福岡市が、道路維持業務に関する特定事業者との長年にわたる「随意契約」を指摘され「公募」による業者選定に変更しながら、「応募者がいなかった」(市側説明)として、これまで通りの随意契約を続けていたことがわかった。
公募要件は、機材や人員の手配などに十分な時間が必要となる業務だが、極めて短期間での応募を求めるなど理不尽な内容。形だけの公募だったことは明らかで、特定業者への便宜供与が疑われる状況だ。(写真は福岡市役所)
■他業者排除の公募内容
問題の契約は、福岡市と福岡市博多区に本社を置く「環境開発」との間で交わされている道路維持に関する業務委託。市内一円の道路や下水管の破損、河川の詰まりなどに対して、24時間体制で緊急処理を行うもので、契約額だけでも年間5億円超。暗渠清掃・緊急処理・安全対策などを含む道路維持に関する業務委託は、2013年まで「特命随契」の形で環境開発が独占的に受注していた。
過去に特定事業者との長期随意契約に批判が出たことや、2002年度の包括外部監査で「競争入札の検討を」と指摘されたことを受けた福岡市は、道路清掃や補修業務などについて14年までに随意契約をなくすことを決定。環境開発が受注していた道路維持業務は、同年から公募による業者選定が行われていた。
ところが、公募は形だけ。福岡市への情報公開請求と取材によれば、公募公示書に「公募の結果、応募者がいない場合(中略)特定の者との随意契約の手続きに移行する」とする抜け道を用意し、「応募者がいなかった」(市側説明)として、従来通りの「随意契約」で環境開発との契約を結んでいた。14年以降、毎年同じことが繰り返されている。
公募が形式的なものだったことは、市が作成した公募要件にも表れている。平成29年度の要件をみれば、常時4班の作業体制をとれることや下水道管理や危険作業に関する有資格者数の確保、高圧洗浄機や強力吸引車などの特殊機材を保有する証明、緊急対応の計画書の提出などが求められていることがわかる。条件をクリアしないと応募はできない格好になっているが、公募期間はたったの2週間。昨年度の公募では、「平成29年11月17日から同年12月1日」が応募期間となっていた。ある業界関係者は、「これだけの条件を2週間で揃えるのは至難の業。初めから環境開発以外の業者を排除するための仕組みだ」と話している。
形だけの公募で、事実上の特命随契――過去の包括外部監査の指摘は、まったく反映されていなかったことになる。さらに取材を進めるなか、環境開発の業務遂行体制に大きな問題があることも判明。背景に、福岡市と同社の“癒着”が見え隠れする状況となっている。詳細については、次週の配信記事で報じる予定だ。