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腐敗した鹿児島県政

独裁知事と利権に群がる県議会

繰り返される議会質問による利益誘導

2012年4月 2日 09:35

 九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の立地県である鹿児島で、伊藤祐一郎県知事の独裁的県政運営が続いている。

 薩摩川内市での産業廃棄物処分場や鹿児島市松陽台の県営住宅など、住民無視の施策が知事の一存で決まり、巨額な公費投入に歯止めがかからない状況だ。なぜ県民不在の暴挙が許されているのか?
 
 背景に一部の財界人や保守大国を支える地方議員がいることは明らかなのだが、とくに建設業界と一体になった県議らの動きには目に余るものがある。
(写真は鹿児島県の県議会棟)

巨大公共事業の裏で蠢く県議ら
 gennpatu 1094.jpgこれまでHUNTERでは、鹿児島県議会で薩摩川内市における産廃処分場「エコパークかごしま」(仮称)の建設促進を狙った質問を行っていた田中良二県議(自民。当選2回)が、同処分場建設で巨額の利益を得る地場ゼネコングループから顧問報酬を得ていたことや(記事参照→)、同処分場建設計画の妨げになると見られる民間の処分場建設計画に対し、別の自民県議が企業側トップに計画延期を働きかけたことなどを報じてきた(記事参照→)。
 いずれも伊藤知事や地場ゼネコンの意向を受けた動きであったと見られるが、薩摩川内市の処分場に絡んでは、一族の利権に直結する議会質問を繰り返してきたもう1人の県議がいる。
(写真は薩摩川内市川永野の産廃処分場建設工事現場)

露骨な利権がらみ質問
 平成22年10月、鹿児島県議会の企画建設委員会で、ある県議が次のような質問を行った。
《道路建設課長さんと河川課長さんにちょっとお尋ねします。いよいよ我が地域の産業廃棄物の管理型処分場の事業者が、今月末か来月早々決まるような話も聞いております。全体的な事業者が決定すると同時に来年度四月着工という、本体工事がそうなんですけれども、あそこに阿茂瀬川ですかね、とそれから国道三号から道路を入れる工事が残っております。一部用地買収とかいろいろあると思いますけれども、あれは整備公社がやるんですか、それとも振興局の土木部がやるんですか。どうなんですかね。ちょっとそこを教えてくださいますか》。

 これに対し、県道路建設課長は《まず、県道のアクセス道路でございますけれども、基本的なことについては整備公社のほうでやりますけれども、実質的な測量設計等々については振興局のほうでやることになっております》と回答したが、県議の食い下がり方は尋常ではなく、この後もしつこく質問が続く。

《整備公社が発注となるんですかね、それとも建設部の発注になるんですかね、発注は。河川と道路ともう二つ、河川もありますね、道路もありますよね。整備公社の発注になるんですかね、発注は》。

《そうすると、県の所轄は道路建設課長であり、河川課長ですが、用地取得については、あれは若干道路はあったと思うんですけれども、あれは公社がやるんですかね、それとも建設局がやるんですかね、どっちがやっているんですか》。

《用地取得について、まだ一自治会が反対表明して、きのうも来ていますよね。そうしますと、一部、地権者がどうなのかわかりませんけれども、それこそ反対派の方が持っちょいやれば買えないわけですよね。そうしますと、線形を変えたりとか、一方じゃもう工事が発注になって上のほうが行きますと、道路が後になってきそうな気もするんですよね。そこいらはまだ情報入っていません。その用地取得とか、まだその段階じゃない。まだ道路線形をこの地域におろして、こういう大体線形になるよというところまでなんでしょうかね。それを了解いただいてから、地元から了解をいただいてから用地買収ということになるんですかね。そこらはどうですか》。

《一つずつ聞きましょうね。じゃ、道路については、発注となると、それが済んでからだから、来年ぐらいということでいいんですかね、道路発注については》。

《それなら、河川課長にお聞きしますけれども、河川もやっぱり用地取得があるんですかね。それだけちょっと教えていただけますか》。

 今後の公共工事の見通しを確認し、あげく発注主体が県のどの部署になるのかを聞き出しているのだが、この質問は建設業界を代表した露骨な情報収集としか思えない。
 質問の軸になっている「産業廃棄物の管理型処分場」とは、鹿児島県が地元住民の反対を無視して建設を強行している薩摩川内市川永野の「エコパークかごしま」(仮称)。質問した県議は同市選出の自民党・外薗勝蔵県議である。

 外薗県議は、昨年4月の鹿児島県議会議員選挙で、薩摩川内市区(定数3)から自民党公認で出馬、4期目の当選を果たした実力者だ。
 同県議をめぐっては、この時の県議選で薩摩川内市に本社を置く「外薗建設工業」から連絡・設営に使用する車両2台を無償で借り上げ、1台当たり1日6,000円で9日間使用。見積もり合計金額の108,000円相当が寄附されていたことが、同県議陣営が県選管に提出した「選挙運動費用収支報告書」から判明。公職選挙法は、地方自治体からの請負契約の当事者に、当該自治体の議員選挙に関する寄附を禁じており、「外薗建設工業」から同県議への寄附は明らかに同法に抵触するものだったことが明るみに出ていた(記事参照→。なお同県議は、HUNTERの報道後「報告書」を訂正)。

外薗グループ
 薩摩川内市を代表する地場ゼネコンとしては、「エコパークかごしま」(仮称)で巨額の利益を得る「植村組グループ」のほか、外薗県議の一族が経営する「外薗グループ」が存在する。
 
 鹿児島県産業廃棄物協会薩摩支部の支部長を務めてきた外薗輝蔵氏が代表である土木関連業者「株式会社外薗運輸機工」、西薩クレーン協会会長を務める外薗達蔵氏が代表の産廃処理業「川辰都市環境株式会社」、そして達蔵氏が社長を務める「外薗建設工業」などである。
 外薗県議が「外薗運輸機工」の輝蔵氏、「外薗建設工業」及び「川辰都市環境」の達蔵氏の身内であることは言うまでもない。
 同県議は、「外薗運輸機工」と「外薗建設工業」の大株主で、「川辰都市環境」の取締役を務めていたことから、年間に多額の株主配当などを受けていたことも分かっている。

思わず漏らした本音
 同県議は、平成23年3月の県議会予算特別委員会で、外薗グループの一員として次の発言を行っている。
《エコパークかごしま(仮称)については、まだまだ地元の同意が得られていない問題がございますけれども、これは私は、説明と情報をしっかりと提供していただいて速やかに、速やかに工事を一日も早く着手していただきたい。ぜひこのことだけはしっかりと一日も早く着手して、やはり一日も早くつくり上げていくということに主眼を置いていただければありがたいなと思っておるところでございます》
 
 新しいイメージ.JPGとにかく早く処分場関連の仕事を発注するよう県に迫っているわけだが、《一日も早くつくり上げていくということに主眼を置いていただければありがたい》のくだりは、工事受注を待ち望む外薗グループの一員として、思わず本音を漏らした瞬間だったようだ。

処分場工事を受注
 極めつけは次の発言である。《今月末には事業者が選定されると思いますが、いよいよ着工が目前であります。施工に当たっては、地材地建は言うまでもありませんが、地元住民と自治会や薩摩川内市と連携を密にして進めていただきたいと思います》。

 一貫して九州電力川内原子力発電所3号機の増設を推進してきた外薗県議だが、地元薩摩川内市に計画されていたもうひとつの迷惑施設、産廃処分場の建設にも大きく寄与してきた。
 あげく、議会質問を通じて、薩摩川内市の建設業者へ仕事を寄こせと要求しているのである。その結果が同処分場の工事現場を走り回る「外薗建設工業」のトラック(写真参照)と下の施工体系図である。(黒塗りと赤いマークはHUNTER編集部)

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 なんと、「エコパークかごしま」(仮称)の建設工事自体に、議会質問で処分場建設を急がせ、地場企業を使うよう迫った外薗県議のフェミリー企業「外薗建設工業」が1次下請として参加しているのである。同工事の現場には「外薗運輸機工」のクレーン車も確認されている。
 こうなると、前述した数々の議会質問の目的が、一族の利益確保のためだったとの見方は間違いではなくなる。

 有力支援者のために巨額な税金を恣意的に使う知事と自己の利益のためにその知事を支える県議たち・・・・。県民不在の鹿児島県政には腐臭が漂っている。



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