自民党の古賀誠元幹事長(衆院福岡七区。当選10回)は、同党の派閥である古賀派(宏池会)の領袖である。国政に睨みを利かすとともに地元福岡7区では、絶対的な権力者として恐れられる存在だ。
写真の「おぼろ大橋」(福岡県八女市)をはじめ、有明海沿岸道路や新幹線の新駅など、いずれも古賀氏の政治力がなければ実現しなかったと言われる。
地元自治体の首長や建設業者が古賀氏に背くことができないのは、公共事業の予算を背景にした古賀氏の力を恐れるからに他ならない。
自他共に認める実力者の力の源泉は「カネ」である。しかし、報じてきたように古賀氏をめぐる政治資金は、出所も使途も不明朗で、政治資金規正法はもとより有権者が求める政治資金の透明化とは程遠い状態だ。
法の不備つく資金処理
古賀氏の資金管理団体「古賀誠筑後誠山会」(以下、誠山会)が政治資金パーティで集めたカネを「自由民主党福岡県第七選挙区支部」(以下、七区支部)に寄附し、そこからさらに地域ごとの自民支部に交付金の形で配分していくシステムは、政治資金規正法や公職選挙法を骨抜きにするものだった。
誠山会が開催した政治資金パーティでは、平成20年と21年の2年間で3億円ものカネを集めながら、政治資金収支報告書にはその約5.5%分のパーティ券購入者しか記されていない。9割以上の金額については資金提供者が隠された形だ。"20万円以上"のパー券購入者の報告書記載を義務付けた政治資金規正法の不備をついた手法である。
次に誠山会から七区支部に流れたカネは2年間で1億9,800万円、さらに七区支部からは選挙区内の六つの自民支部に計7,000万円近くが配分された。だが、国会議員関係政治団体以外の政党支部や政治団体に、経常経費や5万円以上の支出の報告義務がないことから、各支部の支出合計の7割がどこに消えたのかわからない。政治資金規正法は、まさに「ざる法」だ。
政治団体の収入
それでは、古賀氏が年間に集めるカネは一体いくらになるのだろう。総選挙にむけて臨戦態勢となった平成20年と、選挙が行なわれた21年にしぼって見てみた。
【古賀誠筑後誠山会】
<平成20年>
1億8697万9,530円(政治資金パーティ1億8197万9,580円。団体からの寄附500万円)
<平成21年>
1億1339万9,580円(政治資金パーティのみ)
2年間合計3億37万9,110円
【自由民主党福岡県第七選挙区支部】
<平成20年>
1億5880万2,000円(誠山会からの寄附1億円を含む)
・ 自民党本部、県連から1,838万円
・ 個人献金が130万円
・ 企業献金が33社5法人から957万2,000円
・ 5万円以下の企業献金735万円
・ 団体献金2220万円(誠山会からの1億円を除いた金額)
計5,880万2,000円(誠山会からの1億円を除いた金額)
<平成21年>
1億8,021万2,400円(誠山会からの寄附9,800万円を含む。)
・ 自民党本部、県連から3,010万円
・ 個人献金が567万円
・ 企業献金が25社6法人から1,066万2,400円
・ 5万円以下の企業献金716万円
・ 団体献金2,862万円(誠山会からの9,800万円を除いた金額)
計8,221万2,400円(誠山会からの9,800万円を除いた金額)
2年間合計1億4,101万4,400円
誠山会と七区支部の2年間の収入合計金額は4億4,139万3,510円となる。
自民党本部から3億2,500万円の「政策活動費」
古賀誠元幹事長が集めたカネは、政治資金収支報告書上では約4億4,000万円余りということになるが、じつは、古賀氏が手にした政治資金はこれだけではない。
自由民主党本部の政治資金のなかには「政策活動費」なる打ち出の小槌が存在する。
領収書1枚で政治家個人に支出されるカネだが、その使途はまったくわからない。これまで度々問題視されながら、自民党が情報開示に応じたことがない、いわばブラックボックスなのだ。
同党本部の平成20年と21年の政治資金収支報告書には、その支出先と金額のみが記されているが、その中から古賀元幹事長への支出だけを拾った。
<平成20年>
・ 1月11日 700万円
・ 1月18日 500万円
・ 3月 3日 300万円
・ 3月12日3,000万円
・ 4月 9日3,000万円
・ 4月16日2,000万円
・ 6月20日 250万円
・ 9月25日1,000万円
・ 10月21日 40万円
・ 10月21日471万1,820円
・ 12月11日 250万円
計1億4,511万1,820円
<平成21年>
・ 3月18日1,000万円
・ 4月22日 500万円
・ 5月 8日2,000万円
・ 5月 8日1,000万円
・ 6月11日 300万円
・ 6月11日3,000万円
・ 6月15日2,000万円
・ 6月17日3,000万円
・ 6月18日2,000万円
・ 6月30日4,000万円
計1億8,800万円
古賀氏個人の領収書が切られるたび支出された金の合計は、
1億4,511万1,820円+1億8,800万円=3億2,511万1,820円ということになる。
領収書1枚でこれほどのカネを動かして、その使途がわからないというところが、この国の政治の不透明さを如実に示している。
古賀元幹事長の資金管理団体「古賀誠筑後誠山会」と「自由民主党福岡県第七選挙区支部」が平成20年から21年にかけて集めた4億4,139万3,510円と自民党からの「政策活動費」3億2,511万1,820円を足せば7億6,650万5,330円という驚くべき数字にたどり着く。
これが、古賀誠という大物政治家がわずか2年間で実際に得た政治資金なのだ。