九電マネーの影は、佐賀県議会にも及んでいた。
22日、木原奉文(きはら・ほうぶん)佐賀県議会議員の資金管理団体に、複数の九州電力社員が個人献金を行なっていたことが明らかとなった。
献金者の中には、プルサーマル発電に関する佐賀県議らとのやり取りを記録した文書の廃棄を社内に指示していたとされる中村明・原子力発電本部副本部長(上席執行役員)が含まれている。
木原県議は、県議会「原子力安全対策等特別委員会」で委員長を務めており、玄海原発再稼動や「やらせメール」事件の審議を取り仕切る立場。資金管理団体への九電社員からの寄附が判明したことで、その適格性に疑問が生じている。
木原県議は、HUNTERの取材に対し、問題の献金を返金するとしている。
木原奉文県議
木原県議は、佐賀市選出で当選5回。代議士秘書から佐賀市議を経て県議に転身し、県議会エネルギー問題研究会会長や副議長を務めたほか、自民党佐賀県連の幹事長も経験した実力者。今年から「原子力安全対策等特別委員会」の委員長に就任していた。
同委員会は、玄海原発の再稼動問題はもちろん、「やらせメール」の事実関係や、九電側と古川康佐賀県知事との会談の真相についての審議を所管しており、委員長の職にある木原県議は、いわば九電を追及する場の仕切り役でもある。
木原県議側への寄附実態
佐賀県選挙管理委員会に提出された木原県議の資金管理団体「きはら奉文後援会」の政治資金収支報告書によれば、九電社員らの寄附は、平成21年2月中旬に集中して行なわれていた。詳細は次のとおりとなる。
2月17日 3人の九電佐賀支店社員が各5,000円づつ
2月18日 馬場迫博・佐賀支店支店長(当時)が10,000円
2月20日 九電社員1名が5,000円
2月24日 中村明・原子力発電本部副本部長が20,000円
6名の九電社員からの寄附金は5万円となる。(注:報告書の黒塗り、赤いアンダーラインはハンター編集部)
県議側、異例の早さで返金表明
問題の寄附に関して、木原県議は22日、事務所を通じて「この年は広く、浅く寄附をお願いし、賛同をいただいた方々から献金を受けたもの」としながら、返金の手続きに入ったことを明らかにした。事実上、献金の不適切さを認めた形だが、取材初日にしての返金表明は異例の早さだ。
県議自身が、不適切な寄附だったことを認めたための返金なのか確認したが、事務所側から明確な返事はなく、困惑の色を隠せない様子。
旧態依然、九電側の対応
一方、8月から九電本社に異動になったという献金した九電社員のひとりは「何度か(木原県議の)お顔を見ていた。個人的な形での献金。他の社員の献金については何も知らない」として、上司からの指示や組織的な献金を否定。
しかし、この社員とともに、平成21年2月17日に5,000円を寄附した他の2人の九電社員は、同じ九電の独身寮に住んでいたことが分かっている。2月20日に5,000円を寄附した社員も同じ独身寮住まいだった。
金額がまったく同じ5,000円であったことや、寄附の日付からして、互いに何も知らなかったとする言い分には疑問符がつく。
九電はこれまで、自民党の政治資金団体や佐賀、福岡の知事らに対する幹部社員の献金について、"個人の判断で"寄附したものと強弁してきたが、福島第一原発の事故を契機として、隠蔽・虚言の体質を露呈。信頼を失っている状態だ。
どう見ても組織的な寄附でありながら、「他の社員のことは知らない」とする姿勢は、同社の体質が改まっていないことを如実に示すものである。。
10,000円の寄附を行なった馬場迫博氏は、当時の九電佐賀支店長で、社員らに指示を下す立場。現在は九電をはじめ経済界などが中心となって設立された「特定非営利活動法人 九州・アジア経営塾」(中央区渡辺通・電気ビル北館)の理事に就いている。
「やらせメール」事件に絡み、佐賀県議らとの会談内容を記したプルサーマル発電関係書類の廃棄を社員に指示し、証拠隠滅を図ったとして更迭の方針が伝えられる中村明・原子力発電本部副本部長は、2月24日に20,000円を寄附していた。
九電本社を通じ、中村氏本人への取材を申し入れたが、22日、同社広報が「九電としてお答えすることではありませんが」と断った上で、中村氏が、多忙を理由に取材には応じられないと言っていることを伝えてきた。
どこまでも姑息な人物らしい。
中村氏ら九電社員による木原県議への寄附は、九電関係のカネが県議会をも侵食していたことを示すひとつの事例である。
同県議の「原子力安全対策等特別委員会委員長」としての適格性が問われているのは言うまでもない。
木原県議側への献金については、ほかにも興味深い例があるが・・・。