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闇報酬疑惑で問われる自民代議士の「社会保険」
― 族議員(4) ―

2013年11月11日 07:55

宮内秀樹後援会事務所 自民党・宮内秀樹代議士(福岡4区)に対する建設業者「三輝機工」(川崎市)からの闇報酬について、3回に渡って報じてきた。
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 宮内氏側への報酬は、形を変えた企業献金だった可能性が高い。はじめは秘書給与の面倒を見る格好で、宮内氏が仕えた渡辺具能元国交副大臣に対する献金。渡辺氏の引退後は、宮内氏本人に対するものに変わったと見るべきだろう。政治資金規正法が、政治家への企業献金を禁じているのは言うまでもない。
 だが問題はこれだけにとどまらない。この報酬に付随して、もう一つの違法行為が疑われているのだ。宮内氏が加入していた「社会保険」についてである。

社会保険
 昨年の総選挙前、宮内氏が建設会社2社から報酬を受け取っていながら、意図的に選挙向けの経歴から省いていたことが発覚した。その折、福岡4区内にあるホテルのロビーで、宮内氏に取材した時のやり取りの一部を再掲しておきたい。

 記者:保険はどうしていたか?
 宮内:今は国民保険ですよ。

 記者:今がどうかではない。9月までは社会保険ではないか?
 宮内:そうだったですね。

 宮内氏が、昨年9月頃まで「勤務」していたのは、神奈川県川崎市の「三輝機工」。従って、宮内氏が加入を認めた社会保険は、同社によるものということになる。宮内氏は医療保険のことが念頭にあったようだが、当然、厚生年金保険にも加入していたと見られる。宮内氏は取材に対し、顧問として「会社には時々、顔をを出してましたから」とも述べているが、年間600万円以上とされる報酬に見合う仕事をしていたとは考えにくい。宮内氏は、ある時期まで渡辺元代議士の秘書として活動し、その後は自身の選挙に専念しているからだ。報酬に合致する勤務実態はなかったと見る方が自然だろう。そんな宮内氏が社会保険に加入できるのか?じつは、かつて国会で、今回の宮内ケースと酷似する事案について、問題が提起されていた。

質問主意書
 平成16年、時の首相・小泉純一郎氏が、不動産会社に勤務していた経歴が発覚したことを受け、民主党の平岡秀夫衆院議員(当時)が、政府に対し、「勤務実態のない社員の厚生年金加入等に関する質問主意書」を提出した。小泉元首相が、国会で「人生いろいろ、会社もいろいろ」と答弁し、物議を醸した折のことだ。長くなるが、この質問主旨書を原文のまま掲載する。

 《社会保険の目的は、勤労者や事業主が保険料を出し合い、いざというときに給付を行い、誰もが安定した暮らしを続けていけるようにすることである。しかし、勤務実態がなく年金の加入資格がない者が不正に年金を受給することは、社会保険の目的を逸脱し、社会保険制度を歪める行為であり、違法又は不当と評価されるべきことと考える。その観点から、以下質問する。

一 一部報道に、『「事業主が勤務実態のない社員や役員と雇用契約を結び、被保険者資格を届け出ていた場合、当然、その人の年金受給資格は取り消しになる。違法です。厚生年金保険法によると、虚偽の届け出をしたり、退職したのに報告をしなかったら、事業主は同法違反として”六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処す”と定められている」(社会保険庁医療保険課)』とあるが、この見解に誤りがないかどうか、政府の認識を問う

二 社長から、「あんたの仕事は次の選挙で当選することだ。会社なんて来なくていい」、会社の旅行会の時に「今日は大事な人が来るから来たらどうか」、「一、二年何もしないでぶらぶら遊んでいろ」と言われ、そのような勤務状況であった場合、そのような社員は勤務実態がないものとして、厚生年金の被保険者資格を有しないと考えるが、政府の見解を問う。

三 ①国会議員が、勤務実態のない企業から給料を得ていれば、それは事実上献金にあたり、②国会議員の秘書(私設)が勤務実態のない企業から給料を得ていれば、事実上その国会議員に対する献金にあたり、それぞれ、政治資金規正法の制限を受けるものと考えられる。この点に関し、政府の見解を問う。

四 厚生年金の基礎年金部分には国庫負担部分がある。企業での勤務実態がないのに、厚生年金に加入して受給すると、少なくとも国庫負担部分については、本来受けられないものを受けることになり、詐欺罪が成立するものと考えられる。この点に関し、政府の見解を問う。

五 勤務実態のない社員については、企業が行っているその給与の支払い、厚生年金の保険料支払い(事業主負担の部分)等は、税務上、当該企業では損金扱いできないものと考える。この点に関し、政府の見解を問う。》

 これに対し、政府側の回答は次のようなものだった。

《一について
 厚生年金保険の被保険者となるか否かは、個別具体的な事例に即して判断することとしており、被保険者に該当しないと判断された者については、原則として五年を限度として、過去にさかのぼって被保険者の資格を取り消す取扱いとしているところである
 また、適用事業所の事業主には、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第二十七条の規定により、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を社会保険庁長官に届け出る義務が課されており、適用事業所の事業主が、正当な理由がなくて同条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたときは、同法第百二条第一項の規定に基づき六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処することとされている

二について
 厚生年金保険の被保険者となるか否かについては、適用事業所と常用的使用関係にある就労者かどうかを基準として判断している。この場合における常用的使用関係は、就労者の労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を関係書類等によって確認した上、これらを総合的に勘案し、個別具体的な事例に即して判断することとなるところ、御指摘のことをもって、厚生年金保険の被保険者の資格を有するかどうかを判断することは困難であると考えている。

三について
 政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第四条第三項において、「「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう。」と規定されている。また、同条第四項に規定する「政治活動に関する寄附」については、報告書の提出の義務付けや寄附に関する制限が設けられている。
 御質問の①又は②のような場合に、当該給料が「政治活動に関する寄附」に該当するか否かは、就労者の就労形態及び勤務内容、当事者の意思等を総合的に勘案し、個別具体的な事例に即して判断すべきものと考えている。

四について
 犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づき個々に判断すべきものであるので、答弁を差し控えたい。

五について
 法人がその雇用契約に基づき社員に支給する給与や雇用に関連して負担する厚生年金保険料は、原則として、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二十二条第三項第二号に規定する「販売費、一般管理費その他の費用」(以下「費用」という。)に該当し、同項の規定により各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される。
 この場合、法人と社員の雇用契約に基づく就労形態は、常勤だけでなく、非常勤や在宅勤務などその職務内容に応じて様々なものがあるが、雇用契約に基づき法人の指揮命令に服して提供した役務の対価として法人から支払われる金員は、費用に該当し、損金の額に算入する取扱いとしている。
 御質問の「給与の支払い」等が、税務上、損金扱いできないものであるかどうかは、このような取扱いを踏まえ、個別具体的な事例に即して判断すべきであると考えている。》

勤務実態
 宮内代議士が三輝機工から報酬を得ていた期間、社会保険に加入していたことは明らか。だとすれば、問題は「勤務実態」の内容である。政府の答弁書は、厚生年金保険の被保険者となるか否かの判断を下す場合、次のような要因について検討するとしている。《常用的使用関係は、就労者の労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を関係書類等によって確認した上、これらを総合的に勘案し、個別具体的な事例に即して判断することとなる》。

 「会社には時々、顔をを出してましたから」(宮内氏)程度の勤務状況が、社会保険加入を是とするための担保となりうるとは思えない。もし勤務実態がなかったと判断された場合は、厚生年金保険法に違反する行為だったことになる。

 宮内代議士、三輝機工、ともに今年になってからの取材を拒否しているものの、宮内氏が「顧問」だったということだけは認めている。会社に、“たまに顔を出す”程度の顧問に、年間600万円以上とも言われる報酬を支払い、加えて社会保険の面倒まで見ていたとなれば、よほどの仕事を任せていたことになる。政治活動で多忙だった宮内氏ができる仕事―それは「口利き」ではなかったのか、との疑いも浮上する。

もたれあいの構図
 三輝機工にとって「役に立つ」ことが前提でなければ、無駄な投資はしないだろう。闇報酬そのものは、宮内氏が仕えていた渡辺元代議士と同社の関係から始まったものだ。その渡辺氏が引退した時点で、同社としては義理を果たした形となっており、宮内氏にさらなる支援など必要ない。この点について、渡辺氏の元後援会関係者による次のような証言もある。「渡辺先生が引退したあとも、三輝の宮内への報酬が続いていたことに、先生自身が驚いていた。先生は知らなかったんだから。宮内と三輝にどのようなやり取りがあったのか分からないが、羽田のD滑走路で先生が三輝を助けた件に対する「お礼」は、先生が引退した時点で終わったものと思っていた。宮内が引き続き三輝と関係を持っていたとすれば、別の形で三輝に利益をもたらすような話があったのではないか」。

 もともと「口利き」で始まった宮内代議士と三輝の関係。港湾がらみの公共事業をめぐって、族議員と業者がもたれあう構図は、これからも続いていくだろう。それが自民党政治だ。宮内代議士の金銭がらみの疑惑はこれだけではなく、いずれ別の記事で詳細を報じていくことになる。



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