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辺野古への土砂投入で見えた安倍政権の本性

2018年12月17日 09:25

DSC05638-thumb-450xauto-23517.jpg 二度の知事選で示された民意が、いとも簡単に踏みにじられた。
 今月14日、地元沖縄の反対を無視して、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移転先とされる名護市辺野古の海に、埋め立て土砂が投入された。戦前は本土の捨て石にされ、4人に1人といわれる県民の犠牲を払った沖縄が、戦後はこの国の米軍基地の7割を押し付けられ、日米安保の生贄にされるという理不尽な現実がある。
 既成事実を積み上げ、移設反対を唱える沖縄県民の意思をくじこうと図る安倍政権――。民主主義の基本原則を歪めてまで、辺野古に基地を建設する意味があるのだろうか。
(写真は、キャンプシュワブのゲート前)

■「抑止力」という嘘
 辺野古に限らず、軍事基地の建設が問題化するたび、安倍政権が発してきたのが「抑止力」という言葉である。“国防のために抑止力が必要”ということらしいが、この言葉について、十分な説明ができる国会議員は皆無に近いはずである。

 一体、何に対する抑止なのか――。じつは曖昧模糊として、実態がつかめない。中国に対する抑止なのか、北朝鮮に対する抑止なのか。もちろんロシアに対してではあるまい。

 現実問題として、北朝鮮が日本に攻め込むことは不可能で、同国の脅威は「ミサイル」に尽きる。沖縄に基地があるからといっても、北朝鮮への抑止にはならない。では、中国に対する抑止力なのか?

 辺野古にヘリ基地を建設したからといって、中国が脅威に感じることはない。辺野古に建設されるのは、大型機や戦闘機の離発着ができない、オスプレイをはじめとするヘリの基地なのだ。大国・中国の自民解放軍が、数十機のヘリに怯えるとは思えない。じつは、辺野古の基地は何に対する「抑止力」になるのかという疑問について、これまで整合性のある説明はただの一度もなされていない。

 大国が後ろ盾なら相手が躊躇するという説もあるが、現代における抑止力とは「核」に対するもの、つまり「核抑止力」であって、規模の小さな武力には当てはまらない。安倍政権は、国民の目を欺くため、曖昧な言葉でごまかしているに過ぎない。

 国防問題に詳しいある国会関係者は、次のように話す。
「抑止力という言葉は、じつに便利なものなんだ。そう言っておけば、国民はそれぞれの頭で想像してくれる。ある人は中国を想起するだろうし、北朝鮮を思い浮かべる人もいる。では、具体的に何を抑止するのかというと、航空機なのか軍船なのか、はたまたミサイルなのか分からない。抑止とは、核に対して使うものだよ。ごまかされちゃ、いけない」

■「唯一の解決策」という嘘
普天間基地.jpg 移設工事を強行してきた安倍政権は、沖縄の民意を無視する姿勢を批判されるたび、「辺野古移が唯一の解決策」というフレーズを繰り返してきた。しかし、この決まり文句にしても、突っ込んだ議論の前には無力である。(右が普天間飛行場)

 橋本龍太郎首相(当時)とモンデール米駐日大使が普天間基地返還に合意したのは1996年4月。辺野古が移転先として浮上したのは1997年だ。代替施設の候補地として、国内外で複数の場所が検討されたというが、国が「県内移転ありき」で走ってきたことは明らかで、本土内で別の候補地が上がっても、「地元の反対」で次々に消えていった。一方、沖縄は県単位の反対だが、安倍政権は一顧だにしない。「唯一の解決策」に、怪しさが漂う。

 普天間基地が返還されることで宜野湾市の危険は取り除けるもものの、辺野古に新基地を建設すれば、沖縄が日米安保を背負う形に変わりはない。“国土の0.6%に過ぎない沖縄に、米軍基地が集中する現実”は変わらないということだ。なぜ沖縄県内なのか?本土内の米軍基地周辺では、いけなかったのか?こうした問いに、政府が明快な答えを提示したことはない。

 「唯一の解決策」はまやかしであって、極めて悪質な嘘と言っても過言ではあるまい。米軍が「辺野古」に固執する理由はなく、本土内でのどこでも基地建設が可能だからだ。アメリカの本音は、「基地は、日本国内ならどこでもOK」。譲れないのは、“普天間の代替施設が日本国内であること”という一点であり、それは基地建設の費用を全額日本側に押し付けるためでしかない。

 米軍再編によって、沖縄の海兵隊8,000人がグアムに移転する予定だが、約7,000億円とされる移転経費は日本の負担だ。辺野古の基地建設費などを合わせると、米軍再編にかかる費用は2兆円~3兆円。まるまる日本国民の税金で、米軍がアジアの軍事拠点を整備する形となる。

■問われる新基地の必要性
 そもそも、日米安保を維持するために必要な米軍基地の規模はどの程度であるべきなのか?在日米軍の総数は約37,000人、そのうち約26,000人が沖縄に駐留している。59.5%が海兵隊で15,365人、残りは陸軍が1,547人、海軍が2,159人、空軍が6,772人といった陣容だ。(*下は、沖縄県のHPより)

沖縄米軍.png

 前述の通り、再編にともない沖縄の海兵隊8,000人がグアムの基地に移る計画で、他の軍事施設も削減されることが決まっている。これは、沖縄がいずれ米軍の戦略拠点ではなくなるということを意味しており、そうであるならば基地の規模を維持する必要はなくなる。安倍政権が辺野古移設に固執するのは、別の理由があるからに他ならない

 普天間の移設先を辺野古と決めたのは日本政府だ。沖縄の同意を経ずに、「辺野古移設」をアメリカと約束したのも日本政府である。移設工事を強行するのは、トランプにへつらう安倍晋三という政治家の顔作りのためであり、他に理由はない。

■民意無視で暴走する安倍政権
 本土内の都道府県で辺野古と同じような問題が起き、当該自治体の選挙で政府の方針に反対する首長が当選したらどうなるだろう。高い確率で、政府は方針を変えざるを得なくなるはずだ。しかし、沖縄のこととなると、とたんに本土の常識が通用しなくなる。「沖縄なら、無理が通る」「沖縄だから、仕方がない」――沖縄苦難の根底にあるのが、この国の為政者たちの胸の中にある「沖縄差別」であり、本土に暮らす私たちの無関心であることは言うまでもない。

 民主主義国家である日本の主権者は国民だ。国は、国民の意思=民意を尊重する義務を負っている。沖縄の民意が「辺野古移設反対」であるなら、国はいったん辺野古の工事を止め、県民の声を聞くのが筋だろう。

 主権者にも義務がある。政府が辺野古で工事を強行するというのなら、国民全体で民意を無視する安倍晋三に退陣を要求すべきだ。私たちは、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使、安保法という国の根幹を変える政治課題で、すでに民意を無視されていることを忘れてはならない。



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