「口利き」疑惑の渦中にある片山さつき地方創生担当相の“私設秘書”だったと見られている税理士が、九州地方選出のある野党議員の事務所に、自分を秘書に雇うよう持ち掛けていたことが分かった。
関係者の話によれば、税理士からの売り込みは今年9月中旬。電話とメールで複数回あったといい、議員事務所側は「怪しい」と判断して相手にしなかったという。
疑惑の税理士は、秘書記章(バッジ)と帯用証(通行証)を手に入れ、永田町を舞台に“ひと稼ぎ”を狙った可能性がある。
(写真は参院議員私設秘書の記章)
■秘書記章(バッジ)と帯用証(通行証)はセット
口利き疑惑で時の人となっている税理士は、南村博二氏。2015年に、青色申告の取り消しを避けようとした会社経営者から相談を受けた片山氏側が、私設秘書で税理士でもある南村氏を紹介し、経営者は“口利き”の対価として、同年7月に100万円を支払ったとされる。南村氏は、報道各社の取材に対し、100万円を受け取ったことを認めている。
報道によると、南村氏が私設秘書しか持つことのできない国会の通行証と秘書バッジを所持していたのは15年5月まで。その後の動向は分かっていないが、今年の秋になって何らかの理由で通行証とバッジが必要になったものとみられる。ちなみに、通行証と秘書バッジはセット。二つ揃わないと、議員会館や国会の中を動き回ることはできない。(*下が話題の「通行証」)
■「秘書に雇えば役に立つ」 ― 参院議員側にしつこく売り込み
取材に応じた参院議員の事務所関係者によると、南村氏が秘書雇用を持ち掛けてきたのは今年9月の中旬頃。議員会館の事務所に、自身が寄稿しているローカル紙の記事をFAXで送り付けてきて、その後に電話で「私を秘書にすると役に立つ」として、雇用するよう政策秘書にしつこく迫ったという。前後して、議員本人にも雇用を促すメールが届いたが、事務所側は「怪しい」と判断して相手にしなかったとしている。
南村氏の税理士事務所があるのは、福岡県大牟田市。複数のスタッフを置き、本人はローカル紙『有明新報』に、「市民のための経営管理講座」というコーナーを持っている。国会議員の私設秘書として働く必要などないはずで、暮らしのために肩書にこだわったとは思えない。
そうなると、考えられる理由は限られる。政治目的か商売目的のどちらか、ということだ。政治目的なら、ただのマニアだが、そうではあるまい。
国会議員の事務所には、税務署や国税との調整を求める経営者が相談に訪れることがしばしば。南村氏は税の専門家だ。「議員秘書」になれば、政治家の支持者の税務相談にのって自分の税理士事務所の収入につなげることもできるし、税務当局への圧力をかけることも可能。“一石二鳥”と考えたとしても不思議ではない。実際に同氏は、片山大臣の秘書時代、税務相談で100万円を受け取っているのだ。
片山氏は南村氏のことを「秘書ではなかった」と主張している。だが、南村氏が所持していた通行証とバッジは、議員側が「私設秘書」であることを認める書類を参議院事務局に提出しなければ支給されないもの。霞が関や永田町での生活が長い片山氏は、当然知っていたはずだ。どうやら片山氏は、分かっていても嘘をつかざるを得ない状況に追い込まれている。