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徳洲会と鹿児島県知事に新たな疑惑

2014年3月 6日 07:25

伊藤裕一郎知事 組織ぐるみの公職選挙法違反で断罪された医療法人「徳洲会」。5日には、徳田毅前衆院議員の姉で、同法違反(運動員買収など)の罪に問われたスターン美千代被告が、東京地裁から懲役2年6カ月(執行猶予5年)の判決を言い渡された。
 その徳洲会の牙城・鹿児島県では、同法人と伊藤裕一郎知事との親密な関係が知られており、知事選をめぐる蜜月ぶりについては、昨年、「徳洲会 ― 鹿児島知事選でも総力戦」、「伊藤鹿児島県知事と徳洲会 親密関係の新たな証拠」、「徳洲会が鹿児島知事側に人的支援」で、詳細を報じている。
 それでは、支援を受けてきた知事の徳洲会側への見返りは何か――昨年から取材を続けてきたHUNTERの取材班がつかんだのは、知事にしかできないとみられる恩返し。「疑惑」と呼んでもおかしくない事例である。徳洲会と知事をめぐる一連の動きと問題点について、2回に分けて報じる。
(写真は、平成16年知事選時に「大隅鹿屋病院」を訪れた伊藤氏。病院関係者提供)

知事選支援 総力あげた徳洲会
徳洲新聞 伊藤知事が徳洲会から支援を受けたのは、平成16年に行われた鹿児島県知事選挙。知事は、この選挙で初当選を果たすが、徳洲会は組織をあげて新人の伊藤候補を応援。選挙後の同年7月26日に発行した徳洲会グループ向け機関紙「徳洲新聞」では、《皆の応援が当選に結びついた 参議院議員選挙と鹿児島県知事選の結果》と題された記事に、次のように記されていた。

『鹿児島県知事選では、徳洲会グループと自由連合が推す新人で元総務省総括審議官、伊藤祐一郎氏(無所属)が他の3候補を破って初当選。選挙中は徳田秀子、徳田毅の両徳洲会理事をはじめ、自由連合鹿児島、奄美の両本部が総力を挙げて応援に走り回った』

 「総力戦」の過程で、知事が徳洲会のセスナに同乗し、奄美地方での選挙運動を行っていたことは周知の通りだ。この問題について知事は、「こちらがお願いしたわけではなく、経費は発生しない」とうそぶいたあげく、徳洲会側から運動員などの人的支援や資金提供を受けたことは「全くない」と明言。しかし、その後のHUNTERの取材で、徳洲会創設者で前理事長の徳田虎雄氏が、同会傘下の「大隅鹿屋病院」幹部に対し、「(伊藤祐一郎氏を)できる限り応援してやれ」と指示。病院側が鹿屋市内にあったビルに開設されていた伊藤陣営の事務所に職員を派遣し、事実上の仕切り役を担わせていたことが判明している。徳洲会側からの人的支援について、知事が嘘をついたことは明らかだった。

新たな疑惑
 今回提起する疑惑は、平成16年の知事選で、知事側に職員を派遣していた「大隅鹿屋病院」にまつわるものだ。同病院は、大隅半島の中心に位置する鹿屋市にあり、徳洲会のグループ病院として昭和63年に開院。平成7年、徳洲会とは別に「医療法人愛心会」を設立し、平成20年に「医療法人鹿児島愛心会」に改組。平成23年には鹿児島愛心会が「社会医療法人」の認定を受けている。313床を有する総合病院で、周辺地域の救急医療に多大な貢献をしており、今年10月には新館が完成予定だ。

 鹿児島愛心会の法人登記を確認すると、理事長は徳田虎雄氏の長男・哲氏。平成23年当時は、徳洲会の総帥である虎雄氏のほか、今回の公選法違反事件で逮捕、起訴された虎雄氏の妻・秀子氏、議員辞職に追い込まれた毅氏、虎雄氏の三女・真理氏など、一族の名が並ぶ。

 問題は、鹿児島愛心会が認定を受けたのが「社会医療法人」だったという点に尽きる。社会医療法人の趣旨については、厚生労働省が、ホームページなどで次のように説明している。

《高齢化の進行や医療技術の進歩、国民の意識の変化など、医療を取り巻く環境が大きく変わる中で、国民の医療に対する安心、信頼を確保し、質の高い医療サービスが適切に提供される医療提供体制の確立が求められている。
 このため、先般の医療法改正においては、地域医療の重要な担い手である医療法人について、非営利性の徹底等の観点から各般の見直しを行うとともに、救急医療やへき地医療、周産期医療など特に地域で必要な医療の提供を担う医療法人を新たに社会医療法人として位置づけることにより、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図るものである》

 社会医療法人の認定にあたっては、役員及び社員に占める同族関係者の割合を3分の1以下にしたり、役員等に対する利益供与を禁止するなど、様々な厳しい要件が課せられる。さらに、認定を受ける病院が、「夜間等救急自動車等搬送件数」(夜間・休日の救急搬送受入れ)で年間750件以上の実績があることなども条件だ。

 認定要件が厳しい分、税制上の優遇措置においては他の医療法人に比べて破格の待遇が与えられる。例えば、法人税に関しては、本来業務については非課税。附帯業務や収益業務は軽減税率を適用するといった具合だ。収益業務の一部収益を本来業務に充当することも認められているうえ、固定資産税・都市計画税・不動産取得税も非課税扱い。地域医療を守るためとはいえ、税負担の軽減額が億単位になる法人もあるという。

 その社会医療法人の認定権限を有するのは「都道府県知事」。つまり、鹿児島においては、絶大な権力を誇る伊藤知事が、「鹿児島愛心会」に社会医療法人の資格を与えていたことになる。認定までの過程で、鹿児島愛心会がどう変わり、県がいかにして判断を下したのか――。認定に関する流れを追った鹿児島県への情報公開請求と関係者への取材で、疑問は「疑惑」へと変わることになった。今月3日に報じた「リコール知事の鹿児島県 変わらぬ隠蔽姿勢」。鹿児島県が情報公開請求に対する決定期限を引き延ばしたものこそ、知事が鹿児島愛心会に社会医療法人の認定を与えた折の関連文書である。

つづく
 
<鹿児島取材班>



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