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原発「説明番組」の背景(上)

古川知事と佐賀広告センター

2011年8月30日 08:50

 九州電力による「やらせメール」を誘発したのは、経済産業省主催・制作による玄海原発「説明番組」だったが、思わぬところから同番組制作の背景が浮き彫りとなった。
 
 九電幹部社員らによる佐賀県議への寄附について取材するなか、県議を囲む任意団体に、佐賀新聞社長や古川知事側近が参加していたことが判明。
 それぞれの関係を調べると、知事と佐賀新聞社および番組制作会社を結ぶ会計責任者の実像や、県内の政界人脈が絡み合う構図が鮮明になってきた。
  
 古川知事とその周辺の現状を、きょう、明日の2回に分けて報じる。(写真は佐賀県庁)

会計責任者
 gennpatu 217.jpg昨日、古川康佐賀県知事の資金管理団体「康友会」の会計責任者が社長を務める印刷会社が、少なくとも3,000万円以上の印刷業務を毎年佐賀県から受注していたことを報じたが(詳細)、古川知事の関連政治団体としては「康友会」のほかに「古川康後援会」がある。
 
 「古川康後援会」の会計責任者・恒松勇氏は、保険代理業「有限会社ノック」(本社・佐賀市)の代表者で、九電幹部らからの献金が発覚し佐賀県議会・原子力安全対策等特別委員会の委員長辞任に追い込まれた木原奉文県議(自民・当選5回)を中心とする「奉清会」のメンバーだった。
 HUNTERの取材に対する佐賀新聞社側の回答からは、同新聞社の中尾清一郎社長も「奉清会」に参加していたことが明らかとなっている。

佐賀広告センター
 gennpatu 212.jpgその中尾社長が筆頭株主で、社長を務める会社に、九電「やらせメール」の舞台となった「放送フォーラムin佐賀県『しっかり聞きたい、玄海原発』」を制作した「佐賀広告センター」がある。(写真は佐賀広告センターが入居する佐賀新聞社のビル)
 今月8日、同社と佐賀新聞社が、原発マネーの代表である「電源立地地域対策交付金」による佐賀県発注業務を受注していたことを報じたが、佐賀県に情報公開請求して入手した契約関連文書の内容を加えて、改めて佐賀広告センターの受注実態の詳細をまとめた。
(注:事業名、契約金額、契約方法の順)

【平成17年度】
「工業団地分譲促進強化対策事業」(新聞広告)10,489,000円・随意契約

【平成18年度】
「原子力利用に関する広報事業」(新聞広告原稿制作)99,750円・随意契約
 同 上 (プルサーマル計画同意に関する新聞広告)2,173,500円・指名競争入札
「工業団地分譲促進強化対策事業」(企業誘致新聞広告)9,033,150円・随意契約
 同 上 (企業誘致新聞広告)5,453,175円・随意契約

【平成19年度】
「原子力理解促進大会」(開催業務)11,520,600円・企画競争
「工業団地分譲促進強化対策事業」(企業誘致新聞広告)7,885,500円・一般競争入札

【平成20年度】
「原子力理解促進大会」(開催業務)12,259,550円・企画競争

【平成21年度】
「原子力理解促進事業」(原子力広報番組制作)3,500,000円・企画競争

 5年間で9件、計62,414,225円の契約金額となるが、注目したいのは同センターが平成19年度および20年度に受注した「原子力理解促進大会」の運営業務と、平成21年度の「原子力広報番組制作」の業務である。

原発啓発で実績
 同社の原発啓発に関する企画力は、企画競争を勝ち抜いただけに、相当高いレベルにあったようだ。
 
 gennpatu 216.jpg平成19年度の「原子力理解促進大会」は、佐賀市、武雄市の2会場で開催されているが、会場での参加者アンケートでは、原子力やプルサーマルについて『関心が高まった』『どちらかと言うとそう思う』とする肯定的な意見の合計ががそれぞれ92.9%(武雄会場184名の集計)、91.8%(佐賀会場443名の集計)。
 
 平成20年度は鳥栖市、唐津市の2会場で開催され、それぞれ93.5%(鳥栖会場247名の集計)、95.3%(唐津会場427名の集計)が『関心が高まった』あるいは『どちらかと言うとそう思う』と回答している。
 
 マジックショーや著名人による講演など、内容は盛りだくさんだが、最終的にプルサーマルや原子力にこれだけの肯定的な感想を引き出したのだから大したものと言うほかない。
 
 平成21年度に制作された「原子力広報番組」のDVDも見たが、視聴した子ども達の多くに、原子力発電の必要性や安全性を信じ込ませるだけの作りになっている。
 
 佐賀広告センターと、佐賀県の『佐賀県くらし環境本部原子力安全対策課』には、原発啓発事業を通じて、かなりの信頼関係が築かれてことは容易に想像がつく。

[*余談ながら、平成19年11月に佐賀会場で開催された「原子力理解促進大会」で講演したのが、翌平成20年の2月に大阪府知事に就任した橋下徹氏(当時の肩書きは「弁護士」)。
 講演テーマは『橋下流'子育て'と未来へ残そう美しい地球』となっているが、福島第一原発の事故発生以来、原発や電力会社に対して厳しい態度で臨んでいる知事も、当時は原発やプルサーマルの啓発に一役買っていたということになる]。
 
 こうした関係があったからこそ、佐賀県は経済産業省に対して、番組制作の実務を行なう代理店として「佐賀広告センター」を推薦したと見るべきだろう。

 それでは、古川知事と佐賀広告センターとの関係はどの程度のものだったのだろう・・・。

つづく



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