根太が腐った武雄市政の実態に、唖然とする思いだ。
市内の小・中学校でタブレット端末を使った授業を展開している佐賀県武雄市(小松政市長)への情報公開請求をめぐり、事業経過を明かそうとしない同市の隠ぺい姿勢が浮き彫りとなった。
存在する文書の隠ぺいに失敗し、改めて情報開示を行うとしていた武雄市だったが、9日の再開示でも文書隠しが発覚。次から次へと対象文書の存在を暴かれた同市は、まともな対応ができない状況となっている。
(写真は武雄市役所)
終わらぬ情報開示
事の発端は、HUNTERの記者が今年2月に行った武雄市及び同市教育委員会への情報公開請求。樋渡啓祐前市長が推進した、小・中学校の児童、生徒を対象としたタブレット型端末を使った教育事業について、実施までの過程や使用されている機材の選定過程、事業開始後の状況などを確認する目的だった。請求したのはは次の5件である。
・タブレット型端末導入までの過程がわかる文書
・機種選定の過程がわかる文書
・タブレット型端末の購入もしくはリース契約に関する文書
・タブレット型端末のトラブル(故障・不具合)に関する文書
・タブレット型端末導入授業の評価に関する文書
これに対し、武雄市側は、開示決定までの期間を引き延ばしたあげく、虚偽の説明で一部の公文書を隠そうとしていたことが判明。はじめ「ない」と明言していた文書の存在が明らかとなったため、タブレット型端末導入までの過程がわかる文書やタブレット型端末のトラブル(故障・不具合)に関する文書について、改めて開示する約束になっていた。
【参照記事】
「佐賀県武雄市 公文書隠ぺいの疑い ― 樋渡前市長時代の事業めぐり ―」
「武雄市・タブレット端末関連文書 隠ぺいの経緯(上) 」
「武雄市・タブレット端末関連文書 隠ぺいの経緯(下)」
9日、武雄市側からの連絡を受けて再度の情報開示に臨んだHUNTERNの記者だったが、出された文書を確認していくなか、またしても対象文書の不足が判明。2時間半を経ても全ての文書が揃わない事態となった。結論から述べれば、組織ぐるみの隠ぺい。樋渡市政時代の不都合な真実を、闇に葬る構えとみるしかない。
「説明責任」果たせぬ市役所
そもそも、武雄市には情報公開に対する基本的な姿勢が欠如している。記者の開示請求は2月25日。延長されていた開示決定が出たのが3月27日だ。決定後の情報開示で、市側が記者を欺き、一部の文書を隠した形になっていたことは報じてきた通りで、そのために9日、再度の開示が実施されている。しかし、記者に示された開示決定通知は、前回のもの(下の写真参照。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。日付は「3月27日」のまま。武雄市は、間違いだったことが分かっている文書を、平然と出してきたのである。受け取れるはずがない。受け取ってしまえば、武雄市側の間違った決定を認めることになるからだ。
一方、2月25日に市長宛に提出した同内容の開示請求に対しては、「4月8日」付けで開示決定(下の文書参照。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。当初「ない」と偽って隠ぺいした結果だが、市条例で定めた開示決定期間はまったく守られていない。この市役所には法令順守の意思がなく、条例で定めた情報公開の手順を、守ることさえできないのである。
隠された文書、続々判明 ― うなだれる職員
隠ぺいの手口も幼稚だ。市側が隠したつもりの文書が、記者の指摘を受けて次から次に暴かれる始末。例えば、市長部局が保有していたため、最初の開示から漏れていた(隠されていたというべきだが)『タブレット型端末導入までの過程がわかる文書』を何枚かめくると、下の文書が出てくる(赤い訂正は市側。青いアンダーラインはHUNTER編集部)。青いアンダーラインで示したように、『導入済み40台』の記述から、タブレットPC40台を先行購入していたことが分かる。しかし、開示された文書の中には、この40台のタブレットPC導入に関する記録は1枚もない。担当職員を問い詰めたところ、「ある」という。存在がわかっていて、開示を憚ったということだ。
隠された形となっていた文書はまだあった。武雄市は、タブレット端末導入までの過程で、「iPad」を購入して実験的に授業に用いていたのだが、その時の決済文書には、次のように記されている。
≪武雄市では、平成20年3月に市内16の小中学校ネットワークを再構築し、ICTを活用した教育に取り組んできました≫(下の文書参照。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)
これもタブレット端末導入までの過程であることは疑う余地がない。だが、ネットワーク再構築に関する文書は、開示対象から省かれていた。当然ながら、これも追加。正確に事業の足跡をたどろうとする度に、「隠された文書」の存在が明るみに出るという悪循環だ。
結局、二度目の情報開示も未完のまま。新たに掘り起こされた文書のマスキング(黒塗り)が間に合いはずもなく、またしても開示をやり直すことになってしまった。この間、2時間半。うなだれる職員たちを前に、呆れるしかなかった。
樋渡前市政の膿
樋渡前市長は、公立病院の民営化や図書館改革、市ホームページのFacebook移行などを断行し、「改革者」として名をあげた人物だ。だが、自分にとって都合の良い情報発信には熱心だった一方、彼が「改革」したはずの武雄市役所では、行政機関として最も大切な「情報公開」が機能していない。隠ぺいを繰り返す実情は、樋渡前市政時代に膿がたまり、市役所の根太が腐ったことを示しているといえよう。
小・中学校におけるタブレット端末を使った授業は、樋渡市政を象徴する施策のひとつ。不十分ながら開示された文書によって、その背景に前市長と特定業者との癒着ともいえる関係が見え始めている。詳細は次週――ただし、武雄市がすべての文書をオープンにすればの話だが……。