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民間企業処分場を条例でつぶしにかけた鹿児島県

きっかけ作ったゼネコン関連会社顧問の県議

薩摩川内市産廃処分場問題(6)

2012年3月 1日 09:50

 平成22年、鹿児島県は「鹿児島県県外産業廃棄物及び県外汚染土壌の搬入の許可に関する条例」を制定した。

 同条例は、県外で発生した産業廃棄物の搬入を許可制にすることを定めたもので、事実上他県の産廃を締め出すことを意図したものだった。
 鹿児島県の産廃は他県に捨てるが、他県の産廃は鹿児島に持ち込ませないという身勝手な"鎖国政策"だが、この条例には後述する別の狙いがあったと見られている。

 そして、条例制定で重要な役割を演じたのが、ゼネコン関連企業から顧問報酬をもらいながら同社への利益誘導ともとれる議会質問を行っていた田中良二県議会議員(自民・薩摩川内市区選出)だったのである。

条例制定うながしたのは疑惑の県議
 kaonew.jpgのサムネール画像のサムネール画像平成22年3月、田中県議は県議会定例会において次のような質問を行った。(写真が田中良二県議。同県議の後援会ホームページより)

《産業廃棄物に対していろいろな不安、心配が出されている中で、本来管理型処分場について県内発生分の産廃は県内で処理する考え方が必要であると考えます。要綱の第17条には、公共関与の管理型処分場を含む本県の管理型処分場についても、県外からの産廃搬入の抑制の規定がありますが、本県の指導要綱が制定以来20年近くなることなどにかんがみ、要綱の条例化の検討を求める意見もありますが、これについて見解をお伺いします》。

 答弁に立った伊藤祐一郎知事は次のように述べている。
《県の産業廃棄物の処理に関連いたしましての御質問をいただきました。
 近年、全国各地で県域を越えて搬入された 産業廃棄物の不適正処理が多発してきたことや、産業廃棄物の処理に対する住民の不信感等を背景といたしまして、県外産業廃棄物の搬入等について、複数の県 で本県のような指導要綱ではなく、条例による法的規制が行われているところであります。本県におきましても、産業廃棄物の適正処理の推進や良好な生活環境 保全の観点から、県外産業廃棄物の搬入や施設設置の事前協議につきまして規制を行う必要があると考えており、今後市町村等の関係団体の意見も聴取した上で 条例化を図ってまいりたいと考えております》。

 このやり取りから3か月後の同年6月、鹿児島県議会は、唐突に提案された「鹿児島県県外産業廃棄物及び県外汚染土壌の搬入の許可に関する条例」を可決することになる。

 条例制定のきっかけを作ったのは田中県議だったということになるが、この条例が制定されたおかげで、「植村組」グループに巨額な公費が転がり込む産廃処分場計画が揺るぎないものとなっていく。

民間の処分上計画が浮上
 gennpatu 979.jpg鹿児島県は、平成18年から公共関与による産業廃棄物の管理型最終処分場建設に向けて猛然と突き進み始めた。

 これまで報じてきたとおり、処分場を建設する場所が、当初から薩摩川内市川永野にある地場ゼネコン「植村組」グループの土地に決められていたことは疑いようもないが、平成19年になって県や植村組グループにとって目障りな会社が現れる。

 宮崎県に本社を置く「九州北清」という産廃業者が、鹿児島県湧水町で管理型処分場の設置計画を進め出したのである。

 100億円近い公費支出が予定される鹿児島県直営の産廃処分場に対し、民間企業である九州北清の処分場計画にかかる公費支出はゼロ。誰が考えても県の計画は無意味な公共事業としか映らない。
 「県内に管理型処分場がない」ということを巨大公共事業の拠りどころとしていた県としては、到底容認できない話だった。錦の御旗がなくなる事態に、伊藤祐一郎知事や植村組グループがあわてたことは想像に難くない。
 
 結果、県は薩摩川内市での処分場建設計画の動きに拍車をかけるため、住民への丁寧な説明を放り出し、地域振興金3億円をばら撒いて関係者を黙らせるという愚行に走ることになる。
 環境影響評価や地質調査の内容が杜撰になったことはもちろん、県庁職員を大量に動員して反対派住民らを力でねじ伏せるなど狂態の限りを尽くしてきたのは、既成事実を早急に積み上げる必要があったからに他ならない。

 一方で、九州北清が提出した処分場設置申請を握りつぶし、計画断念に追い込むためにあらゆる手段を講じた。

条例の"狙い"は民間企業の処分場つぶし
 その最大のアイテムが冒頭で述べた「鹿児島県県外産業廃棄物及び県外汚染土壌の搬入の許可に関する条例」だったのである。

 同条例には次のよう規定されている。
 
《管理型最終処分場への県外産業廃棄物の搬入及び埋立処理施設への県外汚染土壌の搬入について許可制度を設けること等により、産業廃棄物及び汚染土壌の適正な処理を確保し、もって県民の良好な生活環境の保全に資することを目的とする》。

《当該申請に係る県外産業廃棄物が、管理型最終処分場が設置されていない都道府県の区域で生じたものであり、かつ、当該県外産業廃棄物の搬入をしようとする県内の管理型最終処分場が、当該県外産業廃棄物が生じた事業場から最も近い管理型最終処分場であるとき》。

 県外の産廃を持ち込むには"許可"が必要になるとした上で、《管理型最終処分場が設置されていない都道府県》からの産廃しか許可しないと明記しているのである。

 鹿児島県に産廃を持ち込むとすれば、県境を接する宮崎県と熊本県の産廃しか考えられない。しかし、宮崎、熊本の両県には既に管理型処分場が存在しており、双方の県の産廃は、はじめから許可対象にならない仕組みだ。

 ちなみに、九州7県のうち管理型処分場がないのは鹿児島県だけであり、県条例が搬入許可にあたって《管理型最終処分場が設置されていない都道府県》との条件を付けたことは、他県の産廃を完全に締め出したということになる。
 狙いは「九州北清」の処分場計画つぶしである。

 九州北清としては、宮崎県などで発生した産廃も受け入れる予定だったはずで、そうでなければ経営を圧迫される。
 県は、条例を作ることで、民間企業が管理型処分場を計画する意図を粉砕したのである。

 違法を承知で九州北清の処分場設置許可申請を放置したのは、条例を制定し、同社を計画断念に追い込むための時間稼ぎだった可能性が高い。

 誤算だったのは、県の対応を不服とした九州北清が、計画をあきらめるどころか、環境省に県の不作為を申し立て、裁決を仰いだことである。
 先月30日、環境省が鹿児島県の行為は違法(不作為)であるとして、速やかに処分を行うよう命じる裁決を下したことで、早い時期から実現可能な管理型処分場建設計画が存在していたことが明るみに出てしまった。

 県が巨額な公費を投入して管理型処分場を建設する必要性自体を否定する結果だ。

処分場計画促進を自画自賛した田中県議
 周辺整備工事も含めて100億円近い税金が食いつぶされる処分場と、民間企業の自己資金で建設される処分場。県民はどちらを選択するだろう。
 
 県の処分場で潤うのが、地場ゼネコンと利権政治屋だけという側面まで考えれば、答えが後者であることに異を唱える人は少ないだろう。
 しかし、鹿児島県の問題点は、県議会の中で後者に属する議員が少なく、この段階に至っても処分場建設を強行しようとする勢力が幅を利かせていること。その代表格が条例制定を建議した田中良二議員であることは疑う余地もない。

 平成22年9月、同県議は県議会本会議で次のように発言している。

《管理型処分場に ついて、私は、これまで県環境整備公社の北薩地域振興局内への配置関係職員の増員、さらに県産業廃棄物等の処理に関する指導要綱に関連して、県外からの産廃搬入の抑制の条例化を提言してきましたが、いずれも具体化されました。また、私は県環境整備公社の職員の皆さんとはさまざまな場面で接していますが、 地元対応についても奮闘しており、評価できる姿勢と考えます》。
 
 選挙区である薩摩川内市の自然を蝕むことが予想され、地域自治を崩壊させた処分場計画で果した自身の役割を誇ったあげく、数の力で地元住民を弾圧してきた県側職員を褒めたのである。
 取材に対して「私としては平等にやってきてます」と答えた田中県議だが、それが真っ赤な嘘であることをこの議会発言が証明している。
・県環境整備公社の北薩地域振興局内への配置
・関係職員の増員
・県外からの産廃搬入の抑制の条例化
どれも処分場建設を急ぐ県側の意向を汲んだものであることは明らかなのだ。

 発言そのものは、県民ではなく知事や植村組グループへの自己顕示だったとしか思えない。
 



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