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鹿児島県議が産廃処分場関連企業から顧問報酬
事業推進促す質問も
問われる賄賂性

2012年2月28日 08:15

 鹿児島県議会で産廃処分場の建設促進を図る質問を行っていた県議会議員が、処分場建設にからむ企業から顧問報酬を得ていたことが判明した。

 顧問料をもらっていたのは、薩摩川内市区選出の田中良二県議(自民)。同県議は当選2回。九州大学を卒業後、川内市役所(現・薩摩川内市役所)に入庁、平成19年に鹿児島県議に転身し、昨年再選を果していた。

 同県議は、県議会の所属委員会や本会議において、度々処分場建設に関する質問を行ない、昨年12月の本会議ではあからさまに建設を促進する発言を行っていた。

 25日、HUNTERの取材に答えた田中県議は、顧問報酬授受の事実を認めている。

地元揺るがす処分場問題 
処分場予定地 問題の処分場は、同県議の選挙区である薩摩川内市で県が建設を進める管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)。
 同処分場をめぐっては、不透明な事業計画に不信感を抱いた地元住民らが建設反対を表明。これを無視して建設を強行する県側との間で話し合いがつかず混乱が続いていた。現在、住民側から鹿児島地裁に「公金支出差止請求」が出されており、法廷で争う事態となっている。(写真が処分場予定地)
 
 田中県議が顧問報酬をもらっていたのは、鹿児島市に本社を置く経営コンサルタント会社「株式会社ウエムラ」。同社は県内で人材派遣などを手がけるほか、地場ゼネコン「植村組」グループ企業の業務管理などを行っているとされ、代表者は「植村組」の社長、筆頭株主は「株式会社ガイアテック」である。

 同処分場についての記事で報じてきたとおり、ガイアテックは問題の産廃処分場の土地を所有している会社で、県と5億円の土地賃貸借契約を結んだ当事者企業。さらに、処分場建設工事を請け負ったのは植村組を構成員とする建設共同企業体(JV)だったことも分かっている。

県議会で処分場建設促す質問
 kaonew.jpg田中県議は、昨年12月に開催された県議会の本会議において、処分場建設を促進する立場で県側を助ける形の質問を行なった上で、「十月に本格工事に着工しましたが、早期完成に向けて引き続き粛々と整備を推進するよう要請いたします」と結んでいた。

 処分場建設促進の立場で行った数回の質問内容に照らせば、顧問料自体が先を見越した"見返り"だった可能性も生じる。
(写真が田中良二県議。同県議の後援会ホームページより)

事実関係認めるも利益誘導は否定
 25日、取材に応じた田中県議の話は、おおむね以下の内容だった。

・顧問報酬は平成21年の途中から昨年2月まで、毎月10万円もらっていた。
・株式会社ウエムラの代表者と「植村組」の代表者が同一人物であることは知っていた。
・ウエムラの筆頭株主が「ガイアテック」であることは知らなかった。
・顧問就任については、ウエムラが県の指名業者ではなかったため、問題はないと判断した。
・顧問の仕事としては、意見交換や情報交換だった。会社に行くこともあったし、電話でということもあった。

 
 こうした田中県議の話を受けて、核心部分について改めて聞いた。

記者:ウエムラの顧問に就任する件は、どちらから持ちかけたのか?
田中:えーっと、これはもう、双方ちゅうか、いろいろ後援会で語って、全体的に支援していただけるということもあったもんだから・・・。

記者:全体的に支援?
田中:全体的ちゅうか、いわゆる県政全般のということです、はい。

記者:県政全般で「支援」をいただくということか?
田中:はい。

記者:どちらから、ということではなかったと?
田中:はい、自分の活動支援という意味で、はい。

記者:産廃処分場について、計画推進の立場で何度も質問しているが?
田中:推進というか、地元の意見を十分汲むようにという立場ですけど、地元の意見も全面的に進め進めということではなくてですね、私としては平等にやってきてますけどね。

記者:昨年12月の県議自身の質問内容を覚えているか?
田中:それはもう、手続きが進んでいけばですねぇ。あと、関係の方への説明ということも前から申しあげてますけどね。

記者:平成19年頃からの県議の質問を確認してみたが、処分場に反対とは一度も言っていない。それどころか、平成21年ころには「管理型処分場建設推進センター」を北薩振興局内に作れとまで発言している?これは建設促進ではないか。
田中:はい、はい、はい、はい。その件はですね。はい。

記者:これまでの県議会における発言内容を見ると、一貫して産廃処分場建設に賛成の立場で質問を繰り返してきたということでよいか?
田中:それは、だけど、手続きを進めながらですね、その、地元への意向を十分反映するようにということを申しあげてますよねぇ。

記者:意向というより、地元の振興策のことに何度も触れている。"カネ寄こせ"ということではないか。
田中: ・・・・。

記者:その上でお尋ねするが、植村組関連企業からの報酬というのは、不適切ではなかったのか。
田中:まあ、うーん・・・。

記者:返金する意思はないか?
田中:今ちょっとそれはあれですねぇ。自分としてはもう、法律と、そういった指名業者ではなかったということもありましたんで、そういう考え方で来てますけど。

記者:特定企業に対する利益誘導ではなかったのか?
田中:それはもうぜんぜんありません。私はもう、そういう意識というか、まったくありません。そこんところだけはハッキリ申しあげておきます。県政全般のですね、いろんな重要事項ということですので、手順を踏みながらという意識で活動と答弁をしてきてますいので、そこはございません。

 利益誘導を否定したところだけには力が入っていたが、田中県議の主張には綻びが見える。

主張に綻び ― 「支援」を自覚
 田中県議は、「株式会社ウエムラ」が県の指名業者ではないから同社からの顧問報酬に問題はないとしているが、前述のとおりウエムラは地場ゼネコン「植村組」の関連会社で、代表者は植村組グループの総帥・植村久氏。ウエムラが事実上「植村組」と一体の会社であることは十分に理解していたはずだ。
 
 さらに、同県議は顧問報酬をもらい始めたのが平成21年と明言したが、平成19年5月には県が薩摩川内市川永野にあるガイアテック所有の土地を管理型処分場用地とすることを公表しており、処分場建設を推進することが植村組グループの利益に直結することなど百も承知だったと見るべきだろう。

 植村組グループから報酬を得るにあたって、どの会社なら県議会の規定に抵触しないか検討した結果が「ウエムラ」だったということではないのか。だとすれば、抜け道を使った姑息な手法と言うほかない。

 決定的なのは、田中県議自身が植村組グループからの顧問報酬を「支援」であると自覚していることだ。
 同県議は、記者とのやり取りのなかで「全体的に支援していただける」、「自分の活動支援」などと話しているが、ウエムラという会社の仕事をして"相応の対価"をもらっているという意識は感じられない。これは明らかに顧問報酬が植村組グループからの資金援助だったことを認めたものだ。
 だとすれば、顧問報酬を隠れ蓑にした事実上の企業献金だった可能性も生じる。政治資金規正法上の疑義があるということだ。

問われる賄賂性 
 県政にかかわる情報を植村組グループに伝えたり、処分場建設を推進する動きを続ける見返りにカネが支払われていたとすれば、"顧問報酬"自体の賄賂性が疑われる事態である。

 全国では産廃処分場をめぐる汚職事件が後を絶たない。昨年、和歌山県紀の川市の元副市長が、処分場拡張などで産廃処理業者への便宜を図った見返りに海外旅行の接待を受けたとして逮捕・起訴されたほか、平成22年には徳島県石井町の町議が産廃業者に有利な質問をするよう請託を受け、見返りとして現金を受け取ったなどとして立件されている。

 産廃行政にからむ闇は深いが、鹿児島県が強行している処分場計画は、その規模や不透明な経過からいっても疑惑の大きさが際立っている。

 次稿では、田中県議の議会質疑をたどりながら、果たして来た役割について検証する。



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