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福岡7区に見る金権政治の現実(2)
~古賀誠氏陣営の資金力~

2011年4月18日 08:30

 平成21年夏の総選挙、福岡7区の戦いでは、自民党・古賀誠元幹事長が圧倒的な資金力を見せつけ、小選挙区での勝利を引き寄せた。
 事実上の選挙戦は、麻生内閣が誕生し解散風が吹きはじめた平成20年の秋に始まる。
 同年9月、福岡7区の民主党公認候補が差し替えとなり、新たな対立候補に古賀氏の元秘書で当時八女市長だった野田国義氏(九州比例で復活当選)が正式に擁立されたのである。野田氏は古賀氏の秘書を7年間務めた経験があり、古賀氏の手の内を熟知していたことから最強の刺客と見られていたのだ。
 「政権交代」が叫ばれ、自民党への逆風が吹き荒れるなか、古賀氏はかつてない危機感をもって戦いに臨んだと思われる。
 動いたカネの額が如実にそれを物語っていた。

まず2週間で2300万円
 マスコミが「師弟対決」に注目するなか、古賀氏は地盤固めのため、早々に選挙向けの軍資金を分配する。この年の「自由民主党福岡県第七選挙区支部」(代表:古賀誠)の政治資金収支報告書を見ると、野田氏が小沢一郎民主党代表(当時)と出馬会見に臨んだ9月25日以降、選挙区内の六つの自民党支部に対し、矢継ぎ早に「交付金」が配られている。
10月7日 「自由民主党柳川支部」に200万円
10月7日 「自由民主党八女郡支部」に500万円
10月7日 「自由民主党筑後支部」に300万円
10月8日 「自由民主党八女市支部」に500万円
10月9日 「自由民主党山門支部」に500万円
10月20日 「自由民主党大牟田支部」に300万円
合計2,300万円である(以下、支部名から『自由民主党』をとり、柳川支部、八女郡支部、八女市支部、筑後支部、山門支部、大牟田支部と表記)。

 この年はそのほか、9月はじめに八女郡支部に200万円、7月に山門支部、八女市支部へそれぞれ60万円、50万円が同じく交付金として支出されていた。
 第七選挙区支部から出た交付金を合計すると2,610万円となるが、前述した六つの自民支部への2,300万円は野田氏の出馬会見後、2週間あまりの間に集中している。

収支報告書1-1  収支報告書1-2

10か月で6600万円
 平成21年、リーマンショックの影響で、麻生太郎氏が解散先延ばしを余儀なくされるなか、資金難に苦しむ野田陣営を尻目に、古賀誠氏陣営は余裕綽々の活動ぶりを示す。
 当時の取材メモによれば、野田氏陣営は解散が先送りになったことで陣容を縮小。いつになるか分からない選挙に備え、資金計画そのものの見直しを迫られるというのっぴきならない事態に陥っていた。
 しかし、古賀氏側は豊富な資金力で選挙基盤の強化を進める。
 
 平成21年分政治資金収支報告書によれば、古賀氏側からの上記6自民支部に対するこの年の交付金の動きは次のとおりだ。
柳川支部  →(2月300万円、7月500万円で合計800万円)
八女郡支部 →(5月600万円)
八女市支部 →(2月300万円、7月500万円で合計800万円)
筑後支部  →(2月300万円、7月500万円で合計800万円)
山門支部  →(8月1,000万円)
大牟田支部 →(6月300万円)
合計すると4,300万円となる。 
 
 選挙態勢が敷かれた平成20年10月から21年8月までのわずか10か月間で、各支部への軍資金はそれぞれ1,000万円を超える。
六つの自民支部がこの期間に受け取ったのは、
柳川支部   1,000万円
八女郡支部 1,100万円
八女市支部 1,300万円
筑後支部   1,100万円
山門支部   1,500万円
大牟田支部   600万円
となり、配られたカネの合計は6,600万円にのぼる。けた外れの資金力と言ってよかろう。

収支報告書

平成19年は340万円に過ぎなかった
 7,000万円近い交付金は、明らかに総選挙に向けてのものだ。その証拠に、衆院解散が政治日程にのぼらなかった平成19年、古賀氏の第七選挙区支部が上記六つの自民支部に支出した交付金は。
柳川支部    40万円
八女郡支部 200万円
大牟田支部 100万円
の計340万円に過ぎない。筑後、山門、八女市の各支部に至っては、1円も配られていないのだ。
 翌20年に解散風が吹き始めてからの各自民支部への交付金が「選挙資金」であることは疑う余地がない。ただし、古賀陣営にとって第七選挙区支部から支出した約7,000万円の交付金は、選挙向け軍資金の一部でしかない。
 同支部の政治資金収支報告書には、問題の交付金以外にも"選挙対策費"として千万円単位の支出があるのだ。もちろん、古賀氏の関連政治団体としては、同支部のほかに資金管理団体である「古賀誠筑後誠山会」が存在し、選挙向けの資金はさらに増大する。本稿では自民支部間のカネの動きにスポットをあてているため、全体像は、シリーズの後半で詳述したい。

収支報告書2-1

自民支部使った選挙のあり方に疑問
 それでは、対抗馬である野田氏陣営のカネの動きはどうだったのだろう。
 じつは、野田氏が出馬表明した平成20年9月から、平成21年8月までの民主、自民の両陣営を単純に比較しようとしても難しい。
 民主党は福岡7区内に野田氏が支部長を務める「民主党福岡県第7区総支部」以外の支部を有しておらず、古賀氏陣営のように交付金の形で各地域にカネを落とす手立てがなかったのだ。
 古賀氏陣営は、地域ごとの自民支部に対し交付金の形で大っぴらにカネを落とすことが可能だったが、野田氏側は支部がないため不可能。(もっとも、野田氏陣営の政治資金収支報告書を確認すると、落とすカネそのものがなかったことがわかる。野田氏が代表を務める「民主党福岡県第7区総支部」の平成20年と21年を合わせた「総収入」が、2,500万円にも満たないのだ。自民・古賀氏陣営の市町村支部レベルでしかない。)
 これだけ資金力が違えば、各地域での戦いに差がつくことは容易に想像がつく。物量差があり過ぎるというべきかもしれない。くり返すが、こうした軍資金ばら撒きを可能にしているのが地域ごとに設立されてきた自民党支部の存在なのである。
 各地の自民支部は、国政選挙における軍資金の合法的受け皿ということだ。 

 国政選挙の候補者サイドが、選挙区内の県議の後援会など地方議員の政治団体に寄附した場合、時期によっては公職選挙法で禁じる「買収」を疑われる可能性が生じる。しかし、政党支部間の交付金の形なら文句のつけようがない。
 自民党の場合、各地の県議や有力者が代表を務める支部を設立しているのは、国政選挙における公選法上の疑念を払拭するためと思われる。
 このため、同一地域に同一の代表者を据えながら、異なる性格をもった自民支部が並立している。 

 3月に報じた柳川市のケースをみても明らかなのだが、同市には「自由民主党柳川支部」と「自由民主党福岡県柳川第一支部」があり、ふたつの支部の代表者は江口吉男前県議(4月10日の県議選で落選)だった 。
 「柳川支部」が第七選挙区支部からの軍資金を受け取るための支部で、「福岡県柳川第一支部」は江口前県議自身の企業献金の受け皿となっていた。 
 つまり、、「自由民主党」のあとに市や郡などの名称がつづくものが地域を包括する支部であり、国政選挙対策を担う。
 一方、「自由民主党」のあとに「福岡県」がつづき、さらに「○○第△支部」となれば地方議員の集金装置と見てよい。
 これは、全国の各自民党支部に共通する。

 古賀氏陣営による7,000万円もの「交付金」が総選挙のために費消されたのは明らかなのだが、政党の活動と候補者個人の選挙向けの政治活動との区別がつかないというのが実態で、改めて論議の必要があろう。

 それでは、古賀氏の第七選挙区支部から支出された7,000万円あまりのカネはどのように使われたのだろう。今度は各支部の「支出」という角度から検証してみよう。

つづく



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