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福岡市・中央保育園移転疑惑 監査委がグレー判定
高島市政に厳しい注文 ― 「疑念は払拭されない」

2013年9月12日 07:05

請求を棄却 福岡市が進める認可保育所「中央保育園」(運営:福岡市社会福祉協会)の移転をめぐり、「不当な公金支出」だとして在園児保護者らが事業中止を求めた住民監査請求に対し、11日、市監査委員は請求を棄却したものの、事業の不透明さが拭えないとする異例の意見を付して高島市政を厳しく批判した。移転に絡む数々の疑惑については、事実上のグレー判定。今後予定される住民訴訟にも影響を与えると見られる。

問題点、次々に指摘
 監査結果の中では、一連の土地取得過程について、違法・不当とは言えないとしながらも、次の問題点が指摘された。

・地権者と接触していない段階で、当時2階建ての自走式駐車場があり、移転交渉が必要と思われる本件土地について、なぜ、早期取得が可能と判断できたのか。

・価格調査も地権者との交渉もせずに、角地であり、面積が広いとはいいながら、平地である隣接地駐車場よりも、相当の額の移転補償等の経費が必要と思われる本件土地の方が安価に取得できるという判断が、なぜ、可能であったのか。

候補地.jpgのサムネール画像 ・こども未来局が市政運営会議に提出した資料では、移転候補地1 及び移転候補地2 の取得費(見込み)比較が行われている。その中で、移転候補地2 の㎡あたり単価は122 万7,000 円となっており、当時の路線価から導き出される地価公示価格相当額である㎡あたり単価42万5,000 円(高めに見積もった金額)のほぼ3倍もの価格となっている。(右がその資料の記述) 
 市政運営会議にこのような明らかに不正確な資料が、なぜ、提出されているのか、「 (移転候補地2の㎡あたり単価は)噂などの情報により算出した。移転候補地2はあくまでも参考として提示したものである。」 というこども未来局からの説明では疑問は解消されない。(参照記事⇒「福岡市 保育園用地選定で取得費を捏造! 」・「福岡市・保育園移転 背景に『土地転がし』 」)

・土地選定の手続きが全般的に安易であり慎重さを欠いている印象を受け、福岡市は当初から本件土地を取得する方針があったのではないかという疑念は払拭されない

・公共用地を取得する場合は、原則として、土地を更地評価するとともに建物などの移転補償等を行う必要があるところ、なぜ、福岡市は市内の不動産業者に対し2階建ての自走式駐車場にかかる移転補償等をしなかったのか。同社はなぜ移転補償等なしで売却に合意したのか。

・風営法に関し、福岡市は、同法の趣旨も踏まえて、総合的に判断し本件土地を取得したと説明はしているものの6箇所の移転候補地選定の際に、風営法関係事項を比較要素とはしておらず、また、地図上での確認や個別具体的な調査を行ったわけではなく、不十分さがあったといわざるを得ない。

異例の注文
 今回の監査結果で極めて異例だったのは、踏み込んだ形で市政運営への注文を付けたことだ。
 《今回、中央保育園について、市政運営会議での決定により、それまでの現地建替えから単独移転に大きく方針変更がなされていますが、その決定は市内部でのみ行われ、この過程をオープンにし、市民の理解を得ようとする姿勢が十分に見受けられません。また、保育園用地の選定手続きや取得手続きには不備があるとともに非常に不透明です。
 何よりも、市民生活に重大な影響を与える事項については、法令上個別に議会の議決が必要とされなくても、議会に積極的に報告し、説明責任を果たすべきであると考えます。
 今後、中央保育園に限らず、市事業にかかる意思決定過程の透明性の確保を徹底するよう強く要請します》。(参照記事⇒「無視された〈こども病院調査委〉最終報告 - 問われる福岡市長の資格」)
 
 児童福祉法や風営法との関連、さらに安全対策については、市側の主張を否定する見解を示している。
 《今回の中央保育園の移転用地取得にあたっては、実質上、保育所待機児童の解消等が優先され、児童の福祉、安全、風俗営業等の周辺環境への配慮が不足していたと考えざるを得ません。
 今後の児童福祉施設の設置等にあたっては、児童福祉法及び風営法等の趣旨を踏まえた十分な事前チェックを行い、事業を推進されるよう強く要請します》。(参照記事⇒「福岡市・保育園移転問題があぶり出した高島市政の実相」)
 《中央保育園にかかる安全対策について本件土地については、関係法令に抵触しないとはいえ、道路交通及び環境面等で、多くの課題が残っています。児童が健やかに保育園生活を送れるよう、児童や保護者等の安全確保について、万全の対策を講じられるよう強く要請します》。

 監査結果は、中央保育園の移転事業に多くの疑問点があることを認めた上で、調査権の限界からやむなく請求を棄却せざるを得ないことに、悔しささえにじませたもの。限りなく「クロ」に近い形での結論といえる。高島市政につけた異例の注文は、極めて重い意味を持っている。
 請求棄却ながらも、市側が抱える疑惑を否定しなかった監査結果を受け、保護者らは近く、建設差止めを求める住民訴訟に持ち込む構えだ。




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