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防衛省調達官の嘘 浮上した官邸関与の疑い
馬毛島買収交渉の真相(中)

2018年7月20日 08:45

DSC03260.JPG 軍事基地を建設するため、民間企業を破産に追い込み、土地を安く手に入れようとしている安倍政権。狙われたのは鹿児島県西之表市の馬毛島だ。
 鹿児島県出身の立石勲氏が創業した立石建設株式会社(東京都)の子会社、「タストン・エアポート」(旧社名:馬毛島開発)が保有する馬毛島を巡って、金融が本業としか思えない怪しげな住宅建設会社「益田建設」(埼玉県八潮市)や防衛省の役人が暗躍するなか、同省内での聞き取りに「益田建設なんて知らない。会ったこともない」と話していたとされる馬毛島担当の上楽重治調達官が、じつは益田建設の代表者と会っていたことが判明。関係者の話から、タストン社の破産申し立てに、官邸が関わった疑いも浮上している。
(写真は首相官邸)

■疑惑の2人が登場する“録音データ”
0718_bouei-thumb-270xauto-25028.jpg 「信頼できる人だったら、益田さんと話しているんだったら、僕は賃貸借でもいいですよ。でも、あの人(立石勲氏)は嘘ばっかり(中略)信用できない方から賃貸借って……」
 記者の手元に、2013年11月11日に防衛省内でも録音された約1時間の音声データがある。時に激しい言葉を交えながら話し合う4人の男たち。議論されていたのは、馬毛島の土地の件だった。


 冒頭の言葉の主は、防衛省地方協力局の上楽重治調達官。当時、同省提供施設課の移設整備室長だった人物だ。上楽氏は函館工業高専土木工学科(当時)を卒業後に入省したノンキャリアで、中国とのつながりも噂されるきな臭い人物だという。さらに上楽氏以外の3人のうち、1人は馬毛島の土地売買について国側代理人を務めるI弁護士、さらに上楽氏の言葉にも出てくる「益田さん」も出席している。

 4人が話し合っているのは要するに、「馬毛島の土地をいかに合法(に見える)手段で、国の所有にするか」ということであり、すなわち馬毛島のほとんどの土地を所有するタストン・エアポート社の立石勲会長をどう取り扱うか、ということに他ならない。

 背景には、11年6月に開催された日米安全保障協議委員会(いわゆる、2プラス2)の共同文書において、馬毛島が米空母艦載機離発着訓練(FCLP)の「恒久的施設の候補」としてに明記されたことがある。しかし、共同文書を履行するにはタストン社=立石会長の協力が不可欠なのは明らかで、この件をめぐって立石会長は複数のメディアに登場するようになっていた。

 馬毛島の土地取得について、防衛省は水面下で立石会長との交渉を続けていたが、「土地を賃貸契約することでいったんまとまりかけていた」(立石会長)交渉は、鳩山首相の失脚によって白紙に戻されたという。冒頭の4者会談が行われた当時は、防衛省と立石会長側の交渉は完全に行き詰っていた。

 4者会談での上楽氏の発言に戻ると、防衛省が進める馬毛島の土地取得について、「益田さん」なる人物が重要な役割を果たしているのが読み取れる。この人物は誰なのか。前回記事(「卑劣な防衛省・「嵌められた」タストン社~馬毛島買収交渉の真相(上)」)ではタストン社が債権者から東京地裁に破産を申し立てられたことに触れた。じつはタストン社に破産を申し立てた債権者は益田建設(埼玉県八潮市)で、上楽氏の発言に登場する「益田さん」とはすなわち、同社の代表である益田修一会長その人なのだ。この「偶然の一致」になんらかの意図や策略を感じない者がいるとすれば、よほどのお人よしと言わざるをえないだろう。

■防衛省の陰謀、背後に「官邸」
 タストン社は、防衛省が主導し、益田建設が実行した策略によって「嵌められた」とみるのが、ごく自然な見立てだ。そもそも益田建設がタストン社に対して破産を申し立てた理由が、じつに不可解なのだ。益田建設が債権と主張する金額は約3億7,000万円で、タストン社が返済を申し出たにもかかわらず受け取っていない。タストン社は7月4日に同額を供託しているが、それでも益田建設は破産申し立てを取り下げていない。

 防衛省の意を汲んで動いているとしか思えない益田氏の真意はどこにあるのか。立石会長が益田氏と知り合ったのは、ある金融業者を通じてだったという。益田氏は当時の太田昭宏国交大臣(元公明党代表)との「家族ぐるみのつきあい」をアピールし、立石氏に対して防衛省と馬毛島売却について交渉する、と耳打ちした。

 その後、立石会長は益田氏から「売却交渉を行うにあたって自分自身も当事者となる必要がある」旨を主張され、「馬毛島に10億~15億円の抵当権をつけることが必要」と、詐欺まがいのセールストークを聞かされている。馬毛島の売却を急いでいた立石会長はその要求を飲み、実際に登記簿では13年9月6日に根抵当権が、さらに翌14年5月に賃借権が設定されているのが確認できる。

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 当時、防衛省は馬毛島の土地を買い取ることにこだわっており、「賃貸借」を主張するタストン社との間に、どうしても埋まらない溝ができていた。そこに登場した益田氏が、国交大臣との強いつながりをアピールして売却交渉を買って出たというわけだ。しかし「うまい話」に裏があるのは世の常。立石会長の主張によれば、タストン社所有の土地(世田谷区祖師谷)を益田建設の違法行為によって奪取されたという。

 立石会長が東京地裁に提出した上申書によれば、タストン社が益田建設から13年5月に1億円を借りた際、担保とした埼玉県菖蒲町の土地を登記するのに合わせて、タストン社所有の世田谷区祖師谷の土地について書類を偽造されたという。違法に名義変更されたこの土地はすでに競売で失われており、その結果、タストン社は益田建設が破産申し立ての根拠とした債務を負うことになったのだ。

 土地を手に入れるために、所有者を破産させたい。破産させるためには、あえて金銭を貸し付けたうえで、返済できないように所有者の財産を取り上げる……。もしこんな「絵図」が、冒頭の悪巧み仲間によって描かれていたとしたら恐ろしい限りだ。防衛省=安倍政権にとって民間企業を社会的に抹殺することなど、たやすいものなのだろう。しかし国益を盾に謀略をめぐらし、さらに産経新聞などの御用新聞が都合の良い記事を垂れ流して世論を誘導することに躊躇がなくなったとすれば、それはすでに「戦前」である。

 調べによると、防衛省の上楽調達官は、省内の聞き取りに対し「益田建設なんて知らない。会ったこともない」と説明していたことが分かっており、これが真っ赤なウソだったことは上楽、益田両氏らによる前出・4者会談の録音データでも明らかだ。それでも防衛省や益田建設がタストン社をつぶそうと躍起になるのは、背後に「官邸」の指示があるからに他ならない。でっち上げ融資による強引な破産申し立てについて、益田建設や防衛省の関係者からは、「官邸の指示」という言葉が出ている。

(つづく)



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