昨年7月の知事選挙の際、初当選した三反園訓鹿児島県知事の陣営が、人件費として支払われた会社社長からの寄附を政治資金収支報告書に記載していなかったことが判明(参照記事⇒「三反園鹿児島県知事陣営に闇献金疑惑」)。陣営関係者の多くが問題のカネの流れを承知しており、“闇献金”が疑われる状況となった。
三反園氏の政治資金について調べを続ける中、今度は同陣営の選挙運動費用収支報告書と別の知事支援団体が県選管に提出した収支報告書に、虚偽の疑いが浮上した。HUNTERが注目したのは選挙期間中の人件費である。(写真は三反園鹿児島県知事)
■疑惑拡大
闇献金が疑われているのは、知事選告示までの“後援会活動”にかかった人件費分の収入。沖縄で人材派遣会社などを経営するH氏が、三反園氏の運転手ら2人の報酬を支払っていたが、11月30日に公表された三反園氏の資金管理団体「みたぞのさとし後援会 三訓会」(総務省届出)と「みたぞのさとし後援会」(鹿児島県選挙管理委員会届出)の政治資金収支報告書には、該当する寄附の記載がなかった。収入・支出のすべてを報告するよう求めている公職選挙法の規定に抵触する可能性が高い。
それでは“選挙期間中”、両人はどのような仕事に就いていたのか?改めて話を聞いたところ、三反園氏の運転手を務めていた男性は、選挙が行われた17日間の内の14日間、選挙カーの運転を担当。もう一人の男性は、鹿児島市内にあった三反園氏の選挙事務所で連日雑用をこなしていた。
この間、仕事への対価は支払われていたのか――。確認したところ、選挙カーの運転手に対する日当は投・開票後数か月支払われず、沖縄の企業経営者H氏に未払いを抗議したことで、ようやく「みたぞのさとし後援会」から振り込みがあったという。下は、選挙カー運転手の預金通帳に記載された振込みの記録。選挙運動の費用である以上、本来は三反園氏本人の名前で支払われるべきだが、昨年10月21日に「みたぞのさとし後援会」から182,000円が振り込まれていた。
日当は1日13,000円。14日分の計算だ。知事選の公費助成制度がある鹿児島県なら、県が選挙カーの運転手に1日あたり12,500円を上限に支払うのが普通(*12,500円は制度上の上限)。政治団体が支払ったという事例は聞いたことがない。しかし、現実には3カ月遅れで、不自然な「みたぞのさとし後援会」からの支払い……。三反園陣営には、そうせざるを得ない理由があった。運転手日当を巡って、陣営が選挙公営制度の助成金を詐取していたのである。運転手男性に、選管から振り込みがあるはずがない。
詐取された金額は212,500円。三反園氏の陣営は、選挙カーの運転業務に関する契約を結んだ人物が実際には業務を行っていないことを承知の上で県に請求を起こし、17日分の満額となる212,500円の助成金を男性の口座に振り込ませていた。(参照記事⇒「三反園知事陣営が助成金詐取 選挙カー運転手報酬で不正」)
HUNTERの報道を受けて詐取金は県に返金されたが、実際に三反園氏の選挙カーを14日間運転していたのは三反園氏の運転手を務めていた男性。三反園陣営は、県から日当の振り込みがあると申し向けて男性を騙し、支払いを3か月も引っ張っていた。男性に未払いの選挙カー運転代182,000円が振り込まれたのは昨年10月21日。HUNTERが三反園陣営の選挙運動費用について取材していた時期と重なる。
公職選挙法の規定では、選挙カーの借入費用と運転手日当は選挙運動費用のカウント外。報告書に記載義務はない。運転手男性への支出に違法性を問うことはできないが、後払いされた日当の原資を人材派遣会社の社長H氏が三反園氏側に提供したとすれば、選挙の収入。当然、寄附として報告書に記載すべきだ。この寄附について確認したが、選挙運動費用収支報告書に該当する寄附の記載はなかった。寄附が実行されていれば、不記載もしくは虚偽記載が疑われる。
一方、告示前に後援会の街宣車を運転し、選挙中は事務所の雑用をこなしていた男性運動員は、選挙期間中の日当をもらっておらず、10月頃になってH氏と三反園事務所に催促。後援会から振り込まれたのは20,000円だけだったとしている。沖縄のH社長が絡む運動員の人件費は、すべて“裏処理”された形。陣営内のデタラメな会計処理が、状態化していたのは確かだ。
選挙から1年以上過ぎ、当時の詳しい状況を語り始めた元運動員たち。沖縄の社長H氏から日当をもらっていた2人の男性の証言によって、別の疑惑が浮上する。登場するのは、三反園知事が県議会で「存じ上げていない。関係もない」と断言した政治団体『県民党』である。
(つづく)