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安倍は保守に非ず ― 記者たちが語る「保守とは何か?」 (下) ―

2016年8月23日 09:20

20160822_h01-01t.jpg 「保守」とは何か――。新聞、テレビで実際に記事を書く記者たちに意見を聞いたところ、安倍首相や稲田朋美防衛相といった“保守派”の面々は、やはり本物の保守ではないという意見が圧倒的。憲法をねじ曲げ、平和国家の根幹を揺るがす安倍政権の姿勢に、多く記者たちが同じような感想を持っているのは確かだ。
 一方で、産経や読売に代表される≪安倍こそ保守本流≫といった考え方があるのも事実。異なる立場の「保守とは何か」を紹介する。 

「安倍こそ保守」と言い切る記者もいるが……
 戦後の日本を否定する安倍首相や稲田氏の政治姿勢を「非保守」とする見方がある一方、「安倍こそ保守」と断言する報道関係者もいる。政権寄りで知られる全国紙のある記者は、「安倍=非保守」の主張に真っ向から反論する。

【全国紙記者A】
 安倍首相を保守と言わずして、誰を保守と言うのか。首相は、これまで自民党が逃げてきた課題に正面から取り組んだ唯一の政治家だ。そもそも、“自主憲法制定”は自民党が結党以来、党の綱領に掲げてきたもの。いわば同党の一丁目一番地だったはずで、改憲に取り組むのは党総裁として当然の責務だろう。改憲イコール「右派」とするのは、間違ったレッテル貼りに過ぎない。

 確かに“自主憲法制定”は自民党の党是である。だが、歴代首相は内政の安定に力を注ぎ、憲法論議に踏み込むことを避けてきたという経緯がある。安倍以外の宰相たちが、改憲を急いで国内を割るということが、いかに愚かな行為であるかを知っていたからに他ならない。バランスをとるのも政治の役割。戦後の保守には「寛容」が備わっていたが、安倍首相や稲田防衛相にはそれがない。両人を「保守」と呼ぶことには、やはり不同意と言うしかない。

安倍路線はやっぱり「非保守」
 別の視点から見て、「安倍首相=保守」を否定する記者もいる。

【全国紙記者B】
 「保守」とは、何物かを「保ち守る」態度・姿勢のことなので、常に目的語を必要とするものです。戦後の日本の政治史で言えば、それは「国民の生活」を守るという立場のことで、軽武装重商主義と社会民主主義的な再分配政策のラインを引いた吉田茂、池田勇人以来の宏池会的伝統のこと。安倍が進めるネオリベ(新自由主義)政策は戦後保守の価値観からは外れているばかりか、関税自主権を放棄し皆保険制度を崩しかねないTPP参加を進めている点、国を売るに等しい行為です。TPP推進を「領土死守」を叫ぶ自称「保守」派が唱えるとは、笑うに笑えぬ自己矛盾と言うしかありません。

 グローバル化で国境の壁が低くなり、生活基盤が揺らぐ不安を抱くがゆえに、人々は排外主義と国粋的な主張に走る。だからネオリベとネオコン(新保守主義)はマッチポンプ的関係にあり、常にセットで登場する。それがブッシュ、サルコジ、安倍政権の正体です。さらに、安倍とそのお仲間たちは「先の大戦が侵略だったとは認めない」「日本人を悪く言うことは一切許さない」という子どもっぽい心性の持ち主ばかり。これは実は愛国心とは正反対のもので、中長期的には日本の名誉を汚すことにしかなりません。そういう意味でも、彼らは戦後保守ではない。

 ちなみに、もっと広いスパンで見ると、日本の保守の源流は、本居宣長。中心を持たず非大陸的(海洋国家的)。構築ではなく生成。原理ではなく応変。本質より実存。武闘ではなく「たおやめ」。つまりフェミニンな「もののあわれ」こそニッポンです。本居宣長は「伝統を守れ」とは決して言わない。それが日本の伝統なのです。

 最後は、全国紙記者C氏のコメント。先週から配信してきた≪「保守派」って何だ!≫ 、≪記者たちが語る「保守とは何か?」(上)≫のまとめである。 

【全国紙記者C】
 「保守」は、「革新」の対義として使われてきた言葉。ただ、それは、古来、日本が築いてきた歴史や慣習などの中での概念であり、簡単に言い換えれば「現状を容認するか」「現状を容認しないか」の違いなのでなないか。「保守=右翼」、「革新=左翼」ではない。
 
 稲田防衛相の考えの多くは「右翼」(的)であり、安倍首相の考えの一部も「右翼」(的)であると思う。要は、個別の事案に沿って考えるべきであるのに、それを「稲田氏=保守派」と丸めて表現するところに、きちんと表現できない「逃げ」を感じるし、表現できないから、こういう曖昧な言葉を使っているのではないのか。この曖昧な表現は、マスコミの、表現者としての「自殺行為」に等しい。さらに、勘ぐれば、右翼の考え持つ人を「保守派」と表現するところに、何かしらの「意図」さえ疑ってしまう。さて、どこの誰が最初に使ったのか、興味深い。



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