
 資金管理団体「古賀誠筑後誠山会」を使った政治資金パーティで毎年数億円を集め、自らが代表である「自由民主党福岡県第七選挙区支部」に寄附。選挙となれば市町村ごとの党支部に資金を落とし、さらに支部内に細かく分かれた「分会」と称する地域ごとの組織に、飲み会としか思えない会合のためのカネをばら撒く。

 このシステムについては、昨年4月、「福岡7区に見る金権政治の現実」として13回にわたって詳細を報じている。
 とくに、「自由民主党八女郡支部」による選挙違反としか思えない政治資金の使い方については、独自取材で確認できた同支部の帳簿をもとに問題点を指摘。報道を受けた同支部は、政治資金収支報告書の大幅修正に追い込まれていた。(下はその帳簿の一部。分会への支出金額が記されている。)

書類3

(以下、クリックすれば当該記事にジャンプ)

「政治とカネ」地方の実態
古賀誠氏陣営の資金力
不透明な古賀誠氏系自民支部の支出
自民・八女郡支部が政治資金規正法違反
自民・八女郡支部「帳簿」に見る規正法違反の実態
自民・八女郡支部、選挙活動の実態
不透明な自民支部「分会」の支出
古賀誠・元自民党幹事長の集金力
古賀誠氏「誠山会」資金パーティの荒稼ぎ
パー券販売、会場収容人数の10倍
会場規模超えるパー券販売、常態化
「見えない」パー券購入者
2年間で約7億7,000万円 古賀誠議員の政治資金
古賀誠氏の自民支部 選挙区内に香典・祝儀 公選法に抵触の疑い

 古賀氏の選挙は、強権とカネの力で成り立っていたのだが、30年にわたって古賀氏を支えてきた藤丸氏は、こうした手法を熟知している。福岡7区で、再び金権選挙が行なわれる可能性は否定できない。
 すでにその兆候が見え始めているのだ。

茶番の証明
 次の写真は、古賀氏が引退を正式表明した当日から、選挙区(福岡7区)の各所にある自民党掲示板に貼られたポスターである。
古賀誠氏と藤丸さとし氏のポスター 映っているのは衆議院議員の肩書きを外した古賀氏と、その後継者とされる藤丸敏氏である。正式な党公認も決まっていない段階であるにもかかわらず、藤丸氏の名前は「さとし」と平仮名書き。あきらかに選挙モードだ。

 自民党演説会の告知ポスターという体裁をとっており、その期日はなんと来年の3月10日。できる限り長く貼り出すための手法なのだが、引退表明の当日にポスターが貼られるということは、用意周到に準備を進めてきた証しでしかない。

 3年前に引退を決めていたという古賀氏だが、それならなぜ早い時期に正式表明し、「公募」という党が決めた形を選択しなかったのか。
 引退表明をギリギリまで引き延ばし、古賀氏自身の意中の人物を後継に据えるための茶番劇。このポスターは明らかにその証明であろう。

金権政治の系譜
 ただし、この茶番劇の裏にはドロドロした古賀氏の周辺事情があったことも事実のようで、よもやとは思うが、当の後継者が主である古賀氏に強く引退を迫ったとの関係者の話もある。

 HUNTERは、1年以上古賀氏の政治資金を追ってきた。最近になってたどり着いていたのが、噂されてきた建設業界から古賀氏側にわたる闇のカネの動きと集金システムの詳細だった。そして、古賀氏側の窓口こそ、藤丸敏氏その人なのである。
 金権政治の系譜を引き継がせるためには、身内か金庫番を選ぶしかない。引退を決意した古賀氏は、すべてを知る藤丸氏を選ぶしか道がなかったと見ることもできる。

 高価なクラシックカーやクルーザーを保有してきたとされ、多彩な趣味を持つ実力派秘書の足跡は、クラシックカーのレース結果でも明らか。あるレースで藤丸氏が駆ったのは、「フェラーリディーノ 206GT」という数千万円はする名車だという。
 その藤丸氏は、もうじき正式な自民党支部長の座におさまり、事実上の「公人」となる予定だ。ぜひ、これまでの足跡について聞いてみたいものだが・・・。



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