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自民・河井氏秘書「連座制」視野に起訴 検察の狙いは……

2020年3月25日 08:50

報告書.png 河井案里参院議員を巡る公職選挙法違反事件が大きく動いた。24日、ウグイス嬢(車上運動員)に対して、法定の2倍となる3万円の報酬を支払った運動員買収の疑いで、広島地検は案里氏の公設秘書・立道浩被告と案里氏の夫・河井克行前法相の政策秘書高谷真介被告を起訴。2人とともに逮捕された選対事務長の男性は処分保留で釈放された。
 「連座制」適用で案里氏の失職が視野に入る展開だが、関係者を取材すると、検察が狙いが別にあることが分かる。

■事情聴取で明らかになった前法相の関与
 広島地検は、起訴された2人が公職選挙法で定められた「総括主宰者」や「組織的選挙運動管理者等」にあたるとみている。そこで、案里氏の当選が無効となる「連座制」の適用に向けて審理の迅速化を図るため、広島地裁に「百日裁判」を申し立てた。

 だが、これで終わりではない。3月末に広島地検で取り調べを受ける予定となっているのは、案里氏の選挙を手伝った地方議員A氏だ。ある捜査関係者は、次のように解説する。
「Aは、ウグイス嬢に3万円を支払い、領収書を書かせた現場に立ち会ったことを認めている。選挙を仕切った克行氏の名代であり、お目付け役。さらなる取り調べが必要だ」。

 他にも、地方議員や元地方議員数人が広島地検から事情を聞かれているのだが、その中に案里氏のことを自身の娘のようにかわいがり、支援してきた広島の大物県議Z氏が含まれていたことで、地元関係者に大きな衝撃を与えているという。
「Z氏は長く県会議長を務めてきた、地元では一番の大物だ。広島地検は、Z氏に河井陣営からカネをもらっていないかと聞いたそうだ。Z氏に話を聞いたことで、“広島地検は本気だ、とことんやるんだ”ということが分かった」(現職の広島県議)

 携帯電話を没収された地方議員が複数いることも、記者は確認している。大半の地方議員は、克行氏とのつながりで選挙を手伝っていた。そこで浮上するのが、克行氏へのXデーだ。ウグイス嬢の買収の捜査で逮捕された2人に加え、案里氏の陣営スタッフのほとんどが「最高責任者は、克行氏だ」「すべてを克行氏が取り仕切っていた」と、克之氏主導の選挙だったことを証言している。また、案里氏の陣営では、ウグイス嬢以外に報酬を支払うことが公職選挙法で認められていないスタッフにも、現金を渡していたことがあきらかになっている。

 昨年7月31日、立道被告は、運動員に現金手渡しと銀行送金で155,500円を渡している。案里陣営の選挙運動費用収支報告書によれば、同日、広島銀行から複数の口座に送金した手数料が経費として計上されていた。

 案里氏陣営で選挙を手伝ったスタッフのひとりは、記者にこう漏らしている。
「最初から、報酬を渡すから選挙を手伝ってほしいと頼まれていた。お金をもらった時は、克行氏が現金でくれましたよ。『ご苦労さん』とか、『ありがとう』とか言っていたかな。広島地検からは何度も事情を聞かれ、克行氏から現金をもらった様子も説明した」

 前出の捜査関係者は、今後の展開について見通しをこう語る。
「検察は、ウグイス嬢ではない別の運動員買収に対する逮捕も視野に入れている。だが、本命は克行氏だ。公職選挙法で報酬をもらえない運動員に、克行氏が直接、現金を交付していたという、具体的な供述もとれている。逮捕となれば国会会期中なら、許諾請求が必要。それらに、精通している東京からも広島に応援を得ている。つまり、ガッチリ証拠が固まりつつあるということだ」

 検察の春の異動で、広島地検を管轄する広島高検の検事長が交代する。次の高検検事長には、横浜地検検事正の中原亮一氏が就く。中原氏は東京地検特捜部の部長として敏腕を振るった「現場派」。克行氏立件に向けた「包囲網」が、着々と進んでいる格好だ。

 新型コロナウイルスや森友学園問題の再燃で揺れる安倍政権。逮捕許諾請求となれば、「政権の存亡にかかわる」(自民党幹部)事態となる。

                                                          (山本吉文)



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