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指宿市長側に疑惑の10万円 地熱発電業者が選挙事務所で
問われる賄賂性

2018年12月 3日 08:45

指宿市役所.JPG 今年2月に行われた指宿市長選挙の期間中、現職・豊留悦男氏(67)=自民、公明推薦=の選挙事務所内で、地熱発電を計画中の業者から市長側に10万円の現金がわたっていたことが分かった。
 “闇献金”の疑いがある現金供与は、指宿市内に設置されていた選挙事務所内で行われ、市長を支援していた政治団体「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者に手渡しされていた。
 地熱発電事業を進めるには立地自治体の同意が必要で、業者側は計画がうまく進むよう、市長サイドに働きかけを行っていたという。
 利害関係者からの賄賂性が高い資金提供について政治団体側に確認したところ、取材に応じた代表者が、業者から10万円を受け取ったことを認めている。

■選挙事務所で現金授受
 今年1月28日に告示、2月4日に投開票された指宿市長選挙は、元小学校校長で現職の豊留悦男氏(67)=自民、公明推薦=と元市議の新人が立候補。約2,500票差で豊留氏が3選を果たしていた。

 問題の現金授受が行われたのは告示後の選挙期間中。豊留市長の選挙事務所を、市内で地熱発電事業の計画を進めている業者が訪れ、政治団体「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者に10万円をわたしていた。「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」は、昨年の10月2日に設立され、今年7月23日に解散したことが、県公報の告示で明らかになっている(*下が県公報の該当部分)。

指宿.png

 1日、HUNTERの取材に応えた「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者は、「(業者は)2人で来た。事務所で10万円受け取ったのは事実」と業者から10万円を受けとったことを認めた上で、「10万円は『豊(ゆたか)にする会』としてもらった。市長と『豊(ゆたか)にする会』は関係ない。問題はないはず」と話した。

 突然の取材に戸惑いを隠せない代表者だったが、この言い訳は通用しない。「いぶすき市を豊(ゆたか)にする会」が設立時に主たる事務所の住所として届け出たのは、今年2月の市長選で豊留市長が選挙事務所を設置した建物(下の写真)。市長の選挙運動費用収支報告書には、電気、ガス、水道代を含めた事務所費10万円を、「豊(ゆたか)にする会」に支払ったことが記されている。“関係のない団体”の事務所を、選挙事務所として借り受けることなど常識的に考えてあり得ない。「豊(ゆたか)にする会」が市長を支援する団体だからこそ、可能だった事務所の賃借なのだ。

選挙事務所跡.JPG

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 地熱発電の業者が10万円を届けたのは選挙期間中。世話になっている市長の選挙だからこそ挨拶=陣中見舞いが必要なのであって、選挙事務所の中で現金がやり取りされた以上、動いたカネは「選挙」に関する収入とみなされる可能性が高い。

■10万円は市長の懐に――
 政治団体が受けた寄附だと強弁しているのは、都合の悪いカネと分かっているからではないのか。実際、業者の10万円は「市長」の懐に入った形になっている。HUNTERの記者に寄附された10万円の行方について追及された「豊(ゆたか)にする会」の代表者が、「(選挙事務所の)会計の担当者に渡した」と明言しているからだ。「会計の担当者」とは、選挙事務所全体の会計を統括する人物のことを指すのだという。代表者は、それが誰なのかという問いには答えようとしなかったが、説明が事実なら10万円が最終的に市長の収入になったのは確かだ。

 そうなると、闇献金を偽装するため「豊(ゆたか)にする会」が利用されたという見立ても成り立つ。賄賂性が濃い現金授受について、市長に説明責任があるのは言うまでもない。

 指宿市長選を巡っては、豊留市長の陣営が選挙期間中を通じて“炊き出し”を行い、選挙スタッフだけでなく選挙事務所を訪れた支持者らにも違法な食事提供を行っていたことが分かっている。(参照記事⇒「指宿市長陣営に公選法違反の疑い」)



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