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自民・八女郡支部「帳簿」に見る規正法違反の実態
~福岡7区に見る金権政治の現実(5)~
修正作業に古賀誠氏秘書が関与

2011年4月21日 08:30

 「自由民主党八女郡支部」(以下、八女郡支部)が福岡県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書には、正確な収支の状況が記されていなかった。
 違法性を指摘され、あわてて修正したものの、帳簿改ざん、収支報告書の虚偽記載が疑われる事態になったうえ、修正作業に古賀誠・元自民党幹事長の秘書が関与していたことが明らかとなった。
 
 3月8日にHUTERの記者が取材した時点では、同支部が福岡県選挙管理委員会に提出した「政治資金収支報告書」の記載金額と、その基礎資料となる支部の帳簿に記載された金額が一致しないことに加え、義務づけられた5万円以上の支出についても報告していないものが複数確認されていた。
 
 同支部の事務担当者に断ったうえで撮影した帳簿、通帳から、同支部の政治資金処理の問題点を検討したが、帳簿記載に間違いがなければ、現時点でも同支部の政治資金処理は政治資金規正法に違反する状態だ。
 
収支報告書の金額、帳簿と一致せず
 まず、同支部の平成20年分の収支報告書では、前年からの繰越し金額が2,240,630円、収入総額が10,296,592円、支出総額が4,625,233円となっているが、同支部の「帳簿」における年初の「前年度繰越金」は654,570円、決算時の数字は収入額が8,710,532円、支出額は6,663,704円。まるで違う金額である。

書類0

書類1  書類1-2

 平成21年についても同様で、収支報告書上は前年からの繰越し金額が5,671,359円、収入総額が8,521,159円、支出総額が8,056,106円であるのに対し、同支部の「帳簿」における年初の「前年度繰越金」は2,046,828円、決算時の数字は収入額が9,326,479円、支出額は8,861,426円だ。
 この年の帳簿では最終金額として、入金、支出の両方から何らかの理由で428,000円を引き、それぞれ8,898,479円、8,433,426円となっているが、数字がまったく違うことには変わりがない。

書類2  書類2-2

藪の中 
 こうした点について、八女郡支部側は県選管に提出した報告書の金額が帳簿上の金額と違っていることは認めたものの、なぜこうした行為が行なわれたかについては説明できなかった。

 取材目的の、古賀誠元自民党幹事長が代表を務める「自由民主党福岡県第七選挙区支部」からの交付金600万円については、支部の通帳および帳簿から、平成21年5月14日に入金があったこと、領収書発行は八女郡支部の事務担当者が発行したこと、の2点が確認された。
 しかし、収支報告書に200万円しか記載しなかったことについては、事務担当者も会計責任者もよく分からないという。
  
 さらに、帳簿と収支報告書記載の金額が、数年間にわたって違っていたことも認識していたとしているが、年によって収支報告書を作成する人間が違っていたため、整理がつかない状態のままになっていたという。真相はまさに藪の中だ。

書類3

修正不十分 さらなる疑問
 収支報告書の記載は虚偽で、政治資金規正法違反ではないかとの指摘を受けた八女郡支部側は、数日かけて帳簿を精査したうえで「帳簿を作り直し」(同支部幹部)、収支報告書の修正に及んだと説明している。
 だが、通帳や帳簿で、平成21年5月14日に第七選挙区支部からの600万円入金の事実が確認される状態でありながら、これを200万円として報告したことへの説明はついていない。
 なお、帳簿では第七選挙区支部からの600万円を「福岡県連より」と記しているが、支部側は、古賀誠事務所からの連絡で第七選挙区支部による入金であることが分っていたとしている。
 
 八女郡支部側は、「帳簿を作り直した」としているが、修正された収支報告書を見る限り、その作業が完全でなかったことは明らかだ。
 前述したとおり、同支部の平成20年分、同21年分の「政治資金収支報告書」の記載金額と、支部の帳簿に記載された繰越し金額や総収入・支出が違っており、その状態は平成19年から続いていたことが分っている。
 今回の八女支部側の収支報告書の修正は、平成21年分に関してであり、過去の年に遡って修正しなければ正確な政治資金の流れはつかめないのだ。
 修正そのものが単に第七選挙区支部からの600万円を表に出すための、いわば"その場しのぎ"だったと見られてもおかしくない。
 帳簿にあった何件もの5万円以上の支出についても、4月19日現在、収支報告書には記載されていない。現時点で「政治資金規正法違反」と述べてきたのは、そうした事実を踏まえてのことなのだ。
 
 「つくり変えた」帳簿が、法令違反を指摘された時点と大きく変わっており、時系列的な整合性を有していない場合は、「改ざん」の可能性も生じる。
 古賀誠氏側からのカネの流れを隠したと言われてもおかしくない今回の事態は、"修正して終わり"という次元の話ではない。

古賀元幹事長の秘書が修正作業に関与 
 注目したいのは、八女郡支部の帳簿「つくり変え」から収支報告書の修正といった一連の作業に、古賀誠元幹事長の秘書が関与していたという事実だ。これについては八女郡支部の複数の幹部が認めているほか、報告書の修正のため県選管を訪れた同支部一行に同行した人物が古賀氏の秘書だったという確認がとれている。
 もともと同支部の収入「600万円」が、200万円という違った金額で報告されていたことが発端となった今回の事態だが、問題の「600万円」は、古賀誠氏側が代表である「自由民主党第七選挙区支部」からのカネ。
 それを隠した形となって問題化したにもかかわらず、古賀氏の秘書が帳簿の「つくり変え」から県選管での修正にまで関与したことには、疑問を抱かざるを得ない。さらなる隠蔽を行なったのではないか、という素朴な懐疑だ。
 古賀氏側が「八女郡支部がやったこと」で済ます話でもなくなった。

 八女郡支部の帳簿には、平成21年夏の総選挙における"公職選挙法違反"を疑わせる記載があるのだ。

つづく



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