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疑惑の指宿市長に新たな公選法違反 歪む市政にさびれる市内

2019年4月19日 09:30

指宿市役所と市長.jpg 今年1月、鹿児島県指宿市の豊留悦男市長が県議会議員選挙に出馬する自民党現職を落選させる目的で、何人もの関係者に資金提供を確約して立候補するよう説得していたことを報じた。市長及び市長と関係の深い建設業者から県議選出馬を打診された人は確認されただけでも6人。最終的に指宿市と縁のない人物を擁立し、市長が後ろ盾となって選挙戦を展開したが、惨敗を喫して求心力低下を招く形になっている。
 市政をほったらかしに、歪んだ権力行使に走る豊留氏――。もともと規範意識が欠如した市長さんなのだが、県議選の最終盤に犯した“違法行為”に、厳しい批判が集まる事態となっている。(写真は指宿市役所。円内が豊留悦男市長)

■新人をかついだ県議選は惨敗
 県議選で新人を擁立した目的は、指宿市選出の自民党現職・小園成美氏を落選させること。小園氏は三反園訓鹿児島県知事の同級生(ともに指宿高校出身)だが、2016年に行われた知事選の応援を断ったことで逆恨みされ、三反園氏を取り巻く勢力から誹謗中傷を繰り返し受ける状況となっていた。

 当時小園氏は自民党県連の幹事長。伊藤祐一郎前知事を推薦した側の選挙責任者だったため、三反園氏を応援できるはずがなかった。三反園氏の運転手を務めていた男性の証言によれば、そうした常識が理解できない三反園氏は、小園県議と会った帰りの車中で「あいつ(小園県議)だけは絶対に叩き落していやる」と荒れ狂ったという。

 指宿市長は、県内で三反園知事ともっとも近い存在といわれる首長。ある市関係者はこう話す。
「小園さんを落とすよう、三反園から指示を受けたんでしょうね。豊留さんは知事にベッタリだから。なんでも言うことを聞いちゃう。知事の指示がなければ、市長が県議選に首を突っ込む必要なんてない。そこにFという建設業者がからむ。こいつも三反園の指宿高校の同級生。二人とも、小園さんを呼び捨てにした上で、「(選挙で)落とさないかん」などと発言していましたから。その延長線上に、県議選での新人擁立がある」

 選挙直前になってようやく新人候補の擁立を果たした豊留市長だったが、候補者の男性は鹿児島市在住。市長サイドが全面支援したものの、落下傘候補への支持は広がらなかった。結果、小園氏10,667票、新人7,756票。市長が“違法行為”を行ってまで当選させようとした新人は、惨敗に終わっている。

■市長に新たな公選法違反の疑い
 豊留市長が犯した“違法行為”とは、選挙期間中のもの。市長は選挙戦終盤、正式に許可をとった選挙カーとは別の車に積んだ拡声器を使い、市内各所で新人候補の応援演説を行っていた。いかなる理由があろうとも、選挙期間中は、選挙カー以外の拡声器を積載した車両が政治活動を行うことは禁止。市長の行為は明らかな公職選挙法違反である。現場を見ていた指宿市民も、さすがに「やり過ぎ」と感じたという。
 
 豊留市長を巡っては、昨年2月に行われた指宿市長選挙の際、陣営が公選法が禁じる“炊き出し”を有権者に提供したり、地熱発電を計画中の業者から2回にわたって現金20万円を受け取りながら、選挙運動費用収支報告書や関連政治団体の政治資金収支報告書に、該当する寄附を記載していなかったことが分かっている。
【参照記事】
・「指宿市長陣営に公選法違反の疑い
・「指宿市長側に疑惑の10万円 地熱発電業者が選挙事務所で
・「指宿市長側に新たな現金供与疑惑 地熱発電業者から2度の10万円

 市政運営もデタラメばかりで、同市が九州電力や地場の施設管理会社「セイカスポーツセンター」などと組んで進めてきた地熱発電事業に関する環境省への許可申請文書に、捏造した住民アンケートの結果や市長選の経過など記載し、事業推進を求める声を過大に見せかけていたことが明らかとなっている。市長の規範意識のなさが、市政を歪めていると言っても過言ではあるまい。
【参照記事】
・「指宿市、地熱発電許可申請で市民の声を捏造
・「鹿児島県指宿市 地熱発電申請で“選挙構図”も捏造

■市長無策で荒れる市内
 下は、ウイークデーの指宿市内。地方都市特有の現象とはいえ、この商店街のさびれようはどうだろう。

DSCN0848.JPG ある地元の商工業者によれば、3期目を迎えた豊留市長はこれまで、地熱発電に力を入れるばかりで地元の活性化については何ら手を打ってこなかったという。市内はさびれる一方。人口も、ピークだった1950年の約70,000人から毎年減り続け、今年度の推計人口は39,430人と4万人を切るところまで来ている。市長の無策が、指宿市から活力を奪っているのは確かだ。関係のない県議選に首を突っ込む時間があれば、市民のために働くべきだろう。
「市長は、県議選なんてやってる場合ではないだろう。指宿市は前途多難。地熱や温泉に来る観光客だけに頼ったまちづくりでは限界に来ていることは誰に目にも明らか。さびれるばかりだ。自分の選挙絡みでも疑惑が浮上しているというのに、市民への説明もない。今度は県議選で、やっていけない選挙運動というのだから呆れる。辞職すべきだと思うが、いやならリコールに持ち込むしかない」(地元の商工業者)



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