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薩摩川内市長に不適切献金
市工事受注企業の社長から政治資金

2011年8月17日 10:40

 平成20年10月に行なわれた鹿児島県薩摩川内市長選挙で、当選した岩切秀雄市長陣営が、毎年同市の公共工事を受注している建設会社「宇都組」の社長から、選挙直前に献金を受けていたことが明らかとなった。
 同市長の「選挙運動費用収支報告書」に関しては、収入として計上しないことになっている公費助成分を「収入」として記載。先月、HUNTERが指摘するまで間違った状態のまま放置されていたことも分かっている。
 川内原発に関わる鹿児島の政治家たちに、次々とカネの問題が顕在化している。

「宇都組」の受注状況
 岩切市長陣営へ寄附をしていたのは、同市に本社を置く建設業「宇都組」の社長を務める人物。岩切市長の支援団体「いわきり秀雄後援会」が鹿児島県選挙管理委員会に提出した「政治資金収支報告書」によれば、宇都組の社長は、選挙告示前の平成20年9月18日に、「いわきり秀雄後援会」に対し10万円の寄附をしていた。

 宇都組は、毎年、薩摩川内市から公共工事を受注しているが、入札結果から確認しただけでも選挙後の平成21年度、22年度に次のとおり同市発注工事を落札している。(入札日、工事名、契約金額の順)

【平成21年度】
5月27日 市道 本城・瀬ノ岡線道路改良工事(20-4) 17,535,000円

9月2日 (単)平佐地区汚水枝線管渠築造工事(21-2) 23,940,000円

10月7日 市道本町・階元線道路改良工事(21-1) 18,847,500円

10月7日 久見崎公園整備工事 その2  1,576,750円円

12月9日 市道中郷27号線外舗装維持修繕工事 3,847,950円

12月9日 月市道上手・小川線舗装維持修繕工事 3,455,250円

12月9日 市道楠元・木屋園線舗装維持修繕工事 2,912,950円

12月9日 市道上今村・石踊線舗装補修工事(1工区) 12,810,000円

12月10日 寄田住宅解体工事  2,528,750円

1月13日 永利小学校屋外トイレ大規模改造工事 8,820,000円

2月17日 市道本町・階元線道路舗装工事(21-2)  4,725,000円

3月10日 平佐地区汚水枝線管渠築造工事(21-10) 19,425,000円

3月31日 平佐加治屋馬場線道路改良工事(2工区) 11,013,450円

【平成22年度】
7月20日 市道上之湯新開線道路改良舗装工事  12,595,957円

7月21日 (単)宮里地区私道汚水管渠築造工事(22-1) 3,307,50円

7月28日 (仮称)三堂公園歩道橋下部工工事  6,484,650円

11月10日 平佐地区汚水枝線管渠築造工事(22-2)  17,850,000円

12月15日 尾賀2地区県単急傾斜地崩壊対策工事  8,190,000円

12月15日 主要地方道川内加治木線配水管布設工事  4,494,801 円

12月16日 22災215ー1001号 流合地区頭首工災害復旧工事 1,732,500円

1月5日 大馬越住宅解体工事   2,310,000円

4月6日 (単)平佐地区私道管渠築造工事(22-1) 3,864,000円

 宇都組はこのほか、平成21年度に鹿児島県から、電源立地地域対策交付金(いわゆる原発交付金)を原資とする公園整備工事(契約金額1,792,000円)を請け負っていたことも分かっている。

寄附の違法性は?
 公職選挙法199条は、《衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない》として、いわゆる「特定寄附」を禁止したうえで、200条では《何人も、選挙に関し、第百九十九条に規定する者から寄附を受けてはならない》と規定している。

 宇都組社長は、個人として岩切市長の後援団体へ寄附をしたもので、公選法に抵触するものではないが、市と請合契約を結ぶ企業による寄附を禁じた公選法の趣旨に照らせば、選挙直前の寄附が不適切であることは明らかだ。

知事、県議、原発推進政治家の実態
 鹿児島県では、伊藤祐一郎知事が同年の知事選で、県が特定公益増進法人の認定を出し、補助金を支給する財団法人「メディポリス医学研究財団」の理事長を務める会社社長から、寄附金として100万円を受け取っていたことが判明。賄賂性が問われる事態となっていた。

 九州電力川内原子力発電所の立地自治体の首長が、ともに賄賂性を問われる選挙資金の提供を受けていたことになる。

 さらに、薩摩川内市選出の外薗勝蔵県議会議員(自民・当選4回)が、今年4月に行なわれた県議選で、県の出先である北薩地域振興局から公共工事を受注している建設業者から無償で車両を借り上げ、「選挙運動費用収支報告書」に建設会社側からの『寄附』として記載していたことが分かり、公職選挙法に抵触する寄附を受けていた疑いも浮上している。

 いずれも、HUNTERが川内原発の背景を探る取材過程で掴んだものだが、同原発3号機増設に関わる政治家たちの政治資金管理の不透明さを示す事実ばかり。
 しかも、それぞれの政治家への寄附を提供した企業および個人が代表を務める会社や財団は、いずれも原発交付金による工事を受注したり、補助金受給の実績があった。
 原発交付金で潤う自治体における政治家たちの「資格」が問われる事態だ。

《お詫びと訂正》  
*本稿は、出稿時点で、問題の寄附を岩切市長の選挙への寄附と報じましたが、これは間違いで、「いわきり秀雄後援会」へのものであることが薩摩川内市側からの指摘でわかりました。
 「選挙運動費用収支報告書」と「政治資金収支報告書」のデータを誤って入力したミスによるものでした。
お詫びして訂正いたします。
 なお、寄附が不適切であるとのHUNTERとしての見解が変わるものではありません。



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