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武雄市・タブレット端末関連文書 隠ぺいの経緯(下)

2015年4月 7日 09:20

武雄市役所 佐賀県武雄市(小松政市長)が実施しているタブレット型端末を使った小・中学校の授業に関するHUNTERの情報公開請求に対し、同市が虚偽の説明で対象文書の存在を隠ぺいしようとしていたことがわかった。
 当初「ない」と主張していたタブレット端末導入までの過程を示す文書は、事業を所管する市教育委員会ではなく市長部局が保有しているという。そのうえで、 臆面もなく再度の情報公開請求書提出を求めてきた武雄市だったが……。
(写真は武雄市役所)

もう1枚の開示請求書は……
 すったもんだの末、はじめ「ない」と言っていた公文書の存在を、渋々認めた武雄市。しかし、記者に応対した市教委は「改めて市長宛に開示請求を出してもらいたい」と言う。
 該当文書を保有しているのが市長部局で、請求先が違うためとの理由からだが、15日間の開示決定期限を1か月に延ばした末、保有している文書を「ない」と言ったのは市側。記者が担当職員らの説明を信じていれば、事業の実態が闇に葬られていた可能性さえある。自分たちの虚偽説明を棚に上げ、もう一度請求をやり直せというのだから呆れた役所である。
 やむなくHUNTERの記者が切り出したのは、2月に出した開示請求書を、市側がどう取り扱ったかの確認だった。開示請求書は何通あったのか――担当の総務課に確認するよう、市教委に求めた。

 10分後、駆け戻ってきた市教委職員の顔面は蒼白。絞り出すように「市長宛の請求書があったそうです」と言うのがやっとだった。
 あたりまえである。2月に開示請求を行った際、記者は同様の「公文書開示請求書」を市長宛と教委宛の2通郵送していたのだ。“改めて請求を出せ”と言われる筋合いはない。次の問題は、市長宛の開示請求書がどうなったか――。

騙しの手口
 じつは武雄市の総務課、開示決定を通知する文書に添付して、市長宛の開示請求書をHUNTERの記者に送り返してきていたのである。その現物が下。請求先は「武雄市長 様」となっている。

開示請求書

 同市のタチの悪さは、記者を欺いたこと。下がその証拠である。

黄色い付箋紙

 黄色い付箋紙には、こう書かれている。 

 開示請求の対象文書は、全て教育委員会所管の事務に係わるものであるため、本開示請求書(武雄市長宛分)をお返しいたします。

武雄市役所総務課 ○○

封筒 武雄市は、対象となる文書を市長部局が保有していないと一方的に決めつけ、記者を欺いていたのである。隠ぺいの手法としては極めて悪質。市長宛の請求書自体を、闇に葬った格好だ。
 念には念をということだったのか、他の自治体ではあり得ない手法を用いて、役所の中に請求書が残らないようにしていた。

 行政機関が情報公開請求を受け、請求の対象となる文書がないとわかっている場合の対応は二通りしかない。一番分かり易いのが「文書不存在」の決定を出すこと。これなら行政機関が「ない」と判断した証拠が残る。
 もう一つの対応としては、役所が請求者と話し合い、請求書自体を取り下げる手続きを踏んでもらうかである。そうしておかなければ、請求者が取り下げを承知していたかどうかの確認ができなくなるからだ。
 しかし同市は、「配達証明郵便」という形式を用いて、市長宛の請求文書を記者に返却していた。郵送で突き返すというケースは異例。配達証明にして「返した」という証拠を残しさえすれば、後で問題になることはないとでも考えたのだろう。浅はかというしかない。

組織ぐるみの隠ぺい
 ここまで来れば、市長宛の開示請求書を闇に葬り去ろうとした職員すべてに話を聞くしかない。情報開示が行われた部屋に政策部総務課の職員を呼んで、説明するよう求めた。

 やって来たのは総務課の係長と部下の主任。その係長は開口一番、「結論から申し上げまして、市長宛の請求はありました。こちらの間違いということで、お詫びするしかないんですがね……」。どうみても反省している態度ではない。こうした語り口で次に出るのは、たいてい言い訳か強弁と相場が決まっている。理解不能の説明に見切りをつけて、なぜこうした事態になったのかを尋ねた。

 驚いたことに、上司にあたる係長が主任を指さし、「それは、まず初めに、この○○(主任)が市教委に確認した時、教委の方にすべての文書があるということで、そのままそれを信じたということです」――組織が悪いのではなく、下っ端役人の責任だと言いたいらしい。だが、この言い訳が通用しないことは、テーブルの上に放置されていた2件の決済文書が証明していた。

武雄市文書4.jpg

 2枚ある文書は、それぞれ記者の開示請求に対し「開示決定期間の延長」と「開示決定」を行った時の決済文書。市教委と政策部の関係職員が、決済印を捺している。武雄市役所は、記者が行った開示請求についての判断を、市教委と政策部で「合議」していたのである。この段階で、市長部局に対象文書があるということに気付かぬはずがない。内部の確認ミスなどではなく、市役所ぐるみで隠ぺいに走った可能性さえある。市長に説明責任が求められるのは当然であろう。

 同市が、先週末までには準備すると言っていたタブレット端末の導入過程と端末の故障・不具合に関する文書は、いつ開示されるのか分からない状況だ。連絡してきた市総務課によれば、当初100枚程度(市側説明では142枚)だった対象文書が、900枚近くになるという。一体何を隠していたのか――近く実施される「情報開示」のあと、詳細を報じていく。



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