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県知事候補は時給18,000円 元官僚に弁護士報酬を超える額

2019年3月 6日 09:00

91b05f379e30189855b71448b89462db0ff1adea-thumb-245xauto-21547 (1).jpg 「時給18,000円」――。一般社会ではあり得ない額だ。
 福岡県知事選挙に自民党推薦で出馬することを表明している元厚生官僚・武内和弘氏を「政策顧問」として採用した福岡市が、同氏に対し、時給18,000円の計算で報酬を支払っていたことが分かった。
 時給18,000円は、同市が定めた基準の最高額。大学教授や弁護士に対する時給よりはるかに高いことから、特別扱いに疑問の声が上がりそうだ。(写真は福岡市役所)

■弁護士報酬より高い時給
 武内和弘氏は福岡市出身。久留米大学附設高校から東京大学法学部に進み、卒業後は厚生省(現厚生労働省)に入省して主に医療・介護・福祉畑を歩んだ逸材だ。福祉人材確保対策室長を最後に退官した後は、マッキンゼー&カンパニー日本支社アドバイザーを経て、今年4月からKBC九州朝日放送の「シリタカ!」「アサデス」でコメンテーターを務めていた。

 その武内氏が、自民党県連による県知事候補の公募に応じたのは昨年の12月28日。翌29日には県連が同氏を推薦候補に選定し、これを受けた党本部が1月末、「武内推薦」を正式決定している。

 経歴については申し分のない武内氏だが、霞が関で“幹部職員”とされる課長などのポストを経験しているわけではない。いわゆる中堅官僚。いかに役人天国の日本といえども、法外な報酬を得ることのできるキャリアの持ち主とは思えない。ところが福岡市は、「政策参与(健康先進都市推進担当)」という耳慣れない肩書を与えた同氏に対し、最低賃金をはるかに超える額で計算した報酬を支払っていた。下は、福岡市に情報公開請求して入手した、昨年10月に武内氏が政策顧問として実働した時の報償費支出伺。時間当たりの単価が「18,000円」で、「2.5時間」仕事をした武内氏に計45,000円を支給していたことが分かる。(*以下、文書中の赤い書き込みはHUNTER編集部)

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 18,000円の時給など聞いたことがない。一般社会のパートやアルバイトは、数百円台が大半。福岡県の最低賃金は814円であり、最も高い東京都でも985円に過ぎない。超難関の司法試験を突破して国家資格を得た弁護士でさえ、相談料はせいぜい1時間10,000円が相場。18,000円などという非常識な額の時給が存在すること自体、驚きだ。ところが福岡市は、これまで例のなかった“政策参与”という肩書への報酬額を、外部講師にのみ適用される「講師謝礼基準」によって決めていた。下が、その基準である。

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 この基準については稿を改めて検証するが、武内氏への厚遇ぶりは、度を越えていると言わざるを得ない。同氏は、高島宗一郎市長が正式に“委嘱状”を出した「政策参与」。身分としては「外部講師」などではない。武内氏を政策参与に選任した2017年の決裁文書には、同氏を選定した「理由及び主な業務」として次のように記されていた。

『福岡市健康先進都市の策定において、有識者会議のファシリテーターとして中心的な役割を担っている。また、20年を超える厚生労働省での経験により医療・福祉・年金・雇用に係る政策企画立案に精通するとともに、民間コンサルティングにおいて健康・医療・福祉分野での実績もあるところから、健康先進都市の実践的・効果的な推進に向けた政策立案等について情報の提供や助言等を受けるもの』
 どう読んでも、「外部講師」の姿は見えてこない。武内氏の政策参与としての役割は、情報提供や助言であって、複数の人間を相手にした「講師」ではない。その証拠に、武内氏が“公務”で東京から福岡に来た折の旅行命令書に記載された同氏の「用務」は、決して外部講師がやる内容ではなかった。計4回分の旅行命令書の、用務の欄は次のようになっている。

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 初回旅行時(平成29年9月)の用務欄に併記された「市長出前講演会視察」はただの見学であって、仕事とは言えまい。4回とも「荒瀬副市長との協議」が主な用務。講師の仕事などやっていない。政策参与などという訳の分からない役職を作ったため報酬規程がなく、無理やり外部講師用の基準にあてはめ、高い時給を払っただけの話だ。

 重ねて述べるが、武内氏は元職が“霞が関のキャリア官僚”というだけで、幹部といえるポストに就いたことはない。知名度の高い民間企業に籍を置いていたことも確かだが、弁護士報酬より高い時給を支払わなければならない相手ではあるまい。

 同氏が受けとったのは、時給18,000円の計算で、副市長との3回の協議にかかった6.5時間分の報酬10万5,056円(所得税を引かれた金額)。法外な額であることは、誰の目にも明らかである。もらった方も、払った方も、感覚がおかしいと言わざるを得ない。「便宜供与」という言葉が頭に浮かぶところだが、政策参与の辞任時期にも、不可解な点があることが分かっている。(以下、次稿)
 



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