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佐賀県武雄市 歪む教育の裏舞台(上)

2015年7月17日 08:25

武雄市図書館 佐賀県武雄市で樋渡啓祐前市長が実施したいくつかの事業は、「改革市政」の象徴としてマスコミにもてはやされた。その特徴といえば、大手企業との提携に頼る手法。武雄図書館、フェイスブック利用、官民一体校、そしてタブレット型端末を使った教育事業と、いずれの事業にも癒着の影がチラついている。
 このうち、現在もっとも注目されている教育事業を追っていくと、樋渡前市長以外に重要な役割を果たしたある人物にたどり着く。平成25年10月に同市の教育監に就任し、26年度からは武内小学校の校長を兼任している代田昭久氏である。
 同氏の動きをたどり、歪む武雄の教育事情を検証する。本稿は、その1回目。(写真は武雄図書館)

代官山に武雄の縮図
 梅雨の合い間、東京都渋谷区代官山にある「蔦屋書店」に行ってみた。ブランドの街に似合うおしゃれな店だが、頭に浮かんできたのは「武雄図書館」。樋渡前市長がここを訪れて“ひらめいた”というだけあって、雰囲気が酷似している。代官山蔦屋書店を参考にして、武雄図書館の現在の姿がある。蔦屋のウインドウには「スターバックスコーヒー」の商標(シンボルマーク)。まさに、武雄図書館と同じ組み合わせだ。そして蔦屋の入り口横には「ソフトバンク」の宣伝車両。武雄市に関係する大手企業が、勢揃いした観がある。縮図と言っても過言ではあるまい。ソフトバンクのグループ企業が、武雄市のタブレット型端末教育事業で利益を独占していたことは報じてきた通りである(参照記事⇒「教育歪めた改革市政(上) ― 武雄・樋渡前市政とソフトバンク」 「武雄市iPad教育事業 受注企業は直前まで「債務保証」の会社 」)

武雄市図書館

企業に支えられた「教育改革」―実務担う「教育監」
 武雄市が市内の小・中学校で行っているのは「タブレット型端末を使った授業」、「反転学習」、「官民一体教育」だ。どれも樋渡前市長の発案で実施が決まった教育改革事業だが、それぞれが特定企業との強い結びつきに支えられている。武雄図書館で囁かれてきたのは樋渡―ツタヤの癒着だが、他の教育事業でも同じような構図が生まれている。

 一連の教育事業実施にあたって実務を担ったとみられているのが同市の教育監、代田昭久氏である。代田氏は長野県出身。慶大を卒業してリクルートに入社し、その後独立して起業。平成20年に東京都杉並区立和田中学校に2代目の民間出身校長として迎えられた。平成25年には鎌倉市の教育長に就任予定だったが頓挫。同年10月1日に、武雄市の教育監に転身し、26年度からは武内小学校の校長も兼任している。この人物の動きから、武雄市政と結びついた企業の社名が浮かび上がってくる。

出張先、大半が「企業」
 下は、武雄市教育委員会への情報公開請求で入手した代田氏の出張記録のうち、教育監として市外に出かけたものをまとめた表だ。

教育監旅行命令 平成25年度

 まず25年度。教育監就任以降、フル回転で動き回っていたようで、半年間で15回もの出張に出ていた。行く先はほとんど「企業」。古巣のリクルートに何度か出向いているほか、武雄市の教育事業に絡む会社を次々と訪問していたことが分かる。多忙な樋渡氏に代わって、企業側との連絡・調整を行っていた形だ。鎌倉から赴任してすぐに動き出しているが、わずかな時間で武雄市の教育現場を十分に把握していたとは思えない。代田氏の視線の先にあったのは「子ども」ではなく「事業」、そしてそれを支えてくれる「企業」だったのではないだろうか。

 次に26年度。小学校の校長を兼任するようになってからも、教育監としての市外出張は続く。1年間に14回。ペースは前年度よりやや落ちているが、これに校長としての出張56回が加わる。席をあたためる暇もなくといった状況だ。親はなくとも子は育つというが、校長がいなくても学校運営には支障をきたさないということらしい。

教育監旅行命令 平成26年度、27年度

 役所側が、仕事を発注する予定の企業を度々訪問するというのは極めて珍しいことだ。事業費の原資は税金、余分な経費をかけないのが常識で、受注企業側が武雄市に来るのが普通。しかし、代田氏の教育監としての出張は、わざわざ発注者が受注企業に出向いた格好。武雄市は、出張旅費に余分な税金をかけている。不適切なやり取りはなかったのか――疑いを持たれてもおかしくあるまい。

 じつは、代田氏の不可解な出張には別の理由がある。同氏の旅行日程を精査して上の表に結果を加えると、市民を食い物にする歪んだ市政の実態が浮き彫りとなる。

(以下、次稿)



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