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沖縄蔑視と安倍政権の戦前回帰

2016年11月16日 09:50

 沖縄の市民を「土人」と蔑んだ警察官を、事実上擁護した形の鶴保庸介沖縄担当相。沖縄出身のジャーナリストは、大臣就任以来続いている鶴保氏の沖縄蔑視ともとれる発言の数々を、日本が内包する「沖縄差別」を表したものだと指摘。本土の人間に対するやり場のない怒りをぶつけた(参照記事⇒「顕在化した“沖縄差別” 鶴保発言をこう見る 」。
 一方、別のある記者は、沖縄の現状と鶴保氏の言動を小学校における先生と子どもたちの話に置き換えた(参照記事⇒「鶴保センセイ必読 子どもでも分かる土人発言問題」) 。
 土人発言を巡っては、松井一郎大阪府知事も「出張ご苦労様」と問題の警察官をねぎらうツイート。右寄りの権力者たちが、戦前からの沖縄蔑視を引き継いでいる状況に唖然とする思いだ。背景にあるのが、沖縄を“捨て石”と見る安倍政権の姿勢であることは間違いない。

無能、無知の沖縄担当大臣
 改めて、鶴保沖縄担当相による一連の発言を確認しておきたい。
 
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 大臣就任以来、辺野古移設と沖縄振興予算をリンクさせ、恫喝を続ける鶴保氏。予算で地元を締め上げる手法が、どれほど沖縄の怒りを買っているのか、鶴保氏はまったく理解できていない。仲井真弘多前知事が、政府による毎年度3,000億円の沖縄振興予算を評価するとして、辺野古沿岸部の埋め立てを承認したのは2013年12月。カネで沖縄の心を売った形の仲井真氏には批判が集中し、翌年1月の名護市長選挙で移設反対派が勝利した。同年11月の知事選では、仲井真氏が翁長雄志現知事に大敗している。国政選挙では翁長知事を中心としたオール沖縄が連戦連勝。自民党は、沖縄における衆参の議席すべてを失っている。振興予算を使った「アメとムチ」が通用しないことに気付いていないとすれば、鶴保氏はよほどの不勉強。ここ数年の経緯を、職務に生かすことのできない無能な政治家ということだ。

 歴史に学べぬ愚かさは、土人発言を「差別」とは絶対に認めない態度にも表れている。県民の4人に1人が犠牲になったといわれる沖縄戦当時、日本軍の兵士が県民を「土人」と呼んで蔑んだことは、多くの証言で明らか。住民に銃口を向けた兵士たちがいたことも、記録に残されている。沖縄における「土人」は戦前から続く差別用語。知らなかったとすれば、鶴保氏に沖縄担当大臣としての資格はあるまい。

銃剣とブルドーザー
 問題は、沖縄との関係を悪化させる一方の鶴保氏を、放置している安倍内閣の姿勢である。2000年の沖縄サミット開催を実現した小渕恵三や普天間返還に道筋をつけた橋本龍太郎両元首相、官房長官を務めた野中広務、梶山静六。いずれも、戦争末期に本土の捨て石となり、戦後は国内に展開した米軍基地の74%を押し付けられた沖縄に寄り添った政治家だ。戦争体験のある政治家が少なくなるにつれ政界での沖縄差別が顕在化し、安倍政権になってからは、沖縄の民意を無視して一方的に国の方針を押し付けるようになった。辺野古移設や高江のヘリバット工事で警察や海保が基地反対派を蹂躙する光景が、戦争直後に「銃剣とブルドーザー」で沖縄県民の土地を次々と接収した米軍とダブる。差別容認をはじめとする鶴保氏による一連の沖縄蔑視発言や松井府知事の機動隊員擁護は、政権の考え方を体現したもの。安倍政権は、戦後71年を経ても、沖縄を「捨て石」としか考えていない。
 戦前回帰を希求する右翼政権が続く限り、沖縄県民が日本人としての誇りを感じることは、ない。



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