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上川陽子前法相のラジオ番組に放送法違反の疑い
自民支部の政治資金で「放送料」支払い

2018年11月 9日 07:30

上川.png オウム真理教事件で死刑が確定した死刑囚13人の死刑を執行した上川陽子前法務大臣がメインで出演するラジオ番組に、放送法違反の疑いが浮上した。
 問題の番組は、2011年から静岡のFMラジオ局で放送されている「かみかわ陽子のRADIO SHAKE」。上川氏は、番組の中で自身の政治活動や政府・自民党の動きなどについて発言し、放送料を自民党支部の政治資金から支出していた。
 「自作自演」している形だが、番組のタイトルに上川氏のフルネームを入れ、毎回政治的な発言を行うという暴走ぶり。放送事業者に「政治的公平」を求めた放送法第4条に抵触する疑いがある。(右は上川氏の公式サイトの画面)

■地元局の番組を政治資金で「買い取り」
 上川氏は、地元静岡市のコミュニティー放送局「シティエフエム静岡」で、「かみかわ陽子のRADIO SHAKE」(毎月第1・3火曜日)にメイン出演。毎回、地元のコピーライターと政治を中心とした話題を語っている。同番組のブログによると、第1回の放送は2011年4月で、収録直前に発生した東日本大震災を受けて番組内容を変更したという。民間放送局の番組であるため当然、番組には番組制作費用を提供するスポンサーが付くことになる。

上川番組.png

 上川氏が代表を務める「自由民主党静岡県第一選挙区支部」が静岡県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書によれば、同支部は毎月、ラジオ放送料15万1,200円と番組制作協力費(構成作家へ支払う料金など)8万円、合わせて23万1,200円をシティエフエム静岡に支払っていた。まさに「自作自演」。2011年の番組放送開始から、同様の形で「番組の買取り」が行われていたものとみられる。

収支報告書.png

 上川氏が番組中で、政治的な発言をしていたことは明らかだ。同氏のブログにも掲載されているが、実例はいくらでもある。

 昨年末の臨時国会の最終日。日程がなかなか定まらない中、右往左往し、夜中の1時30分頃、最後の法案を通しました。ご承知のとおりTPP条約批准は議会採択が必要ですので、これが大きなテーマになりました。私は衆議院において賛成票を投じさせていただき、皆さんから「どうして?」というご質問も頂戴しました。

 TPPとは関税ゼロという国際協定で、聖域なき関税撤廃という自由貿易の象徴です。日本の場合、農業については長い歴史のなかで培われた共同体があり、農産物の生産のみならず、自然環境保全など多様な機能を持つため、海外からの安い農産物によって押しつぶされては困ると訴え続け、よく交渉していただいたと思います。

 アメリカがTPPから離脱する可能性がある中、なぜこの時期にTPP採択をしたのかという質問もいただきました。トランプさんの外交姿勢をみると、多国間交渉ではアメリカが不利になるため、二国間交渉に切り替えていくでしょう。そうなると農業に関しては相当なレベルまで押し切られ、譲歩せざるを得ないことになります。その歯止めとしてTPPという多国間交渉をヘッジにしなければということで賛成の票を投じました。外交的にみても重要な採決だったと思います。

― 中略 ―

 政治活動をしていると、地元地域の中の氏神様に手を合わせることってすごく大切だと感じます。今年も初詣も後援会の皆さんとご一緒し、一年間安心安全で過ごせますよう心を合わせてまいります。(2017年1月3日オンエア)

 ラジオシェイクでも何度か熱くお話させていただきました。日本は過去 20年超にわたって、ベトナム、ミャンマーを含め10か国以上のアジア諸国等に対し、民法や刑法などの基本法や最新の知的財産法等経済関連法の起草、さらに法務関連人材の養成を支援し、高い評価と信頼を得てきました。とりわけ日本の、その国に寄り添った支援方法が高く評価されましたね。今回はベトナムとミャンマーの司法に携わる要人との面談や現地で活躍する専門家、JICAスタッフ、日本企業のビジネスマン達との意見交換の他、現地法科大学内の日本法教育センター等を訪問しました。

――視察の様子をHPでも拝見しました。後援会の活動報告リーフレットにも詳しく紹介されていますが、表紙の写真が面白いですねえ。(同年6月6日オンエア)

 これは放送内容のごく一部だが、「かみかわ陽子のRADIO SHAKE」は毎回、自分を中心とした政治に関する話ばかり。テレビでは考えられない偏向番組だ。「放送法」第4条は、放送事業者が番組の編集をするにあたって『政治的に公平であること』を求めており、自民党の衆議院議員である川上氏がメインを務める「かみかわ陽子のRADIO SHAKE」は、その放送内容からして同条の規定に抵触する可能性がある。

■上川氏側は事実上の取材拒否
 毎月15万1,200円のラジオ放送料は、上川氏が代表を務める自民党静岡県第一選挙区支部による「番組買い取り料」とみるべきで、放送法第4条が放送事業者に対して求めている「政治的公平」に反するのではないか――。この点について上川氏自身の見解を聞くため、議員会館の事務所にファックスで質問状を送付。回答を促したが、出稿までに何の連絡もなかった。事実上の取材拒否である。

 上川前法相は放送法を管轄する総務省の総務副大臣(2013年)も務めており、同時期も番組の買い取りを続けていたことが分かっている。監督官庁の副大臣を務める人物がスポンサーである番組の内容について、ラジオ局があれこれ意見できるはずはなく、内容の偏りは上川氏自身が責を負うのが筋だろう。

 上川氏が質問状に回答しない理由はただ1つ、この番組が自民党と自身の意見を垂れ流すだけの宣伝番組にすぎないからだ。かつてタブロイド紙に「チョー地味な政治家」と評された上川氏だが、毎月約23万円を隠そうともせずに自身の番組に垂れ流すやり方は大胆と言うしかない。

■法相として大量の死刑執行
 静岡1区選出の上川氏は、当選6回の65歳。東大教養学部卒業後に、三菱総研を経てハーバード大大学院で政治行政学修士を取得した絵に描いたようなエリートだが、「失敗しないことだけが取り柄」の地味な議員だ。その上川氏が、過去に一度だけ、政治の表舞台でスポットライトを浴びている。

 2度目となった法務大臣として今年7月、オウム真理教事件で死刑が確定した死刑囚13人の死刑を執行した際だ。最初の法務大臣任期中(2014年10月~12月)の死刑執行も含めると16人の死刑命令書に署名(執行決定)したことになり、「最も多く死刑執行した法務大臣」という、なんとも恐ろしい異名を持つことになった。

 ちなみに上川氏が通った中高一貫校・静岡雙葉学園は、皇太子妃雅子さまも通った田園調布雙葉学園などを姉妹校に持つカトリック系の女子高。同じ姉妹校の福岡雙葉学園では死刑の意味に向き合う教育プログラムなども行っている。真っ向から死刑制度に反対しているカトリック教会が母体の学校で多感な少女時代を送った法相が、大量死刑にゴーサイン――。上川氏には、順法精神も信条もないのかもしれない。

*記者の番号誤記でFAXが届かなかったらしく、出稿後、上川氏の事務所からメールが送信されてきた。質問への回答は「お問い合わせの件でございますが、法律の範囲内で適切に行っております」だった。どこが適切なのか――。(11月9日19:59 追記)



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