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福岡県知事選で雪崩現象 追い詰められる麻生太郎

2019年3月 8日 09:20

武内a.jpg 麻生太郎副総理兼財務相による強引な推薦候補選定が保守分裂を招いた福岡県知事選挙。自民党推薦をもぎ取った形の元厚生官僚・武内和久氏の陣営だったが、自民党の中から造反者が続出。公明党の支持母体である創価学会も現職の小川洋知事を支持する方針となっており、様子見していた関係者が雪崩を打って小川陣営に参加する状況となっている。
 追い詰められる麻生大臣――。県政界関係者の間からは、早くも戦犯を特定する声さえ上がり始めている。
(写真左が自民推薦の武内氏、右が小川知事)

■続々と「小川支持」表明
 福岡県の首長選挙において勝利を意味する「自民党推薦」。麻生副総理の力業でもぎとった「武内推薦」だったが、期待された支持率アップにはつながらず、逆に小川陣営の勢いが増す状況だ。
 
 先月は、岳康宏(福岡市中央区選出)、武藤英治(同城南区選出)の両自民党県議が、所属していた自民党県議団を退会し、小川支持を表明。今月に入ってからは、石原派の鬼木誠衆院議員、岸田派の古賀篤、藤丸敏両衆院議員が相次いで小川知事を支持する意向であることを明言している。ここで、改めて県内小選挙区ごとの勢力を見てみよう。

選挙区.png

 福岡県内11選挙区で議席を持つ自民党の議員のうち、明確な小川支持は二階派所属の3人(4区・宮内秀樹、6区・鳩山二郎、11区・武田良太)に前出の鬼木、古賀、藤丸の3氏を加えた6人。三原朝彦、山本幸三両衆院議員も、心情的には小川支持とみられている。武内支持を打ち出しているのは麻生派の3人だけ(上の票ではピンク色で表示)というのが現状だ。大票田である福岡市の中で、武内支持の衆院議員は1区の井上貴博氏のみ。北九州市の9区三原氏と10区山本氏は動きが鈍く、積極的に武内支持で走り回っている国会議員は同市が主地盤の大家敏志参議院議員一人なのだという。

 固い団結を誇ってきた自民党県議団も、1枚岩ではなくなっている。岳、武藤両県議は会派を離脱したが、“隠れ小川派”が多数いるというのが大方の見方。麻生大臣の不人気がそのまま武内氏の伸び悩みにつながっていることから、「無理して武内の選挙をやるつもりはない」(ある自民党県議)というケースもある。

 ある自民党幹部は、県内の状況をこう解説している。
「県会議員は自分の選挙と同時進行で知事選をやらなきゃならんが、周りは小川支持がほとんど。世間は、(自民党)県連が小川をいじめてるとしかみてない。『県議選はあなたに一票でいいが、知事選の武内はダメよ』と言われれば、ハイハイと返すしかない。無投票になりそうなところは『武内を頼む』と言えるんだが、戦っている中で嫌がられる話などできない。それが現実よ」

 別の県議会関係者は、さらび厳しい見方を披露する。
「県南は古賀(誠)さんの影響力と6区の鳩山でほとんど小川。県議の何人かが武内支持だが、有権者はついてこない。武内支援を頼んでも『はいはい、分かりました』ばっかりだ。大票田の福岡市とその周辺は、圧倒的に小川支持が多く、話にならない。麻生さんの地元だって、武内が絶対的に強いわけではない。小倉(北九州)の方は、(自民党)市議団が武内支持を明確に打ち出したので選挙する形だけはできてるが、実際の票になるかどうか……。肌感覚で言えば、(北九州も)小川支持ばっかりというのが実情よね。おそらく、知事選はダブルスコア以上の差がつく。どっちが勝つか、分かるやろ。戦犯は麻生さんと大家だ」

■衝撃与えた創価学会の動き
 自民党議員による造反も痛いが、武内陣営にとってそれ以上の衝撃となっているのが公明党の支持母体である創価学会の動き。公明党は“自主投票”となっているが、票を持つ創価学会はハッキリと「小川支持」を打ち出してきた。今月2日に行われた小川知事の支援組織「福岡県民の会」の設立大会に参加した公明党の弘友和夫元参議院議員は、力強く「小川支援」を表明。同党の支持母体である創価学会の山本武総九州長が同会の世話人に名を連ね、組織としての旗幟を鮮明にした格好だ。ある学会員に話を聞けた。
「うち(学会)は、もともと小川支持。小川知事の初当選の時、候補者選考で蔵内(勇夫・県連会長)さんに傾きかけていた流れを変えたのはうちなんだから。小川知事の生みの親が麻生太郎や麻生渡前知事みたいに言われるけど、違うだろ、と。大体、何で小川さんがダメなのかろくな説明もないまま勝手に武内推薦を決めて、『従え』」というんだから、ふざけてる」
 
■経済界も……
 経済界も小川支持が大半だ。自治体ごとに設置されている商工会議所の対応はまちまちだが、全県選挙で最も力を発揮すると言われている「九電商友会」(九州電力の取引業者で構成された組織)は、早い段階から小川支持。九電の松尾新吾元会長が小川知事の後援会長を務めている関係もあって、活発に動く。商友会のある会社社長は、次のように説明する。
「小川、武内の両方を推薦してごまかすやり方もありですけど、それはちょっとね……。麻生(太郎)さんのやり方は、やはり正義ではないですよ。元総理だからといって、何やってもいいわけではない。小川知事を引きずり降ろして武内をやる大義名分はない」

■注目集める高島福岡市長の動向
 県連会長を引っ張り出そうという目論見は外れたらしく、武内陣営では強面の大家敏志参院議員が「選対本部長」に就任。各級議員にはっぱをかけているという。武内氏本人は、麻生色打ち消しを狙って単独での街頭活動を始めているが、いかんせん迫力不足。支持の広がりは見えていない。武内陣営のある議員は、ため息交じりにこう語っている。
「福岡市の高島(宗一郎)市長が、いつ参戦してくれるか――。彼が武内支持を打ち出してくれると、少しは風向きが変わるかもしれない。ただし限定的。大勢をひっくり返すのは無理だ。でも、ないよりはまし。早い段階で武内の支援に乗り出してほしい。期待できるのは、それしかないから」

 福岡市長の動向に注目が集まる状況だが、今週報じてきたように、武内氏は先月まで福岡市の「政策参与」。高島市長とは近い関係で、特別待遇を受けていたことが分かっている(参照記事⇒《県知事候補は時給18,000円 元官僚に弁護士報酬を超える額》・《【知事選異聞】 福岡市「政策参与」への疑問》)。 

 知事選には他に、共産党福岡県委員会副委員長で新人の篠田清氏が立候補を表明している。



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