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『週刊新潮』が買春を正当化 ~ 国辱ものの「オヤジニズム」
バスケ日本代表4選手の“犯罪行為”を擁護

2018年9月11日 08:30

新潮1.JPG 「特集 そんなに悪いか『ジャカルタ買春』!~『バスケ日本代表』の未来を潰した『朝日新聞』」――『週刊新潮』9月6日号に掲載された記事のタイトルだ。
 下品な内容である上に論旨が的外れで、さらに記者自身がその的外れさを自覚しているがゆえの開き直り。目もくらむような悪意と偏見の二重奏が織りなす醜悪さは読者をムカムカさせるに十分だった。
 同誌を愛読する脂ぎった憂国おじさんたちにはウケがいいのだろうが、このタイトルだけでも、とても子どもに読ませられるシロモノではないのは明らかだ。

■試合の夜にジャカルタで買春
 問題の記事が取り上げているのは、インドネシアで開催された「アジア競技大会2018」(8月18日〜9月2日)の期間中に、男子バスケットボールの日本代表4選手が買春行為を行ったことをめぐる騒動を取り上げたもの。

 『新潮』は記事中で堂々と買春行為を正当化し、あえて4選手の氏名を伏せるという姑息な手段。ならば実名で事件の概要を振り返っておこう。バスケットボール日本代表の永吉佑也(27歳/京都ハンナリーズ所属)、橋本拓哉(23歳/大阪エヴェッサ所属)、佐藤卓磨(23歳/滋賀レイクスターズ所属)、今村佳太(22歳/新潟アルビレックスBB所属)の4人は、予選で勝利した16日夜、インドネシアの首都ジャカルタのホテルで現地女性に金銭を支払って性交渉をもったという。

 4選手が大会途中で帰国を命じられて開いた8月29日の謝罪会見では、金銭(1人あたり約9,000円)と引き換えに性交渉したことを選手自身がはっきりと認めており、どう取り繕おうと買春行為だったことは明らかだ。会見に同席した弁護士は、4選手の行為を「インドネシアにおいても違法の可能性が高い」と断じており、この問題は4選手が相応の罰と社会的制裁を受けて終わるはずだった。個人的には非常に甘い処分だと感じたくらいだ。

 『新潮』はそれを無理筋の理屈で蒸し返し、当事者自身が「一生背負っていくつもり」とまで謝罪した「犯罪的行為」を擁護している。ニッポンのオヤジ的思想の拠り所である『新潮』がいったいどんなトンデモ理論を繰り出したのか。まず、記事の流れを追ってみよう。

■「買春はそんなに悪いことか?」のトンデモ理論
 記事は、「その謝罪会見は、半ば『公開処刑』に近かった」の一文で始まる……。ん? ちょっと待ってほしい。日本代表として国際大会でバスケットの試合に行った選手が、現地でも違法な買春行為をして帰国させられた。選手派遣費用には日本オリンピック委員会(JOC)経由で税金が使われていることも考えれば、事実関係の説明会見や謝罪会見を開くのは当然のはずで、「公開処刑」呼ばわりは間違いだ。

 一方、会見で選手が「申し訳ありません」「認識があまりにも甘かったです」としおらしく答えるのには同情的になり、〈顔と実名が晒されるのを承知で(中略)答えるしかない選手たち〉と寄り添ってみせる『新潮』記者。日本バスケットボール協会の三屋裕子会長が「情けない。恥ずかしい」と発言すると、三屋会長が女性であることが気に入らないのか、「(三屋会長が)追い打ちをかけた」となぜか攻撃の対象に。

 〈まるで重大犯罪者扱いの4人であったのだ〉と、あたかも4選手が冤罪被害者であるかのような書きぶりで会見を振り返った『新潮』記者は、4選手の弁護士が「現地でも違法の可能性が高い」とまで断言した買春行為を〈はたして彼らの〝行為〟はそこまでの罰を受けるほどのことなのか、そんなに悪いことなのか〉とわざわざ検証に乗り出そうとする。法律の専門家による「違法の可能性が高い」(つまりは犯罪行為)を、完全に無視した形だ。

 〈事が起こったのは、アジア大会中のインドネシア・ジャカルタである〉。重厚なルポルタージュでも始まりそうな書き出しで紹介するのは、「リトルトーキョー」と呼ばれるその地区が「最近、『売春街』の色が濃くなっていた、という現地在住ジャーナリストの証言。さらにアジア風俗専門誌の編集長まで引っ張り出して、「インドネシア女性はサービスが丁寧で価格も安く、『穴場』」という証言を紹介し、「4人はさぞかし良い思いをしただろう」と下劣な言葉で締めくくる。読み進めるのが苦痛になる記事。『新潮』記者の脳内はどれだけピンク色に染まっているのか……。

■根拠不明なタワゴトのオンパレード
 次章からは、社会学者やテレビプロデューサーなど、この問題を語るべき資格を持っていそうにない、空気を読むのだけは得意そうな「識者」たちのコメントを並べ始める。「スポーツ選手に聖人君子を求めるな」「政治家だろうと学者や警察官だろうと買春している人はいる」「ここまで処分される必要があったのか甚だ疑問」「報道されなきゃ被害者のいない話」と、無責任で根拠不明な「思い込み」で買春を正当化。たとえば、「人殺しは他にもいるから、おれも殺していい」と話す大人がいたとすれば、それはもう何らかの病気を疑うレベルの妄言だと思うが、『新潮』が「買春行為は正当」論の根拠としているのは、その類のタワゴトだ。

新潮2.JPG さらに、〈生理休暇〉と下品に名付けた最終章では、「オリンピックの選手村ではコンドームが配られる」「アスリートも(性欲を)我慢できない」「『お店』に連れていくのも指導者の管理能力のひとつ」と、怒涛のシモネタで攻めたてる。
 返す刀で、新潮社の天敵・朝日新聞を「君子ぶるのは滑稽」とからかい、「買春報道で喜ぶのは韓国人だけ」と、この件ではまったく関係のない隣国をディスって締めくくる。もはや町のチンピラと同レベルの因縁のつけかただ。

■『新潮』が守りたい価値観とは何か
 結局、いつもの“新潮クオリティー”、ということなのだろう。日本や日本人男性が叩かれることについては脊髄反射的に反論し、たとえ支離滅裂な理屈であろうと押し通すエセ愛国雑誌――それが『新潮』の正体だ。そんな破廉恥な編集方針が逆に日本を貶めていることや、声の小さな誰かを傷つけていることに気付くべきだろう。

 この記事を担当した記者がどのような思想の持主かは判然としない。だが、この記事が世に出ることで得をする者は誰か、さらにどんな価値観を守ろうとしているのかははっきりとわかる。

 たとえば買春行為を行ったのが女性選手だったらとしたら、『新潮』は擁護しなかったばかりか、女性選手たちを激烈な調子で攻め立てていただろう。「日本人女性がインドネシア人男性を買った」という行為が新潮オヤジたちの逆鱗に触れること間違いなく、そのリアクションは想像するだにおそろしい。それこそ「選手派遣には税金が使われている」ことを声高に主張し、「帰ってくるな」「使った分を個人で返還しろ」とまで主張するに違いない。

 女性は男の所有物ではないし、意に反して性を売り物にするような社会は変えるべきだ。そんなシンプルな理想に無駄に抗う『新潮』オヤジたちは結局、「男は女を買って当たり前」というオヤジニズム(オヤジの既得権益)を手放したくないのだろう。どこまでも甘ったれた「おとなこども」だが、問題は彼らがこの国の権力を握っているという事実だ。東南アジアで、日本人男性の買春ツアーが途切れたためしはない。どこが「美しい国、日本」だ。



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