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古賀誠氏「誠山会」資金パーティの荒稼ぎ
~福岡7区に見る金権政治の現実(9)~

2011年5月23日 11:00

 古賀誠・元自民党幹事長(衆院福岡7区。当選10回)は、自民党の派閥「宏池会」の会長である。宏池会は創設者である池田勇人元首相をはじめ、大平、鈴木、宮沢と4人の宰相を送り出した「保守本流」を自負する老舗派閥だが、かつては官僚出身者が多かったせいか「お公家さん集団」と揶揄されることもあった。
 古賀氏は、そうした宏池会にあっては珍しい"たたき上げの党人派"として着実に力をつけ、実力者に上り詰めた政治家である。
 国会議員秘書から昭和55年に衆院議員に初当選。これまた「宏池会」には珍しく、建設政務次官、党建設部会長、衆院・建設委員長、運輸大臣、党道路調査会長の経歴が示すとおり、建設族の大物だ。
 この間、総務会長、国対委員長そして幹事長と党の要職も歴任しており、自民党を代表する政治家であることは言うまでもない。
 しかし、古賀氏の政治手法は、力の源泉を「カネ」に求める、まさに「自由民主党」を象徴するものだった。政治力を裏打ちしてきたのは古賀氏が絡む公共事業であったことは、古賀氏自身が公言してきたことでもある。
 平成21年の総選挙の直前、自身が建設に尽力した橋や道路に「誠」の名を冠され批判の対象となっていたことについて、古賀氏は「朧橋が『誠橋』であれ、有明海の道路が『誠道路』であれ、なぜ、今それを必要としているのか考えていただきたい」と胸を張った。
 その古賀氏の資金管理団体「古賀誠筑後誠山会」(以下、誠山会)の集金力には脱帽せざるを得ない。

誠山会の政治資金パーティ
 福岡県選挙管理委員会に提出された誠山会の政治資金収支報告書では、平成20年の収入が186,979,580円、21年の収入が113,399,580円となっている。

 平成20年の収入のうち500万円が「全国不動産政治連盟」から寄附されているほかは、すべて政治資金パーティによるもので、21年は収入のすべてを政治資金パーティによってまかなっていた。

機関紙誌の発行その他の事業による収入1  機関紙誌の発行その他の事業による収入2
 
 
両年の政治資金パーティの開催状況は次のとおりだ。(注:開催日、パーティの名称、開催地、収入金額、の順)

【平成20年】パーティ収入=181,979,580円
2月16日「平成20年衆議院議員古賀誠後援会新春の集い」(福岡) 69,520,000円 
2月29日「古賀誠朝食懇談会」(東京) 8,040,000円 
4月21日「古賀誠政経セミナー」(東京) 47,159,790円 
8月 1日「古賀誠朝食懇談会」(東京) 6,620,000円 
9月15日「古賀誠政経セミナー」(東京) 27,679,790円
12月5日「古賀誠夕食懇談会」(東京) 22,960,000円

【平成21年】パーティ収入=113,399,580円(注:前年12月開催の夕食懇談会分の事後収入40万円を含む)
2月20日「古賀誠朝食懇談会」(東京) 6,520,000円
4月13日「古賀誠政経セミナー」(東京) 41,959,790円
7月10日「古賀誠朝食懇談会」(東京) 27,600,000円
11月30日「古賀誠政経セミナー」(東京) 36,919,790円

 庶民からすると、驚くべき回数の政治資金パーティというほかない。年間を通じて、のべつ幕なしに政治資金パーティを開催している状況で、どうやってパーティ券を捌いているのか不思議でもある。

ベテラン議員秘書も驚いた 
 長く自民党国会議員に仕えてきたある現役秘書は次のように語る。「東京で政治資金パーティを行う場合、パーティ券1枚の金額は20,000円が相場。少し偉くなると30,000円もあるが、そんな時は顰蹙ものですね。不景気ですからパー券を押し付けられる企業や団体の方は大変なんですよ。古賀さんのパーティで驚くのは、どうやってこれだけの回数をこなしているのかという点です。通常、パー券を売り捌くのには秘書が企業や団体を回り、必死で頼み込んでなんとか格好をつけるという状況。ものすごい労力と時間がかかる。(パーティ開催は)年1回か良くて2回がいいところ。古賀さんのところは議員会館のほかには個人事務所を構えていなかったと思うし、スタッフも少ないはず。派閥で捌くのかな?たしかに(古賀氏は)実力者ではありますが、このご時世によくぞという感じですね」。

開催費は収入の1割以下
 古賀氏のパーティの特徴は、もうひとつある。
毎回のパーティの開催費用が極端に安く、収入の9割以上が「利益」になっていることだ。
 前掲した各パーティの収入と、会場借り上げ料などの開催費用を比較した。(注:%の数字は収入に対する開催費用の割合。パーティ名称は略している)

【平成20年】
2月16日「新春の集い」(福岡) 69,520,000円 → 6,323,056円(9%) 
2月29日「朝食懇談会」(東京) 8,040,000円 → 900,087円(11%)
4月21日「政経セミナー」(東京) 47,159,790円 → 2,413,678円(5%)
8月 1日「朝食懇談会」(東京) 6,620,000円 → 888,597円(13%)
9月15日「政経セミナー」(東京) 27,679,790円 → 2,035,595円(7%)
12月 5日「夕食懇談会」(東京) 23,360,000円 → 1,212,200円(5%)
 パーティ収入=182,379,580円(注:12月開催の夕食懇談会分に翌年分収入40万円を足したもの)に対し、開催費計は13,773,213円で7.5%。

【平成21年】
2月20日「朝食懇談会」(東京) 6,520,000円 → 882,588円(13%)
4月13日「政経セミナー」(東京) 41,959,790円 →3,106,924円(7%)
7月10日「朝食懇談会」(東京) 27,600,000円 →1,260,906円(4.5%)
11月30日「政経セミナー」(東京) 36,919,790円 →2,357,694円(6%)
 パーティ収入=112,999,580円(注:前年12月開催の夕食懇談会分の事後収入40万円を引いたもの)に対し、開催費の計は7,608,112円で6.7%。
 
 2年間のパーティ開催状況をまとめると、約3億円近くを集めながら、かかった費用は約2,100万円で収入の7%程度に過ぎない。荒稼ぎと言っても過言ではあるまい。 
 
 もともと政治資金パーティは、政治資金規正法で認められたカネ集めの手法ではあるが、古賀氏の場合は、割り切っているというか「商売上手」と言うべきか、経費をかけずにカネを集めることに何の躊躇も感じられない。

 問題はその内容である。

つづく



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