坂井俊之唐津市長の政治団体「坂井としゆき後援会」が、選挙区内の支持者らに現金を配っていたことが明らかとなった。公職選挙法は政治家の後援団体による選挙区内での寄附を禁じており、同法に抵触する可能性が高い。現金供与が選挙での支援を目的としたものであれば、「買収」の疑いも生じる。
坂井市長の政治資金処理を巡っては、自民党の支部を使った迂回献金の実態などが判明しており、政治資金規正法違反の疑いで刑事告発されている状況。カネまみれ市長に、厳しい批判の声が上がりそうだ。
(写真は、市長の政治資金疑惑に揺れる唐津市役所)
現金ばら撒き、事務所長が証言
坂井としゆき後援会による現金供与が明るみに出たのは、今年5月に開かれた「第5回唐津市政治倫理審査会」の席上。市長の不明朗な政治資金処理を問題視した市民らが調査請求したことを受け議論が続けられていた同審査会で、後援会事務所長が証言していた。下は、7月に公表された審査会の議事録である。
後援会事務局長の話で、ポイントとなるのは次の3点だ。
“会費を納めた会員一人当たり500円の計算で、24の支部ごとに現金を配った”ということ。当然、後援会の会計上、これに見合う政治活動費の支出があるはずだ。しかし、坂井としゆき後援会が佐賀県選挙管理委員会に提出した平成24年、25年、26年分の政治資金収支報告書を確認したところ、該当する記載はなかった。
そもそも、24あるという「後援会の支部」にあたる団体の届出がなく、存在が事実だとすれば任意団体。後援会から地域ごとにばら撒かれたカネは、公選法が禁じた選挙区内での寄附にあたる可能性が高い。
【参考条文】(後援団体に関する寄附等の禁止)
第百九十九条の五
政党その他の団体又はその支部で、特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の政治上の主義若しくは施策を支持し、又は特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、若しくは支持することがその政治活動のうち主たるものであるもの(以下「後援団体」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。
買収の疑い
注目すべきは、事市長後援会の務局長の「選挙があるときなどは、会費の有無にかかわらず、会員として登録し、後援会の総会を開催するときには、案内状を出している」との説明。後援会の会員の中には「会費」を払っていなかった人がいるということだ。すると、“一人当たり500円”で計算された地域ごとの資金は、会費を払っていなかった「会員」にまで利益を与えていたことになる。選挙を前提にした現金供与があり、そのカネを飲食などに充てていたとすれば、供応接待=買収の疑いが濃くなる。
事実関係を確認するため政治資金収支報告書に記載されていた市長の後援会事務所を訪ねたが、もぬけの殻。事務所は今年4月、こっそり別の場所に移転していた(右の写真)。事務所長の携帯に連絡し、「電話を預かっている」という後援会関係者に取材の趣旨を伝えたが、出稿までに連絡はなかった。坂井市長本人も同様。自宅の家人に取材に応じるよう頼んだが、市長からの連絡はない。きょう8日には、8回目の政治倫理審査会が開かれる予定。審査会が、市長を巡る「政治とカネ」の問題にどのような調査結果を出すのか注目される。