今年8月、複数の読者から「指宿の市長が、HUNTERを訴えるそうです」というメールをいただいた。続いて、報道関係者からも同じ内容についての問い合わせ――。何の騒ぎかと関係者に詳しく聞いてみたところ、HUNTERの配信記事で“政治とカネ”を巡る疑惑について指摘された鹿児島県指宿市の豊留悦男市長が、地熱発電事業の説明会で事実関係を問われ、「HUNTERを訴える」と明言したのだという。
9月に行われた指宿市議会でも市長が同様の答弁を行ったらしく、今度は実際に訴えられたのかどうかの問い合わせが寄せられる状況となっている。どうやら豊留氏は、“反省”という言葉を知らないようだ。(写真、円内が豊留指宿市長)
■逃げ口上で「訴える」
豊留市長が最初に「HUNTERを訴える」と発言したのは、8月に市が開催した地熱発電事業「地熱の恵み活用プロジェクト」に関する説明会の席上。この事業は、市所有の温泉施設「山川ヘルシーランド」の敷地内に温泉熱(蒸気)を利用した発電施設を整備し、売電収入を福祉や産業振興に回すというものだ。
市は、九州電力と地場の施設管理業者「セイカスポーツセンター」を発電等事業者に選定して計画を進めていたが、国に提出したプロジェクトの許可申請文書に捏造された市民の声や市長選の経過を記載していたことが発覚。国の外郭団体が実施している補助事業で不採択となったことからセイカスポーツセンターが撤退し、新たに九電1社を事業者に選定して地元の同意を得る作業に入っていた。地元説明会は、市のアリバイ作りの一環だ。
説明会の席上、市民の声を聞こうとしない市長の姿勢を咎めた女性市議が、昨年12月から今年1月にかけてHUNTERが報じた市長の政治とカネの問題について問い質したところ、切羽詰まった豊留市長は「HUNTERを訴える」と明言していた。9月の指宿市議会でも政治姿勢を問われ、同様の答弁を行ったという。
■改めて市長に問う!
複数ある豊留市長を巡る疑惑のうち、地熱発電絡みのものといえば、市長選の際に豊留陣営が受け取った20万円の件に絞られる。
昨年2月に行われた指宿市長選の際、選挙事務所を訪れた地熱発電事業の関係者が、市長の支援団体「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者に10万円ずつ2回、計20万円を渡していたというもの。選挙期間中、しかも選挙事務所で行われた業者側の寄附が市長の「選挙運動費用収支報告書」に記載されていなかったため、暮れの配信記事で、選挙に関するすべての収入と支出を報告するよう求めた公職選挙法に違反するのではないかと指摘していた。
【参照記事】
・「指宿市長側に疑惑の10万円 地熱発電業者が選挙事務所で」
・「指宿市長側に新たな現金供与疑惑 地熱発電業者から2度の10万円」
HUNTERの記者は、「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者と会計責任者に直接会って事実確認を行っており、業者が市長側に20万円を寄附した証拠も入手していたことから、絶対の自信をもって配信した記事だ。さらに、豊留市長の自宅と市役所に、次の内容の「質問書」を届けて弁明を求めたが、市長からの回答はなかった。
市長に関する一連の疑惑報道について、これまで市長サイドから反論や苦情をもらったことは、ただの一度もない。訴えるのは自由だが、疑惑を招く事実があったことや、説明責任を果たさなかった自らの姿勢を反省することなく、「訴える」を逃げ口上に使うのは卑怯というものだ。改めて豊留市長にあてた質問書を掲載しておくので、ぜひ回答をいただきたい。
指宿市長 豊留悦男様平成30年2月に行われた指宿市長選挙の際、地熱発電の関係者が、政治団体「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」の代表者に、選挙期間中に10万円、投開票後に10万円の計20万円を渡したことが分かりました。選挙期間中の10万円については、「いぶすきを豊(ゆたか)にする会として受け取った」とした上で、代表者自身も受け取りの事実を認めています。
しかし、「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」が解散に伴い鹿児島県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書には、該当する寄附の記載はありません。
また、貴殿の選挙運動費用収支報告書にも、該当する寄附の記載はありません。
本来、選挙期間中の、しかも選挙事務所内で行われた現金供与は、当該選挙にかかる寄附として処理されるべきで、「いぶすきを豊(ゆたか)にする会」が受け取ったとする代表者の説明は不合理と言うしかありません。
代表者は問題の寄附について、「選挙事務所の会計の人に渡した」と話していますが、一連の経緯からすると、市長の選挙運動費用として費消されたか、あるいは市長ご自身の収入として処理されたのではないかという疑念が残ります。
地熱発電事業について一定の権限を有する市長への業者側からの寄附は、極めて賄賂性が高いものと思料いたしますが、地熱発電関係者からの寄附金がどこに入ったのか、ご回答いただきますようお願い申しあげます。