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福岡市 外国人研修の実態
年間600人・中国人公務員も

2015年10月21日 08:25

福岡市役所 先月、「アジアのリーダー都市」を目指すとしてきた福岡市が、中国籍の嘱託職員をターゲットにした脅しの電話に屈し、市の公文書に記載されている中国・韓国籍職員の氏名などを「非公開」扱いにしていたことを報じた(参照記事⇒聞いて呆れる「アジアのリーダー」)。
 過剰反応の発端となったのが、高島宗一郎市長が独断で「覚書」を締結し、反発を受け頓挫した中国人公務員の研修受け入れ制度。多くの関係者が年間800人という数字に驚いたが、外国人の研修受け入れは平成21年度から続けられており、多い年で、600人を超えていることが分かった。
(写真は福岡市役所)

頓挫した中国人公務員「800人」の研修受け入れ
 高島市長が、年間800人の中国人研修生受け入れを公表したのが平成24年7月。市議会側との協議もなく、唐突に中国国家外国専家局との「覚書」締結を発表し、《来ていただくということで福岡の経済が間違いなく活性化される。それは実際問題、1人およそ60万円という試算、掛けることの幾つという、5億円弱がですね、この試算でいけば5億円弱が福岡ないしはその近辺に落ちる》などとして、「日本初」、「稼ぐ都市」への一歩だと胸を張った。

 大騒ぎになったのは言うまでもない。当時は、尖閣諸島の領有権をめぐって日本と中国の関係が悪化の一途をたどっていた頃。右寄り陣営はもとより、一般市民からも高島市政への批判が高まり、研修受け入れ計画はあえなく頓挫した。

 この時の失政の影響が、現在まで続いていたことが明らかになっている。中国人公務員800人の研修受け入れが頓挫した平成24年、福岡市は、中国人職員に対する脅し同然の電話に過剰反応。卑劣な輩をはねつけるどころか、場当たり的な隠ぺいに走り、中国・韓国から来日し、通訳などの業務に就いた嘱託職員の氏名と国籍を非公開にすることを決定していた。当該職員の旅行命令書などに記載された情報をすべて黒塗りにして、「非開示」扱いにするという徹底ぶりだったが、市のホームページ上にあった韓国人通訳の氏名と顔写真を削除し忘れるなど、チグハグな対応(HUNTERの指摘を受け削除)。「アジアのリーダー」というキャッチコピーが色あせる事態となっている。

外国人研修は年間600人以上
 「800人」もの中国人公務員が福岡市で研修を受けるという計画に衝撃を受けた関係者が多かったようだが、福岡市の外国人研修受け入れは、これが初めてだったわけではない。改めて市側に確認したところ、中国を含む世界各国から、年間数百人の研修を受け入れていることが分かった。下は年度ごとの研修受け入れ数、カッコ内は中国人の数である。

外国人研修.jpg

 研修受け入れを始めたのは平成21年、吉田宏前市長の時で、高島氏が市長に就任した平成22年以降、着実にその数を増やしてきたという。研修に来るのは学生などの民間人のほか、「ちらほらと公務員も」(福岡市の担当課)。主として1~2日の日程で、都市景観や水、ごみ処理に関する施設を見学したり、ユニバーサルデザインや高齢者向けの施策についての研修を受けているという。外国人の研修は、毎年600人前後。研修に来る人が最も多いのは韓国で、平成26年度の研修が極端に減ったのは、主として韓国で起きた旅客船「セウォル号」の沈没事故の影響だという。

 「800人」の研修計画は頓挫したが、その24年度には、中国からの研修が77人に上っていたことが分かる。この年を境に中国からの研修が大幅に減ったが、それでも25・26年度にそれぞれ年23~27人の研修を受け入れており、なかには公務員も含まれているという。

“実績公表せず”の不可解
 不可解なのは、福岡市がこの研修実績を公表していないことだ。「アジアのリーダー都市」を目標に掲げる以上、海外からの研修受け入れは、“開かれた都市”をアピールするための格好の材料。隠す必要などないはずだが、前掲の表の数字が、市のホームページなどで紹介されたことはない。まさか韓国、中国からの研修受け入れを隠したかったわけではあるまいが……。



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