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福岡7区に見る金権政治の現実(3)
~不透明な古賀誠氏系自民支部の支出~

2011年4月19日 08:30

  国会議員関係政治団体は、人件費を除く経常経費の内訳と1万円以上の支出先を政治資金収支報告書に記載するとともに、すべての支出(1円以上)に関する領収書を3年間保管し、開示請求に応じなければならない。平成19年に政治資金規正法が改正(20年施工・21年分の収支報告から適用)されたためだ。
 しかし、いったん国会議員関係政治団体からそれ以外の政治団体(政党支部も)に資金が移されてしまえば、経常経費の内訳を報告する義務がなくなるばかりか、5万円未満の支出なら個別に報告する必要もなくなる。
 この手法を使えば、国会議員関係団体の支出について、巧みに隠すことも可能。現行法の抜け道といえる。
 ちなみに、古賀誠・元自民党幹事長の国会議員関係政治団体は「自由民主党福岡県第七選挙区支部」と「古賀誠筑後誠山会」の二つである。

 衆院福岡7区の自民党支部は、古賀誠元自民党幹事長が代表を務める「自由民主党福岡県第七選挙区支部」のほか、「自由民主党柳川支部」、「自由民主党八女郡支部」、「自由民主党筑後支部」、「自由民主党八女市支部」、「自由民主党山門支部」、「自由民主党大牟田支部」、「自由民主党福岡県柳川市第一支部」、「自由民主党福岡県大牟田市・三池郡第一支部」、「自由民主党福岡県大牟田市・三池郡第二支部」、「自由民主党福岡県山門郡第一支部」の10支部が存在する。(以下、支部名から『自由民主党』及び『福岡県』を除いて表記)
 
 このうち、第七選挙区支部から事実上の選挙資金と思われる「交付金」を受領していたのは「柳川支部」、「八女郡支部」、「筑後支部」、「八女市支部」、「山門支部」、「大牟田支部」の6支部だ。
 第七選挙区支部から6支部に対しては、平成20年10月から翌21年8月初旬までの10か月間に7,000万円近くの軍資金が出されていたことを報じたが、その使途は極めて不透明であることが分かった。

自民6支部の総収入約9200万円、7割超が古賀氏側提供「交付金」
 まず、各支部の平成20年と同21年のその年ごとの収入と、第七選挙区支部からの交付金の額をまとめた。( )内が第七選挙区支部からの交付金の額である。
柳川支部   20年 2,247,792円(200万円)、21年 8,545,222円(800万円)
八女郡支部 20年 8,055,962円(700万円)、21年 2,849,800円(240万円)
八女市支部 20年 9,766,737円(550万円)、21年12,711,064円(800万円)
筑後支部   20年 4,284,345円(300万円)、21年 9,129,051円(800万円)
山門支部   20年 6,409,504円(560万円)、21年10,797,018円(1,000万円)
大牟田支部 20年11,462,148円(300万円)、21年 5,281,120円(300万円)
(注1:この数字は、調査を始めた今年3月1日現在での各支部の政治資金収支報告書に基づく。その時点では、ある支部の平成21年分の収支報告書の記載内容が実際の収支と大幅に違っており、同年に第七選挙区支部から支出された交付金の合計額4,300万円とは合致しない。この支部の問題については、政治資金規正法等に抵触する可能性が生じており、本シリーズのなかで詳述する。)

 六つの自民支部の2年間での総収入は計91,539,773円、このうち第七選挙区支部からの交付金が総収入額の7割超にあたる6,550万円となっている。(注2:ただし、実際の数字は総収入95,139,773円に対し、交付金6,910万円となる。理由は注1のとおり。交付金が総収入額の7割超にあたることは変わらない)。

支出の7割、相手先分からず
 次に、各支部の両年の支出額について見てみよう。
柳川支部   20年 2,570,329円、21年 8,416,683円
八女郡支部 20年 4,625,233円、21年 8,056,106円
八女市支部 20年 8,032,580円、21年 14,036,352円
筑後支部   20年 3,510,911円、 21年 10,149,876円
山門支部   20年 3,987,133円 、21年 8,915,256円
大牟田支部 20年 5,688,882円、 21年 4,851,877円
 六つの自民支部における2年間の支出総額は約8,300万円となるのだが、その内訳は不透明だ。
 これらの支部は古賀誠氏の国会議員関係政治団体ではないため、支出のうち、経常経費と、5万円未満の支払いについての収支報告書への記載を免れてしまう。そのため、多くの支出において収支報告書上での支払い先確認ができないことになってしまうのだ。
 政治資金収支報告書から、各支部の総支出に対し、支出内訳が明記されていない金額をはじき出してみた。各年の支出総額が左、支出先不明(報告書上)の金額が右側の数字である。
柳川支部 20年2,570,329円→1,285,609円、21年 8,416,683円→652,4,393円
八女郡支部20年4,625,233円→3,271,393円、21年 8,056,106円→ 5,297,712円
八女市支部20年8,032,580円→2,051,412円、21年14,036,352円→ 6,516,236円
筑後支部 20年3,510,911円→3,099,811円、 21年10,149,876円→9,050,167円
山門支部  20年3,987,133円→3,518,983円、21年 8,915,256円→7,678,660円
大牟田支部20年5,688,882円→3,871,412円、21年 4,851,877円→4,632,437円
 2年間の各支部の支出額合計約8,300万円のうち、約5,700万円、つまり約7割が収支報告書上では支出先不明ということになる。現行法に抵触するものではないが、不透明との指摘に異論は出ないだろう。

すべての政治団体に詳しい報告義務を
 平成20年、同21年は、報じてきたとおり、古賀氏の第七選挙区支部から各支部に総選挙のための軍資金が配られた。トータル7,000万円近い巨額なものだが、各自民支部が古賀氏の国会議員関係政治団体ではないため、支出先はかくも不透明となってしまうのである。
 現行法の抜け道と言っても過言ではなく、見直しの必要があると思われる。政治資金の透明性を高めるためにも、すべての政党支部および政治団体に、1万円以上の支出についての報告義務を課すべきだろう。
 
 そのことを改めて実感させたのが、福岡7区内の、ある自民支部をめぐる違法な政治資金処理の実態だった。

つづく



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