自身の支援団体が、選挙区内の支持者に現金を配っていたことが明らかとなった佐賀県唐津市の坂井俊之市長。政治倫理の欠如は甚だしく、他にも迂回献金や祭り期間中の供応接待など、政治資金規正法や公職選挙法に抵触する可能性が高い行為を行っていたことが分かっている。
県議1期、市長3期目の政治家である以上、「法律を知らなかった」では済まない話ばかり。坂井市長の進退に関わる事態と言えそうだ。
(参照記事⇒≪唐津市長後援会に「買収」の疑い≫、≪唐津市長に公選法違反の疑い ― 祭りにかこつけ住民接待 ≫
悪質な迂回献金でカネ集め
坂井市長の関連政治団体は、現金ばら撒きが分かった「坂井としゆき後援会」、資金管理団体「坂井としゆきを育てる会」、「自由民主党佐賀県唐津市一〇一支部」(昨年12月に解散)の三つ。今年4月に移転した後援会と育てる会は同一のビル内に、自民支部は市長の自宅に主たる事務所を置いていた。いずれの団体も会計責任者は同一人物。事務担当者は、坂井事務所の所長だった。
上記3団体の、平成24年から26年までの3年間の政治資金の流れは次の通り。唐津市長選挙は平成25年の1月。このため24年から25年にかけての政治資金が、例年より増える形となっていた。
育てる会と自民支部は役割が決まっており、前者は個人献金、後者は企業献金の受け皿となっていた。両団体は毎年、収入の全額を後援会に寄附。政治資金収支報告書上、後援会以外の2団体が政治活動を行ったことを示す支出はない。下は、育てる会と自民支部の政治資金収支報告書支出内訳(平成26年分)。いずれも、「寄附・交付金」以外の支出はなく、後援会にカネを流すためだけの団体であることが分かる。
問題だらけの政治資金処理だが、特に悪質と見られているのが自民党の支部を使った企業献金隠し。企業献金は、政党と政党が指定する政治資金団体にしか認められていないが、坂井市長は、自宅に置いた自民党の支部を企業献金を受け皿にし合法的な献金であるかのように装っていた。
自民支部を使った迂回献金が、意図的な脱法行為だったことは明らかだ。「坂井としゆき後援会」が昨年4月に会員に出した≪「坂井としゆきを育てる会」継続加入のお願い≫(A4版1枚)では、個人会員の会費1,000円を佐賀銀行の「坂井としゆきを育てる会」の口座に、法人会員の会費10,000円を唐津信用金庫の口座に振り込むよう指示しており、財布を変えることで違法献金を隠したことは明白。この件については、市民グループが刑事告発しており、捜査状況に注目が集まっている。
8日に開かれた唐津市政治倫理審査会では、坂井市長の政治姿勢や不適切な政治資金処理に厳しい注文を付ける調査結果がまとめられている。