福岡市が進める保育園の移転計画をめぐり、移転候補地の比較を行った際の文書に記された土地価格が捏造されていたことが判明した。
17日までのHUNTERの確認取材に対し、事業を所管するこども未来局保育課が認めたもので、比較検討の対象とした2箇所の移転候補地のうち、選ばれなかった方の取得見込み額を、当時の職員が「噂話」で聞いた金額を基に算出したとしている。
明らかな捏造によって、2箇所の候補地の平米あたりの価格差は2倍以上に膨らんでおり、「はじめに土地ありき」(市関係者)の計画だったことを裏付けた形だ。
疑惑の「整備スキーム」
福岡市は平成23年、福岡市立中央児童会館と中央保育園を合築して再整備するとしていた従来の方針を高島宗一郎市長の発案で転換、同年7月の「市政運営会議」で両施設を分離して整備することを決めた。
問題の文書は、その「市政運営会議」のために所管局であるこども未来局が作成した資料。両施設の再整備についての考え方をまとめた「総括シート」に添付された『中央保育園及び中央児童会館整備スキームについて』(以下、「スキーム」)だ。
下がそのスキームの一部で、移転先の候補地として「候補地1」と「候補地2」をあげ、それぞれの土地の概要を記していた。
HUNTERが注目してきたのは、赤いアンダーラインで示した土地の予定価格だ。土地の取得費について「候補地1」については(見込み)として『812百万円(552千円/㎡)』と記してある。これに対し「候補地2」は、『1,080百万円(1,227千円/㎡)』。1㎡あたりの価格に2倍以上の開きがある。市側に土地取得費見込み額の算出根拠を求めたところ、“該当する文書はない”と回答。根拠のない数字を市の最高意思決定機関の説明資料に使うことは考えられないことから、再度市側に詳しい説明を求めたところ、「路線価を参考に算出した」としていた。
路線価で算出―真っ赤な嘘
それでは、平成22年と23年の当該地域の路線価はどうなっていたか――調べてみたところ、下のような結果となった。
中央保育園の移転先と決められた「候補地1」を①、「候補地2」を②と表示した。①近辺の路線価は、1㎡あたり50万前後であることは確かだが、スキームに記された『552千円/㎡』という金額ほど高いとはいえず、同様の数字もない。高値誘導の形跡さえある。
他方、②については、スキームに記された『1,227千円/㎡』という価格とは程遠い状態で、①の3分の2程度の路線価しか記されていない。②―つまり「候補地2」の取得見込み金額は、明らかに路線価とは違う数字を参考にしたものだ。
開き直った福岡市 ― 「噂を聞いて価格を決めた」
17日、事業を所管するこども未来局保育課に改めて確認を求めた。
保育課長は、「候補地1」は路線価を参考にしたが、「候補地2」は当時の職員がどこからか聞いてきた「1坪400万円という噂」(同課長)を参考に価格を決めたと明言。しかも、その話を証明する記録はないのだという。「候補地1」を選んだ理由をひねり出すため、“意図的な捏造”が行われたと見られてもおかしくない格好だ。
一方は路線価、もう片方が噂話の数字ではまともな比較が出来るわけがない。実際、平成23年の市政運営会議では何の検討もなく「候補地1」を移転先に選んでおり、今年4月には市が約9億円で市内の不動産会社から問題の土地を取得していた。
移転先選定の過程では、いくつかの候補地を挙げながら取得の可能性を探る努力を放棄していたことが分かっている。最終段階での取得費捏造は、「はじめに土地ありき」(市関係者)という見方を裏付ける証左であると同時に、仕組まれた保育園移転の背景に、一部権力者の動きがあった可能性を示している。
子どもの命についての配慮など、一切なされていない。