第2次安倍政権の発足から6年以上経っても、一向に上がらない庶民の賃金。一方、確実に増えてきたのが「防衛予算」である。
小泉純一郎政権から野田佳彦政権にかけ減り続けていた防衛費は平成24年度に4兆6,500億円まで下がったが、安倍政権になって急増。在日米軍関係経費を加えた額が、平成28年度に初めて5兆円を突破し、30年度は5兆2,574億円となっている。
「国の防衛」を看板に掲げれば、何でも通ってしまうのが安倍政治。事業ごとの予算について見ていくと、不透明なものばかりであることが分かる。その代表例が辺野古(沖縄県名護市)と馬毛島(鹿児島県西之表市)の新基地建設だ。
■膨らみ続ける防衛予算
防衛予算は、小泉(平成13年4月~平成18年9月)、安倍第1次(平成18年9月~平成19年9月)、福田(平成19年9月~平成20年9月)、麻生(平成20年9月~平成21年9月)、鳩山(平成21年9月~平成22年6月)、菅(平成22年6月~平成23年9月)、野田(平成23年9月~平成24年12月)といった7代の政権が、10年以上かけて徐々に削減。平成24年度には4兆6,500億円にまで下がっていたが、安倍氏が首相再登板を果たした翌年度からわずか4年間で元に戻り、30年度は在日米軍関係経費を加えた予算が過去最大となる5兆2,574億円にまで膨らんだ。安倍政権が、「軍拡路線」の予算組をしてきたのは確かだ。(*下の表は防衛省の資料より。在日米軍関係経費を除く)
■「馬毛島」45億が160億に
総額で語られることの多い防衛費だが、装備品や事業ごとの予算について議論されることはほとんどない。防衛に関するモノの値段については、比較対象が皆無に近いからだ。特に新基地絡みの予算は、ブラックボックス化しており、価格はあってないような状態である。
ここに一冊の土地鑑定評価書がある。鑑定の対象地は鹿児島県西之表市の「馬毛島 」。防衛省が、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP:タッチアンドゴー)の候補地としている島だ。同省は先月、島の9割以上を所有する「タストンエアポート」(旧社名:馬毛島開発)との間に土地売買の仮契約を結んだが、金額は約160億円と報じられている。
しかし、タストン社が防衛省に提出していた評価書の鑑定価格は「462億円」(下がその該当ページ)。同社の希望額と報道された仮契約の金額には大きな差がある。
防衛省とタストン社が、米空母艦載機の離発着訓練場の移転先候補地として島を買い取る交渉に入ることで合意したのは平成28年11月。タストン社側の関係者によれば、直後に防衛省が提示した島の金額は「45億円」だったという。タストン社側希望額の10分の1。交渉がまとまるはずはなく、時間だけが経過していた。この間、防衛省の職員がタストン社の債権者をそそのかし、同社が破産するよう画策してきたことは報じてきた通りだ。
【参照記事】
《【防衛省の謀略】 馬毛島所有企業つぶしに職員暗躍》
《卑劣な防衛省・「嵌められた」タストン社~馬毛島買収交渉の真相(上)》
《防衛省調達官の嘘 浮上した官邸関与の疑い 馬毛島買収交渉の真相(中)》
結局、追い詰められたタストン社は債権者の言いなりになるしかなくなり、代表者を交代させた上で債権者側に防衛省との交渉を一任する形となっていた。仮契約の160億円という数字は、こうして出てきたものだ。ただし、前掲したタストン社側の鑑定評価書は確かに存在するが、防衛省には「160億」の根拠も、ましてや「45億」の根拠も存在しない。
そもそも、当初45億としていた馬毛島の金額が、交渉相手が代わったとたん4倍近くにまでハネ上がったのは何故か?おそらく防衛省は、合理的な説明ができない。「防衛」に関する予算が、いい加減な基準で算定されている証拠と言えるだろう。
■明かされぬ辺野古の事業費
もっと分かりやすい例がある。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移転先である名護市辺野古の新基地建設にかかる事業費だ。国はこれまで事業費について一切明らかにしておらず、やみくもに海を埋め立てているだけなのだ。いつ新基地ができるのか、どのような工法で滑走路を造成するのかさえ分かっていない。政府は、工事海域に軟弱地盤があることをようやく認めたが、地盤改良等の追加工事が必要になるのは必至で、さらに莫大な事業費が積み増しされることになる。事業費総額は兆円規模になるものとみられているが、正確なところは終わってみなければ分からないというのが現状。国民の血税が、天井知らずの軍事予算に吸い取られていく。