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徳洲会が鹿児島知事側に人的支援
会見での「嘘」明らかに

2013年12月16日 07:20

平成16年知事選時の伊藤氏 (1) 伊藤祐一郎鹿児島県知事の陣営が、平成16年の知事選で、公選法違反事件で揺れる医療法人「徳洲会」から人的な支援を受けていたことが明らかとなった。15日までに、徳洲会関係者がHUNTERの取材に応えて証言した。
 知事と徳洲会の関係をめぐっては、今年10月、知事が同年の選挙で徳洲会のセスナを利用し奄美地方の遊説を行っていたことが判明(10月2日既報)。その後、地元紙などの報道を受けた知事は、この件に関する11月29日の記者会見で、徳洲会側から運動員などの人的支援や資金提供を受けたことは「全くない」と明言していた。会見での発言は虚偽だったことになる。
(写真は、平成16年知事選時の伊藤氏。病院関係者提供)

徳洲会傘下の病院が職員派遣
 HUNTERの取材に応じた徳洲会関係者によれば、平成16年、徳洲会創設者で前理事長の徳田虎雄氏が、同会傘下の「大隅鹿屋病院」幹部に対し、「(伊藤祐一郎氏を)できる限り応援してやれ」と指示。病院側は、鹿屋市内にあったビルに開設されていた伊藤陣営の事務所に職員を派遣し、事実上の仕切り役を担わせていた。

 派遣された職員は、同病院の当時の事務局長(現在は退職)。伊藤陣営の事務所に張り付いた形で、長期間にわたり後援会活動や選挙の陣頭指揮にあたっていた。別の病院関係者は、当時、事務局長クラスはタイムカードを押す必要がなかったため、報酬支払いについて隠す面倒がないとの判断で、伊藤陣営に派遣したと話している。

 「大隅鹿屋病院」(313床)は、大隅半島の中心に位置する鹿屋市にあり、徳洲会のグループ病院として昭和63年に開院。平成7年、徳洲会とは別に「医療法人愛心会」を設立し、平成20年に「医療法人鹿児島愛心会」に改組。多くの医療・福祉施設を吸収した形で、平成23年には愛心会が「社会医療法人」の認可を鹿児島県から受けている。

平成16年知事選時の伊藤氏 (2) 徳洲会側の人的支援が判明した以上、伊藤知事に新たな説明責任が生じたのは言うまでもない。知事は11月29日に開いた会見で、記者団から、徳洲会による運動員や資金面での選挙応援について聞かれ「全くない。支援してもらっているグループの一つ。私の選挙は3回とも一生懸命やっていただいていると思うが、具体的な事実は承知してない」などと主張。人的にも資金的にも、徳洲会の支援は受けていないと明言していた。しかし、大隅鹿屋病院の事務局長が、知事陣営の事務所に常駐し、後援会活動や選挙を支えたことは明らかな人的支援。自信満々に「全くない」といった知事の言葉が虚偽だったことを証明している。

 右上の写真は、問題の選挙で「伊藤祐一郎候補」が大隅鹿屋病院を訪れた際のワンショット(病院関係者提供。平成16年7月撮影)。この時、伊藤氏は、居並ぶ病院職員一人ひとりと満面の笑顔で握手。選挙支援に対する礼まで述べたという。病院側からの人的支援について、知らなかったはずがない。 

政治資金規正法・公選法に抵触の可能性
 投・開票までの期間、伊藤陣営で活動した大隅鹿屋病院の事務局長は、徳洲会側から給与を受け取っており、この人件費分が伊藤陣営に対する寄附にあたる。人的支援を受けた場合、それが無償であっても、選挙前は「政治資金収支報告書」に、選挙期間中は「選挙運動費用収支報告書」に寄附として記載する義務がある。しかし、伊藤陣営のいずれの報告書にも、大隅鹿屋病院および徳洲会からの寄附の記載はない。

 徳洲会側からのセスナ提供、そして職員の無償応援。いずれも「寄附」として政治資金収支報告書や選挙運動費用収支報告書に記載するべきもの。それがなかったとすれば、「不記載」あるいは虚偽報告の疑いさえ浮上する。さらに、選挙に対する寄附は別として、政治資金規正法は政党以外の政治団体に対する企業・団体献金を禁止しており、選挙前に行われた徳洲会側からの伊藤陣営への人的支援は、別の政治資金規正法違反にあたる可能性が高い。時効とはいえ、知事の政治的、道義的責任は免れない。

総力支援裏付ける「徳洲新聞」の記述 
 徳洲会と伊藤知事の関係をめぐっては、徳洲会がグループ内向けに作成している「徳洲新聞」の2004年(平成16年)7月26日号で、「皆の応援が当選に結びついた 参議院議員選挙と鹿児島県知事選の結果」と題する記事を掲載。この中で、『鹿児島県知事選では伊藤祐一郎氏が圧勝』と記し、次のようにその力を誇示していた。
《鹿児島県知事選では、 徳洲会グループと自由連合が推す新人で元総務省総括審議官、伊藤祐一郎氏(無所属)が他の3候補を破って初当選。選挙中は徳田秀子、徳田毅の両徳洲会理事をはじめ、自由連合鹿児島、奄美の両本部が総力を挙げて応援に走り回った。》

 人的支援や資金提供について、「全くない」(知事発言)などと言えるはずがない状況だったことを、徳洲会側が記録に残しているのである。“総力戦”とは、文字通り持てる力のすべてをつぎ込むことだ。ある元徳洲会幹部によれば、徳洲会は平成16年の鹿児島県知事選において、グループ内の多くの人間を動員し、全力で伊藤氏を支援しており、大隅鹿屋病院の職員派遣やセスナ機提供は、氷山の一角に過ぎないという。

 東京都の猪瀬直樹、鹿児島の伊藤祐一郎―――東西の知事が、徳洲会がらみの選挙について嘘をつくという同じ構図。そして、知事には医療法人である徳洲会に便宜供与を行う権限がある。いずれも辞職に値する「嘘」であることは言うまでもない。

<鹿児島取材班>

*HUNTERは今月3日、伊藤知事夫人に対し、徳洲会側から贈答品を受け取ったことはないか、また、徳洲会側に個人的な支払いをつけ回ししたことはないかの2点について質問書を、知事には、同様の質問を県秘書課を通じてぶつけているが、いまだに回答は得ていない。



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