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鹿児島県議が民間企業に産廃処分場計画延期の働きかけ

背景に県の薩摩川内処分場

疑われる伊藤知事の関与

2012年3月10日 07:05

 地元住民らから建設反対の声があがる中、鹿児島県(伊藤祐一郎知事)が薩摩川内市川永野で強行している産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)にからみ、同県内に民間企業が進めていた処分場建設計画を数年間待つよう、鹿児島県議がこの企業に働きかけていたことが分かった。企業側は「伊藤知事からのメッセージ」と受け止めていた。

 薩摩川内市の処分場建設を進めるために掲げられた「県内に最終処分場がない」との大義名分を守るため、県側が裏で民間企業に圧力をかけた疑いが濃い。
 約100億円近い税金が投入される公共関与の処分場計画で、次々と闇の部分があぶり出されるという異常な状況となってきた。

 取材に対し、県議は知事の関与を否定しながらも、企業側と接触していたことなど大筋での話を認めている。
 
県議の要請
genn1052.jpg 鹿児島県議から「計画延期」の話を持ちかけられていたのは、宮崎県小林市に本社を置く産業廃棄物処理業の「九州北清株式会社」。
 
 関係者の話によると、同社が鹿児島県湧水町で管理型処分場の計画を進めていた平成20年11月、自民党所属の県議会議員が同社の会長宅を訪れ、「(建設計画を)5年間待って欲しい」と要請したという。九州北清側は、それまでの経緯や話の内容から県議の要請を「伊藤祐一郎知事からのメッセージ」と受け取り、即座に要請を断ったとされる。

 同社が県議の要請を知事からのメッセージと受け取ったことには、それまで同県議が九州北清の処分場計画に理解を示していたという背景がある。態度を一変させた県議に対し、知事の強い意向を感じたというのが九州北清側の見方だ。

県議「要請」の背景に薩摩川内市の処分場
 gennpatu 1093.jpg一方、今月6日から9日にかけてのHUNTERの取材に答えた県議は、九州北清の会長を訪ねたことを認めながらも、「知事からのメッセージ」と「5年」の期間を強く否定。訪問は、九州北清から連絡があったためで、あくまでも個人的な動きだったと話す。
 ただ、九州北清の会長を訪ねるまでは同社の計画に賛同していたことや、同社側に計画を急がないようアドバイスしたことも認めており、事実上九州北清の処分場計画を遅らせようとしたことは否めない。

 さらに同県議は、九州北清への働きかけの理由として、薩摩川内市川永野で県が処分場建設を進めていたことを挙げ、「この機会(薩摩川内市の処分場建設)を逸すれば、鹿児島県では処分場ができなくなると思っていた。せめて薩摩川内市の処分場ができるまで待ったらどうか、という趣旨の発言をしたかもしれないが、それが"5年"ということかもしれない」と語っている。
 裏を返せば、九州北清の処分場建設計画が進んだ場合、薩摩川内市に計画している県の処分場建設にマイナスの影響が出るということを県議自身が認識していたということだ。
(写真は、薩摩川内市川永野の処分場建設予定地)

伊藤知事関与なら辞任は必至
 19.pngたしかに、九州北清の処分場建設計画が順調に進めば、「県内に管理型処分場が一箇所もない」という大義名分の下で強行された薩摩川内市の「エコパークかごしま」構想は無用の長物になる。
 関係者の話を総合すれば、なんとしても九州北清の計画を止めたかった知事が、同社とのパイプを持っていた県議を動かしたと見られてもおかしくない。
 平成20年に県議が九州北清の会長を訪ねる1か月ほど前、同社の計画をはじめて知った伊藤知事が、薩摩川内の処分場に影響が出るとして担当部長を怒鳴りつけたという県内部の話もある。
 
 県政トップが100億の税金をほしいままにしたいがため、県議を動かして民間企業の計画を阻もうとしたという話が事実なら、伊藤知事の辞任だけで済む話ではない。
 これまで報じてきたとおり、薩摩川内市の処分場計画は、地場ゼネコン「植村組」グループを救済する形となっており、改めて知事と植村組の関係が問われることにもなる(記事参照 →)。
(顔写真が伊藤知事。同知事のマニフェストより)

違法行為に走った伊藤県政
 ところで、県議の「計画延期」要請を断って以降、九州北清は県側から信じられない仕打ちを受けることになる。同社の計画に対して、県側が一切の行政手続を止めたのである。
 法で定められた文書の受け取りにさえ応じず、同社の担当者に会うことさえ拒んだという。
 
 伊藤県政の無法ぶりは止まるところを知らず、九州北清が計画を断念することを企図して、平成22年に県外からの産廃持ち込みを禁ずる「鹿児島県県外産業廃棄物及び県外汚染土壌の搬入の許可に関する条例」を制定したほか(記事参照 →)、九州北清側が提出した処分場設置許可申請を2年近く放置するという違法行為まで行なっていた。

 やむなく九州北清側は、環境省に対して審査請求を申し立てたが、今年1月、同省は鹿児島県の違法行為(不作為)を認定し、同県に速やかな処分を命じている(記事参照 →)。

「裁決」無視して引き延ばし
 裁決の結果を受けた鹿児島県は今月6日、九州北清に対し「事前協議」を行うことを要請してきたというが、同社は9日までに県が処分を遅らせないと確約することを条件に、協力する旨を県側に回答した。県の引き延ばし策を見抜き、事実上の要請拒否をしたものと見られる。

 同社の対応は当然で、「事前協議」をめぐって度々県側が「やるやる詐欺」(同社関係者の話)を演じて同社を振り回したあげく、平成22年3月にようやく「事前協議」自体が終了していたのである。県の狙いが「引き延ばし」であることは明らかで、違法に違法を重ねる状況だ。
 薩摩川内市の処分場計画について、次々と真相が明かされていることへの伊藤県政の"あせり"が顕在化してきた。



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