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指宿市長側に新たな現金供与疑惑 地熱発電業者から2度の10万円

2018年12月25日 06:50

指宿市役所と市長.jpg 今年2月に行われた指宿市長選挙の期間中、現職・豊留悦男氏(67)=自民、公明推薦=の陣営側に地熱発電を計画中の業者から寄附金が渡っていた問題を巡り、選挙後に追加の現金供与が行われていた疑いが浮上した。
 現金供与は指宿市内に設置されていた選挙事務所内で行われ、一度目は選挙期間中、市長を支援していた政治団体「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者に10万円が、二度目は投開票後に10万円が追加で渡されたという。
 指宿市は、地熱を利用した振興プロジェクトを進めており、複数の業者が市内での発電事業を展開中。事業には市の同意が必要なため、市長の懐柔を狙った賄賂性の強い資金提供だったとみられている。(写真、円内が豊留市長)

 ■選挙事務所で2度の現金供与 
 今年1月28日に告示、2月4日に投開票された指宿市長選挙は、元小学校校長で現職の豊留悦男氏(67)=自民、公明推薦=と元市議の新人が立候補。約2,500票差で豊留氏が3選を果たしていた。

選挙事務所跡.JPG 問題の現金授受が行われたのは告示後の選挙期間中。豊留市長の選挙事務所を、市内で地熱発電事業の計画を進めている業者が訪れ、政治団体「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者に10万円を渡していた。今月1日、HUNTERの取材に応じた同会の代表者が、業者から10万円を受け取ったことを認めている。

 関係者の話によれば、2度目の現金供与があったのは投開票が行われた2月4日。当選を祝う支持者らに交じって、地熱発電を計画中の業者が再び選挙事務所を訪れ、当選祝いの形で現金を渡したという。「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者は、2度目の現金提供について「覚えていない」としている。(右が豊留市長の選挙事務所になっていた建物)

 問題は、選挙期間中、しかも選挙事務所で行われた業者側の寄附が、市長の「選挙運動費用収支報告書」に記載されていないこと。公職選挙法は、選挙に関する収入と支出のすべてを選挙運動費用収支報告書に記載するよう求めており、どうみても選挙に関する寄附だった業者側の20万円が未記載になっていることから、違法な虚偽報告が疑われる状況だ。もちろん、「政治団体が受けた寄附」という市長側の言い訳も通用しそうにない。

 市長選挙で選挙事務所を賃貸ししたのは「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」だが、選挙期間中に一定の政治活動が認められる“確認団体”として届出されていたのは、「指宿の未来を考える会」という別の政治団体(解散済み)。公選法の規定で、「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」は政治活動が禁止されていたため、「豊(ゆたか)にする会として寄附を受けた」とする同会代表者の言い分はかなり苦しいものとなる。

【確認団体とは】
 選挙期間中に当該選挙区において所定の条件を満たした上で一定の政治活動が許される政党または政治団体のことで、知事選や市長選のほか参院選(所属候補10名以上が要件)、地方自治体の議員選挙(所属候補3名以上が要件)で適用され、立候補届出時に必要な書類を提出すると、候補者の氏名や顔写真を除外した形で、車を使った街宣やビラの頒布が許される。

(*下が、市長陣営の「確認団体確認申請書」。赤い囲みはHUNTER編集部)

指宿確認団体 001.jpg

■会計責任者 ― 「報告書作成していない」
 そもそも、「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の会計処理自体が極めて不透明で、信頼性はゼロ。取材した会計責任者は、収支報告書の記載内容について「知らない」とした上で、「自分は体調を壊していたため、選挙事務所に行っていなかった。誰が収支報告書を作成したのか知らない。(自分は)作っていない。頼まれて(宣誓書に)名前を書いて、ハンコを捺しただけ」とうそぶく。むきになって「警察に聞かれたら、その時は自分なりに対応する」と取材を打ち切る姿勢は、現職市長陣営を支援する団体の会計責任者とは思えなかった。

■「刑事告発すべき」の声も
 指宿市内では、市が地熱を利用した発電事業を推進しており、複数の業者が6~7か所の発電所を稼働もしくは計画中。市長側に現金を渡した業者は、東京に本社を置く企業の地元関係者で、計画中の地熱発電所建設を、有利に進める狙いがあったとみられている。計画実現後の資金提供が約束されていたという証言もあり、そうなると収賄が強く疑われる事案。事情を知った市民の間から「刑事告発すべき」との声が上がっている。



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