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玄海・川内原発の背景

 ~弛緩した県議会~

2011年9月21日 11:00

 玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)では2号機・3号機、川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)においては1号機・2号機が定期検査のため営業運転を停止、九州電力が保有する6基のうち、稼動する原発は玄海の2基(1号機・4号機)だけとなった。

 九電側は、ストレステストの1次評価と地元理解が運転再開の条件としているが、12月以降、玄海1号機・4号機が定期検査に入るため、停止中となっている原発の再稼動について早期実現を働きかけてくることが予想される。
 
 法的根拠はまったくないが、再稼動の是非を判断するのは、それぞれの原発が立地する自治体の町長・市長と、佐賀・鹿児島両県の知事である。
 
 彼らの判断をチェックするのが「議会」ということになるが、いずれの議会も原発推進派が多数を占めているうえ、資格や能力を疑われるような事実が明らかになっている。

佐賀県議会 政調費で「日当」
 佐賀県議会をめぐっては先月、「原子力安全対策等特別委員会」で委員長を務めていた木原奉文(きはら・ほうぶん)県議(自民・当選5回、佐賀市選出)の資金管理団体に、プルサーマル発電に関する佐賀県議らとのやり取りを記録した文書の廃棄を社内に指示していたとされる中村明・原子力発電本部副本部長(上席執行役員)ら複数の九州電力社員が個人献金を行なっていたことが判明。木原県議は委員長辞任に追い込まれた。
 
 その佐賀県議会では、県議1人につき年11,810,400円の報酬のほかに、政務調査費(以下、政調費)が支払われている。
 同県議会の政調費は、県議1人あたり月額30万円を限度として、所属人数分が各会派に支給される。
 財政難を理由に平成20年度から22年度までの3年間、時限的に25万円に引き下げていたものが、今年度から本来の30万円に戻ったのだという。
 
  自家用車使用料及び日当支払調書【政務調査活動】右の文書は、ある県議が県議会に提出した政調費の領収書に添付された平成22年4月分の自家用車使用料及び日当の支払調書である。
 珍しいのは、政務調査とされる活動(あくまでも自己申告によるものだが)に、自家用車使用料とは別に「日当」の支出を認めていることである。
 
 佐賀県議会事務局に確認したところ、県内での活動なら1,500円、県外の場合は3,000円を政調費から受け取っていいことになっているのだという。
 
 「支払い調書」の備考欄には政務の内容が記されているが、4月1日の《異業種交流及び意見交換》や14日の《明治時代の黎明期等について意見交換》、15日の《異業種交流及び県政報告》などは、どう考えても政務調査とは結びつかない。
 
 日当については自己申告で、内容を証明する文書の提出は義務付けられていない。お手盛りで作られた第二の給与ということだ。
 さすがにこれには厳しい批判の声があがっていたらしく、現在見直しを進めていると言うが、税金の使い方をチェックする側の県議がこの有様では話にならない。
 
 ちなみに、文書を作成した県議が平成22年4月から平成23年3月までの1年間に、政調費から受け取った「日当」は合計21万円となる

鹿児島県議会
 gennpatu 023.jpg川内原発を抱える鹿児島県議会でも、県政のチェック機能に疑問符が付いた。
 
 県議会「原子力安全対策等特別委員会」委員で、薩摩川内市選出の外薗勝蔵(ほかぞの・かつぞう)県議(自民・当選4回)は、県の出先である北薩地域振興局から公共工事を受注しているファミリー企業「外薗建設工業」から無償で車両を借り上げ、「選挙運動費用収支報告書」に同社側からの『寄附』として記載していたことや、別のファミリー企業「外薗運輸機工」や「川辰都市環境」などから役員報酬や株主配当などを受けていたことがわかっている。

 電源3法交付金を原資とする公共事業では、外薗建設工業が平成19年度に4,580,000円、平成20年度に3,102,000円、外薗運輸機工が平成20年度に12,555,000円と6,762,000円の工事をそれぞれ薩摩川内市から受注していた。

 県発注工事や原発マネーで利益を上げるファミリー企業から、どういう形であれ現金を受け取る議員に、県政のチェックができるとは思えない。

弛緩した議会はどう動く?
 佐賀・鹿児島両県の知事は、いずれ定期点検のため停止した原発の再稼動についての判断を下すことになる。
 
 知事の方針をチェックするのは県議会だ。しかし、いずれの県議会も自民党を中心とする知事の与党が多数派を形成しており、いわば「馴れ合いの県政」が続いている。
 
 背景には、九電を頂点とする経済界と各県の自民党組織の協力関係、さらにはその体制の上に神輿として担がれた形の知事という構図が存在する。
 
 馴れ合いの県政は少数意見より経済界などの支援組織を重んじるが、福島第一原発の事故発生以後、少数と見られてきた原発への厳しい意見は大多数の声へと変わっている。
 県民の声をどうとらえるか、県議らには政治家としての真価が問われているのだ。
 
 さらに、国が「脱原発」に舵を切ろうとするなか、原発に依存した地域の将来設計は大きな見直しを余儀なくされる。
 ここでもまた、地方政治家の手腕や想像力が試されるはずだ。
 
 だが、佐賀・鹿児島の両県議会は、ぬるま湯のなかで、すっかり"たが"が緩んでしまっており、それを象徴しているのが、これまで報じてきた事例である。

 弛緩したままの状態では、地域の新たな未来像を描けるとは思えない。
 両県の県議会に求められているのは、「ぬるま湯」状態を脱し、県民の目線に立って議会の正常化を進めることではないだろうか。

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