「まるでヤクザ」――録音された音声を聞いた県の関係者が、ため息をついた。音声の主は外薗勝蔵県議会議長(薩摩川内市区:当選6回)。発言の場は、現職三反園訓氏(62)の推薦を決めた、先月28日の自民党県議団総会だった。
「うるさい、黙っとけ!」。年上の議員に対し、何度も恫喝する外薗氏。暴走は止まらず、三反園推薦に向かってなりふり構わぬ行動を続けてきた外薗氏はこのあと、理解不能の主張を並べ立てた。HUNTERが独自に入手した録音データを公開する。
■恫喝のあとは「言語明瞭、意味不明」
三反園推薦で早急に話をまとめようとする長老県議や県連幹事長。一部議員が「時期尚早」などと反対意見を述べたところで、外薗議長が年上の鶴丸明人県議(霧島市・姶良郡区:当選2回)を恫喝し、 “演説”を始めた。以下、録音データから。
外薗:私はですね、議長としてじゃなくてですね、県連の副会長もしてますし、我々は20数年自民党をずっと支えてまいりましたよ。鶴丸先生なんかこのごろでしょ。鶴丸――「僕は…」
外薗:うるさい、黙っとけ!
鶴丸――「このごろというのは…」
外薗:黙っとかんな!僕が話をしているんだから!
鶴丸――「その言い方はちょっと…」
外薗: 黙っとかんな!私が今日言いたかったのはね、団会長、なんで有川さんを呼んでここで話をさせるのかと。ねぇ!。あんたなんかも自由民主党。ねぇ!。4人を並べて話をするのは結構です。ねぇ!。過去4年間、過去20年間ずーっと自民党籍でそういう人たちが、我々の鹿児島県の自民党県議団の上には県連があって、自由党本部があるんです。皆さん方は一人一人みんな安倍総裁から公認証書をもらったじゃないですか、でしょ。なんで、ねぇ!、みんなを呼んで話をさせるんですか。もうその事に僕はちょっと頭に来ていますよ。同じテーブルに乗せるのですか?有川さんも全部、みんな来たら。
あなたたちはじゃあ、あなたたちの選挙区で1人区も2人区も自民党の推薦をもらって、公認をもらってくるでしょう。その時に相手方が公認をもらってきますか。公認をもらったときには、党本部に来て、いや、ここにはまだ自民党籍がある、そういうことで判断して、県連はそういうことで自民党公認を皆さん方一人ひとりにくれるんじゃないの。
党に対して、どうしてたかと、塩田さんがどう自民党に対して、4年間向き合ってきたかと、その前10年間自民党にどう向き合っていたかと、三反園さんがどう向き合ってたかと、そういうことで判断して、我々の我々が推薦するとか公認するとかじゃないですよ。だから、県連でする話なんだから、何でここにきてですね、ここにきて、有川君が来るのは僕は何ら問題ないけれども、それはちょっと待ってくださいと。ここで自民党県議団で話すことじゃないと、県連に行ってくださいと。そうでしょ。まずそこを僕はいいたいんですよ。
だから鶴丸さんに言ったのは、今言うように、その事のうち返しですよ。ねぇ!。20年間、25年間我々は先輩として、自民党の歴史を作ってきましたよ。ねぇ!歴代の知事にもずっと向き合ってきましたよ。我々の知事は、すべて自民党の参議院に行ってるんですよ。自民党籍なんですよ、みんな。
だから、みんな自民党の県議団は、ねぇ!、大小あろうけれども、そういうことでやってきたんですよ。歴史があるんですよ。だから、そういう中で、もうそろそろ決めんといかんと。
我々は、議長という立場でですね、いろんなところに行きますよ。だから、三反園さんを頼みますよというようなことは言ってないですよ。この間も、あれもねぇ、判断は任しますって新聞報道でしょう。だからそこを間違わんでもらえると。今大園先生の話じゃ、あたかもね我々がいろんなところに行って、推薦をお願いしますと。それはいろんな会で推薦を持ってきてくれというようなところに池端先生がいかれて、言ってるわけですから。
だから、それ間違わんで、あんたもそういうこといわれちゃ困りますよ。僕は今ちょっとあの皆様方に言いたかったことはね、有川さんをここに呼んでね、なんで自民党のね、県議団総会にね、話をさせないかんかったかというのは、それは塩田さん、伊藤さんは別ですよ。
二元代表制の一方のトップでありながら、職責を忘れ現職知事の推薦に狂奔する議長の発言内容は驚きだ。一つひとつの単語は確かに日本語なのだが、発言内容は支離滅裂で、意味が分からない。
自民党籍がどうのと言っているが、外薗氏が推している三反園氏も、前任の伊藤祐一郎氏も自民党籍を持ったことはない。立候補表明している塩田康一前九州経済産業局長は役人だったのだから、当然ながら党籍などあるはずがない。鹿児島大学特任助教の有川博氏を挨拶させたことが気に入らないとして団会長を責め立てているが、その有川氏を含めて、自民党県連に推薦願を提出している4人は、もともと自民党籍などない。
“言いがかり”で反三反園派とみられていた団会長を牽制し、一気に事を決してしまおうという狙いだったのだろうが、“三反園推薦”こそ、まったく筋が通らない話だということを外薗議長は理解できていない。三反園氏は、前回の知事選で共産党を含む野党の支援を受けて初当選した人物。いわば自民党の敵だ。4人の立候補予定者の中で、もっとも自民党と遠いはずの三反園氏が、最適任のはずがない。
ある県議会関係者は、苦笑しながら次のように解説する。
「外薗が何を言っているのか、ほとんどの人が分からなかったんじゃないか。実際、『意味が分からん』というような声が、あちこちから聞こえてきていた。言語明瞭、意味不明(笑い)。反三反園派の県議らを恫喝して黙らせ、藤崎(剛 団会長)を牽制して、強引に推薦決定まで引っ張りたかっただけで、本当に言いたかったのは『きょう、三反園推薦を決めろ』ということ。変に理屈をつけようとして、訳の分からん日本語になった(笑い)。言ってることは、どれも屁理屈よね。改めて録音データを聞かされると、程度の低さに情けなくなる」
録音データを聞いた鹿児島県内のある自民党支持者は、外薗議長をはじめとする三反園派議員らの動きについて、こう憤る。
「まるでヤクザ。恫喝して白を黒だと強弁し、力で物事を決めようというんじゃ話にならん。前回の知事選で、自民党として推薦した伊藤さんを破ったのは三反園。三反園を支援したのは野党だったはずだ。その三反園に、なぜ外薗たちは推薦をしたがるのか?筋が通らない。薩摩隼人の名折れじゃ。県連が三反園を推薦しても、私らは動かんよ」
■最後も恫喝
三反園派の間で事前に打ち合わせが行われていたらしく、団総会は自民党県連幹事長を務める日髙滋県議が“この日に推薦を決定する方向”で進行を主導。何人かの議員が推薦決定を「拙速」「県民が見ている」などと諫めたものの、外薗議長が団会長の更迭をにおわせながら恫喝して慎重派を黙らせ(下の発言記録参照)、県議数名が同調して“執行部一任”という形で方針を決定するよう仕向けていた。
外薗:あのー、先ほどね、言ったように団総会は過半数を持って決めるんですよ。ねぇ!。だから今日過半数の人が、今日決めてくれと言ってるんだから、だから団会長、今日決めないかんですよ。それをね、あなたがね、どうだこうだと言っちゃいかんですよ。じゃな、あなたなしで総会開いてね、決めないかんよ。それでは今日は団総会を開いた意味がないじゃないですか。今日決めるということで我々は集まってるんだから。だからできない人はできないでいいいんだから。
県議会議長という立場にありながら、同僚議員を恫喝し、議会会派代表の更迭まで匂わせ決断を迫るという暴挙――。外薗氏は即刻議長を辞任し、関係者に謝罪するべきだろう。